NEWS

ニュース

  • 企画・イベント
  • 25.11.04

SDGs婚礼コースを販売【帝国ホテル】

 今年11月に開業135年を迎える歴史に裏打ちされ、日本最高峰の接遇という伝統を受け継いできた帝国ホテル(東京都千代田区)。日本で初めてホテルウエディングを執り行い、今のブライダル市場を創生してきた企業の一つと言っても過言ではない。マーケットが大きく変化する中でも、守るべきものを守り、さらに新たなチャレンジを進めているのは、日本の迎賓館の役割を担うという矜持があってこそだ。第2回目の今回は、昨年4月から販売を開始した、結婚式のSDGsフルコースメニューにスポットを当てる。同ホテルのサステナビリティの取組みの一環であり、そこにはチャレンジの精神が込められている。

 営業部販売企画課 アシスタントマネジャーの加地美沙季氏は、2016年に入社後、営業部に配属され、現在は婚礼の商品企画、広報の役割も担っている。前回紹介した、メインロビー装花をサシェにして結婚式後の新郎新婦にプレゼントする企画は、加地氏が新規接客チームだった時に提案したアイデアである。
 「当時、サステナビリティ推進委員会の一員となり、婚礼でも何か対応できないかと考え、サシェのアイデアを提案し、プロジェクト立ち上げに関わる機会に恵まれました。」(加地氏)
 帝国ホテルは2001年12月、環境委員会を設置、2020年4 月に環境委員会からサステナビリティ推進委員会へと名称変更され現在に至る。役員を筆頭に、その下に委員会が配置されており、委員会内は4 つのチームに分かれている。サステナビリティ推進のためには全ての部門が関わる必要性もあるため、各部に分科会を置いていて、加地氏は当時、営業部での担当者だった。担当メンバーは全社的取組みだけでなく、それぞれの部門でもサステナビリティ企画を進める際の中核にもなっていることから、日常業務の中でアンテナは自然と高くなり、サシェの提案に繋がった。
 「サステナビリティの流れのもう一つの商品として誕生したのが、SDGsメニューの婚礼フルコース【ESPOIR〜エスポワール〜】です。2023年8 月に発表し、昨年の4 月から提供をスタートしています。」(加地氏)
 このコースは、すべて植物性食品のみで構成されており、環境に配慮して作られた食材を使用している。定番の魚、肉が一切含まれないスタイルは、ウエディングメニューとしてはこれまでにないチャレンジだと言っても過言ではない。
 営業部販売企画課 副支配人の井上有希氏によると、同メニューリリース以前の2017年から、帝国ホテルでは【TABLEFOR TWO】プロジェクトに参画していた。これはホテルの従業員食堂にて対象メニュー一食につき20円を、発展途上国の子どもたちの給食に寄付するという取り組み。婚礼メニューとしては2021年から商品化し、【TABLE FOR TWO】対象の前菜を提供。今回のフルコースもプロジェクトの対象に入っていて、環境への配慮と共に社会貢献の側面も併せ持っている。
 「今年4 月に総料理長に就任した杉本雄は、サステナビリティへの理解が非常に強いシェフです。コロナを経て婚礼のスタイルも多様化し、サステナビリティ意識を持つ顧客も増えてきたことから、フルコースの開発に至りました。とは言え、このコースが主力商品になるという見立てはしていません。それ以上に、ウエディングにおいてもサステナビリティにきちんと心を向けているいう当ホテルの考え方を、新郎新婦やゲストに伝えることが大切だと考えています。」(井上氏)
 加地氏は婚礼現場のスタッフとしてこのメニューのセールストークを検討するにあたり、総料理長の杉本雄氏の知見は豊富で、食材や調理法などで学びも多かったと語る。
 「初めはヴィーガンといえば大豆ミート、という程度の知識でした。商品について学ぶなかで、チーズにも植物性で作られたものがあり、植物性油脂で作るヴィーガンチョコレートなどがあることも初めて知るなど、食材への理解は一層深まる機会でした。従来から『ウエディングである以上、華やかさが必要』という前提が調理部門に共有されているため、婚礼部門の要望を実現しながら、クオリティの高いメニューを考案してくれました。帝国ホテルの料理人たちのクリエイティビティを、改めて再確認する良い機会になりました。」(加地氏)
 帝国ホテルの婚礼では、【サムシングファイブ】という考え方を取り入れている。結婚式の日に花嫁が身に付けると幸せになる【サムシングフォー・「何か古いもの (Something old)」「何か新しいもの (Something new)」「何か借りたもの (Somethingborrowed)」「何か青いもの (Something blue)」】の定義にもう一つ【サムシングサステナブル】を加え、婚礼においても大切にしている。例えば装花のアレンジでは、使用する吸水スポンジは廃棄が必要になることから、環境面を配慮して使用せず、花瓶に挿すアレンジメントにするといった方法でSDGsに貢献。引出物にもオーガニックのタオルを提案するなど、一つひとつにサステナブルのエッセンスを加えて、婚礼の在り方の新しい概念を作り上げている。
 「ウエディングは『ここから始まる2 人の未来への願い』でもあり、サステナビリティとも親和性があるという意識を持っています。その考え方をスローガン、ミッションステートメントとして、商品やサービスにも反映させています。」(井上氏)
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、11月1日号)