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  • 社説:潮目
  • 21.09.08

フルコースを1時間半で提供する業界常識に限界が生じる

 ブライダル会場の経営者は、料飲サービス業の側面もあることから、食に対する探究心の強い人が多い。趣味、実益も兼ねて、ハイクラスのレストランを食べ歩き、料理の話題も尽きない。経営者自身がこうした経験を積み重ねている一方で、不思議に思うのは自社の婚礼料理、飲料、サービスへの意識だ。町のフランス料理店のフルコースの価格帯、どの程度の食材を使い、飲料のレベル、サービス基準まで熟知しているにもかかわらず、残念ながら自社の婚礼料飲・サービスはそれに比べればレベルも落ちる。
 料飲・サービスの基準を、レストランではなく他の施設と比較する傾向が根にある。いかに会場の料理が他社に比べて優れているかをアピールすることも多いため、自然と業界内での基準で満足してしまっている。
 顧客の年齢層が、フランス料理店ビギナーが中心であった時代であれば、顧客側に比較対象がないため満足感を高められる。【初めて食べたご馳走】だから。現在は婚姻年齢も30代に突入し、フランス料理店ビギナーの方が珍しいだろう。町のレストランの価格帯もリーズナブルになっており、一定レベルの料理、飲料、サービスを知っている顧客から、シビアにジャッジされるのも当然だ。
 40代、50代ともなれば、お気に入りの店の一つや二つを持っている。この年齢層はゲストとして来場するが、納得させるのはさらに難しい。この年齢になるとゲストとして呼ばれるのは会社関係や親族のケースが中心で、新郎新婦にとっては通常よりも高額なご祝儀が見込める。料飲で満足を与えられなければ、わざわざ結婚式に参加する動機も低くなり、ゲストが若い人ばかりになって新郎新婦の資金負担も高まる。
 結婚式の料飲で数10年前から変わっていないのが、提供時間だ。披露宴を2 時間半のフォーマットにしてから、長い期間が経っている。中身の進行も画一化されている状況では、料理の提供は実質前後の30分ずつをカットした1 時間半。この時間に全てを提供、食べてもらおうとするのは無理な話で、テーブル上にはどんどん次の皿が並ぶことになる。また一皿ずつ、料理を丁寧に説明することも難しい。説明によって食べるスピードをコントロールすることもできるはずだが、そうした余裕もできない。料理を美味しくするのは、サービスによる説明も大きいが、このチャンスを喪失してしまっているのは残念なことだ。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、9月1日号)