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  • 社説:潮目
  • 20.06.02

会場名ではなく【企業名】を主語にシビアに評価される時代

 ブライダル業界に対する消費者の目線として、個別の店舗ブランドが際立っていたため、そこから企業に結び付けられることは少なかった。一部企業を除いては、企業名と会場名が全く異なっており、また会場名がバラバラのケースもある。気に入った会場で結婚式を決めた新郎新婦でさえ、そもそも会場を運営している企業はどこなのかさえ理解していない人もいるほどだった。 
 ここ数年は、ネットやSNSを通じた企業発信の機会が増え、消費者の中にも会場=企業という認識が高まってきた。同じ企業系の会場で結婚式を控える花嫁が、インスタ等を通じて情報交換する。企業側でも、全体のブランドを訴求することを重視する傾向が出てきた。実際に「オシャレな会場を運営している企業の系列だから、ここでもオシャレな結婚式ができる」といった評価から、会場を決定する人も増えてきた。 
 企業ブランドの訴求は、こうしたポジティブな面がある一方、ネガティブ面が台頭すると一気にダメージを受けるリスクが出てくる。ある地域の会場での一つのクレームが、その企業のイメージを決定づけてしまうことになるからだ。ここ数カ月の各社の方針と、それに対する新郎新婦の反応を見てみると、会場単体ではなく企業に向けたシビアな評価を感じられる。 
 コロナ禍、緊急事態宣言に関する一連の方針については、自ずと企業を前面に打ち出す必要性があった。延期やキャンセルなどへの対応は、会場個別や担当プランナーが決められることではなく、統一方針として企業発信で説明しなければ納得感を得られない。また、多くの会場が緊急事態宣言で臨時休業の措置を取ったことで、直接連絡ができる手段は本社のみに限られてしまったことも大きい。これにより、納得できない新郎新婦は、企業に対してクレームを直接入れるという状況となった。コロナに関する対応の良し悪しがクローズアップされ、企業名を主語にしてその評価が語られるようになった。 
 それを裏付けるのが、ネットやSNSでの評判だ。不満を抱いた新郎新婦が企業名を明記して発信する。仮にその発信が単体会場名であれば、同じ境遇の新郎新婦の絶対数は限られている。ところが企業名で投稿をされると、全国のその企業の会場で結婚式をした、今後控えている多数の人たちが関係してしまい、その分反響も高まっていく。同じ不満を持つ他の新郎新婦の投稿を呼び起こし、同調感となっていく。いわば炎上状態で、こうした事態になると大きなダメージとなる。コロナ後の新規集客においても、その企業が運営している会場で契約することに影響してくる。 
 コロナ禍、緊急事態宣言に伴う方針変更や、キャンセル・延期料の対応についての是非は難しい。これまでにない未曽有の事態であり時々の判断が変わるのは致し方ないと共に、原則論として主催者である新郎新婦に対し、規定通りに延期やキャンセル料金などを請求するのは間違いではないからだ。考えるべきは、今回の事態によって、今後はよりシビアに企業そのものを見られるようになるということ。会場を、隠れ蓑にすることが難しくなったという事実だ。 
 もう一つ、企業に対するシビアな評価は、スタッフにも印象づいた可能性が高い。T&Gの岩瀬社長は、様々な判断に対し、スタッフの共感を重視したという。そのためにも経営と現場を切り離して考えていると。企業の掲げた方針に対して、本当にスタッフは共感していたのか。その答えはこれから出てくる。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)