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  • 社説:潮目
  • 25.07.15

手間を惜しまない哲学

 前号で紹介した東京會舘本館の斉藤哲二総調理長のインタビューで印象に残った言葉の一つが、「これまで何度もフランス料理を食べたことのある人から、初めて本当の味を知ったと言われることが多い」というものだ。ヌーベルキュイジーヌ、ガストロノミーといった革新を続けてきたフランス料理であるが、東京會舘はエスコフィエの技術に根ざした王道を大切にしている。王道を追求するために、ソース、ブイヨン作り、火入れなどの基本を疎かにせず、長い時間と労力を要する調理技法を守り続けてきた。
 都内のみならず、全国的にも有数の結婚式人気施設であるが、その人気の理由を考えると、行きつくところは王道を守り続ける哲学にある。東京會舘の人気を、2019年リオープンの新しい施設、ガラス張りのチャペルやバンケットから皇居を望めるロケーションに見出す業界関係者も多い。さらにT&Gが入っていることで、ゲストハウス的なマーケティング手法がうまくマッチしたと語る人もいる。いかにもブライダル業界らしい考え方で、確かにそれらは一因にはあるだろうが、本当の理由は別のところにある。【迎賓館】としてサービス・料理を守り、追求し続ける哲学だ。
 例えば前号で紹介した新たなクラシックコースの前菜メニューひとつとっても、そこには「手間を惜しまない」いくつもの調理技法が随所に発揮されている。テリーヌはもちろんのこと、それをデコレーションしているクリームは、魚の出汁のフュメと別の鍋で煮詰めたワインを合わせたもの。さらに一緒に添えているエビ、ホタテも、単なる塩茹ででは香りが負けてしまうため、わざわざクールブイヨンを作りそれを裏ごしした液体でボイルしている。食材に添えたジュレはワインを煮詰め固めたもので、ビーツのソースもミキサーでジュースにしてから仕上げていく。「手間を惜しまない」調理工程をいくつも重ね合わせて、一つの皿を作り上げている。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月11日号)