今号に掲載しているみんなのウェディングとの合同企画でも指摘されている通り、アレルギー対応に関するミスが結婚式現場で発生している。アレルギー対応をミスすれば、命にもかかわる重大な事態を招く。現場を良く知る司会者からも、「担当していた披露宴で、アレルギーの人が小麦粉のパンを食べてしまって呼吸困難になり、披露宴を一時中断して救急車を呼びました」という話も耳にした。こうした深刻な事態にまで至らなくても、現場におけるヒヤリハット事例は少なくない。
まずゲスト側の意識としては、最低限のご祝儀3 万円であっても、料理・ドリンクに2 万円～ 2 万5000円の高額の料金を“支払っている”意識であり、その分顧客に対する配慮は同程度の高級レストラン並みとの認識を持ち信頼を抱いている。現在は招待状でアレルギー情報をチェックするのも当たり前だからこそ、そこまで情報を収集している高級店並みの結婚式場がまさか単純なミスでアレルギー食材を混入させていることはないと思い込むのも当然だ。
それでも大人であれば、店に対して信頼を持ちながらも、自らのアレルギー体質を気にして出てきた料理の確認もするだろう。これが子どもだった場合、親の見ていないうちに食べてはならない料理を食してしまうことも十分に考えられ、その結果重篤な症状に至ってしまう可能性も出てくる。結婚式では子どもの列席もあるからこそ、高級レストラン以上に慎重な対応が求められるはずだ。
にもかかわらず、現場ではミスが起こり続ける。その理由を考えていくと、一つにはアレルギー対応を軽く捉えてしまっている面があるのだろう。実際に会場の支配人や料理長とアレルギーに関する話題になると、よく聞くのは「昔と違って今は好き嫌いもアレルギーと伝えてくるから面倒になっている」という言葉だ。
現在食物アレルギー義務表示対象品目は8 品目指定されているが、それ以外にも様々なアレルギーは存在する。知人の一人は、乳製品全般はまったく問題ないのに、チーズのみNGで、食べると嘔吐してしまう。さて、この知人は、チーズが単なる好き嫌いなのか。他の乳製品はOKのため好き嫌いと思う意識も分からなくはないが、実はアレルギーの一つであるのだ。
このように人によって様々であるのに、実際に提供する側が「好き嫌いなのでは」、「面倒」などと考えていれば、アレルギー対応を軽く捉えてしまっているのと同じだ。そもそも、一定の料金を得ている高級レストランの場合は、アレルギー以外にも「苦手な食材はありませんか？」と尋ねてくる。たとえ好き嫌いであっても、苦手なものを外すことは当たり前に配慮していて、それが高級レストランとしての矜持である。
もう一つミスの発生要因として大きいのは、現場サービス力にある。アレルギー対応のミスを防ぐために、現場サービスは最後の防波堤にもなりうる。仮に対応の必要なゲストがいれば、最初の挨拶の際に一声かければいい。そうすれば対応すべき人の間違いも防げ、さらに自分が声をかけられなかったゲストからは抜け漏れの指摘も出てくる。この数10秒のプロセスを省いた結果、アレルギー対応のミスはそのままに進んでしまい、結果としてゲストを命の危険にさらしてしまう。
サービスに関しては、単なる皿出し係になっている現状もまた課題である。テーブルで料理説明をすれば、そこに何が入っているかをゲストも確認でき、仮に不安があれば事前に回避できる。人手不足でこうしたプロセスを無くす傾向にあるものの、料飲業として命を預かる責任感をもっと考えるべきだろう。

（詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号）