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- 25.03.04
《法律視点》式場都合の結婚式中止は契約違反【ブライト 代表 夏目 哲宏氏】
ホテル雅叙園東京の今回の騒動について、ネット上では様々な声が上がっている。成約していた新郎新婦の気持ちを慮り、損害賠償や慰謝料を請求すべきという強硬な声も出ている。そもそも結婚式場側の都合で結婚式を中止することについて、法的にはどのような問題があるのか。さらに損害賠償、慰謝料はどの程度発生するのか。そこでブライダル法務事務所のブライト(東京都港区)の夏目哲宏代表に、急遽この疑問をぶつけてみた。
義務を履行する拘束力
――式場側の都合で結婚式を中止する場合、法的にはどのような問題があるのでしょうか。夏目「そもそも論ですが、契約成立以降は式場、顧客側でお互いに義務を履行しなければいけないという拘束力が働きます。契約が成立しているにもかかわらず式場の都合で施行をしませんというのは、明らかな契約違反です。これは非常に重要なことなのですが、式場側の認識としてまだまだ甘いと感じることもあります。と言うのもコロナ禍の時にホテルから受けた相談で、宿泊も宴会もなく開けておいても厳しいため、半年間閉館を検討している。それに伴い、予約の入っていた結婚式も断ろうと考えているとのことでした。結婚式を中止することはそんなに簡単な話ではなく、契約違反によって様々な責任が生じてきますと説明しました。」
夏目「式場側から中止できるパターンは、法的に2 つしか認められていません。一つは天災地変で、建物の損壊などにより物理的に結婚式を開催出来なくなってしまった場合。この場合は法的にも履行不能とみなされ、義務は無くなります。もう一つは顧客側に契約違反があって、契約を継続できない場合。例えば中間金を支払ってくれない、音信不通で打合せなども出来ないなど、顧客側の契約違反が明らかであればそれは中止の理由になります。」
――明らかな契約違反である場合、損害賠償の話にもなってくるのでしょうか。
夏目「もちろん、顧客側の被る損害を賠償しないといけない義務が発生します。それは顧客側の権利でもあります。とは言え、損害額がいくらなのかというのは算定によります。式場側の都合で結婚式を出来なくなったことは確かに気の毒ではあるものの、実施日まで期間のある場合はそれほど多額にはならないでしょう。まだ打合せの始まっていないような段階では、経済的な意味での損害の算出は限られていて、可能性としては会場までの交通費。あとは顧客が経営者であれば、新規時の契約に費やした時間に仕事が出来ていたという理屈も考えられなくはありません。ただ、10万円、100万円といった単位になるのかと聞かれれば、まだ打合せのスタートしていない時期の場合は難しいという答えになります。」
――会場側で規定しているキャンセル料は、損害額算出の基準になりませんか。
夏目「そもそもベースが違うため、同じようには考えられません。顧客側の都合によるキャンセルも契約違反であり、それにより会場の被る損害を予定して作っているのがキャンセル料です。これは民法でも認められています。その料金は、会場として営業する機会を損失するという前提に算出しています。それに対し顧客の被る損害とは、何なのか、そしてどれくらいの金額なのかという明確な基準はなく、仮に裁判になった場合もどこまで認められるかは難しいと考えられます。」
顧客側で立証する必要
――慰謝料についての考え方はいかがでしょうか。
夏目「経済的な損害に対する賠償と共に、精神的な苦痛に対して慰謝料は発生します。ただこれも、実施日までの期間がある場合、どこまで認められるかは難しいと思います。打合せも始まっていなく、招待状も出していない。そのタイミングであれば、仮にその式場で中止になっても、まだ他の式場で結婚式の出来る可能性はあります。絶対にこの式場で結婚式をやりたかったという強い想いがあったとしても、その精神的苦痛をどこまで認められるのか、そこまで大きな慰謝料の算定になるとは思えません。慰謝料の算定についても裁判で争うことになりますが、他ではなくどうしてもここで結婚式をしたかったというのは顧客側で立証しなければなりません。恐らく裁判では、その式場が一番希望であったとしても、仮に日程が埋まっていたら二番希望の式場を選んでいたのでは、つまり他でもいいのではと指摘されやすいかなと。それだけ難しいテーマです。」
――直前の場合は、話も変わってくるのでしょうか。
夏目「先ほど話したホテルの事例では、直前の結婚式もありました。そうなると、顧客は結婚式に向けてエステに通っていたり、何かを購入していたりする可能性も出てきます。また遠方からのゲストがいれば、すでに飛行機のチケットを取り、宿泊施設を予約していることも考えられます。準備が進んだタイミングの場合、様々な経済的な損害が発生し、それを全て賠償しなければなりません。また直前ということで、慰謝料も認められやすくなるでしょう。そうしたことを踏まえて、結婚式中止は止めた方がいいですとアドバイスしました。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、3月1日号)
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