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  • 社説:潮目
  • 25.06.20

多様性で拡大する配慮

みんなのウェディングの口コミに、次のような投稿があったという。結婚式に参列するゲストに子どもを参列させないよう事前にお願いしていた。実は新婦側のゲストに不妊治療中の人が数名いたため、その人たちへの配慮であったという。しかし当日その配慮は実現できず子どもが参列してしまい、人間関係に亀裂が入ってしまったという内容だ。この出来事に対しては、様々な意見があるだろう。一つ言えるのは、結婚式を実施する新郎新婦の中には、こうしたことに対しても配慮を求める人がいるということだ。
この投稿を紹介してくれたみんなのウェディングのレビューアナリスト黒須裕子氏は、こう感想を述べている。「私個人としては、主役は新郎新婦なのに、そこまでゲストに配慮しなければならないのかと感じる部分もありましたが、現代の結婚式でゲストの立ち位置は以前と変わってきているのでしょう。」 
例えばブーケトスなどの演出も、最近ではあまり行われなくなってきている。これも結婚をしたくても出来ない人がクローズアップされることになり、その人を傷つけてしまう可能性からやらない方が良いと考える風潮による。こうした風潮は、SNSなどでも時に議論が過熱していて、新郎新婦はそれを無視できなくなっている。窮屈な時代ではあるものの、ゲスト重視バイアスによって、そこまで配慮できるかどうかを気にしなければならない。
LGBTQなど、多様性の重視されている社会だ。SNSの情報などに敏感な新郎新婦世代もまた、多様性の価値観を持っている。新郎新婦という呼び方、席次の標準的なフォーマット、挙式の形式など、それに合わせてどこまで変化させていくかは非常に難しいところだ。もっともその変化の必要性に無頓着で、そうした新郎新婦の配慮に無関心であると、時代の波に式場やスタッフは追いつけず、どんどんズレも生じてくる。どこまで対応するかの議論は別にして、少なくとも理解を進めておくことは大切だ。
とはいえ、こうした多様性の加速により、新郎新婦の配慮がどんどん広がっていけば、そこには危機感も覚える。結婚式をしない理由として、金銭的な面と共に、【面倒】との言葉が出てくる。その言葉の中に、ゲストに対する様々な配慮が増えていけば、さらに結婚式は面倒くさいものになっていく。例えば前述した不妊治療をしている知人に配慮することで、妊娠中の親友を呼ぶべきか呼ばないべきか。子どもは連れてこなくても、最近奥さんが出産した職場の上司と周りで、子どもの話になったらどうするか。話を聞かれないように、席次も考えなくてはならないのかなどなど。結婚式で気を配るべき範囲の拡大によって、新郎新婦に“強迫観念”に近い感覚が生じてしまわないものか。
一方で、こうしたゲストのために思いを馳せ、面倒なことを一つひとつ解決しながらおもてなしを準備していくことこそ結婚式の価値だという考え方もある。式場側としては、恐らくそこをしっかりと伝えながら、新郎新婦の感じる面倒をポジティブなものに変換させる努力をするはず。そうであれば、面倒をしっかりと受け止め、その解決の一助になる対応は求められる。中途半端に寄り添ったふりは信用を失いかねない。その面倒を一緒に抱えながら解決策を講じると共に、当日に万全な対応をするプランナーがいてこそ、結婚式の本当の価値はクローズアップされる。
結婚式の面倒を、楽しむという安易な変換ではなく、自らもそれを背負い一緒に悩み対応していく覚悟を持つかどうか。そうしたプランナーが増えれば、結婚式実施率も高まっていく気がする。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、6月1日号)