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  • 社説:潮目
  • 25.01.10

「結婚式をするべき」という固定観念からの脱却を

今号の全国B.M.C.会長・菅野俊郎氏のインタビューにおいて、ホテル宴会の固定観念という言葉が印象的であった。人材不足によりこれまでのようなサービス提供が困難になっている状況で、その解決のために様々なアイデアはあるものの、ホテル宴会の固定観念ゆえになかなか踏み切れないという話だ。単純な例として、ホテルのサービススタッフは茶髪、長髪、ピアス、マニキュア、髭など、身だしなみ面で採用はNGとなっていた。配膳職種の給与条件が、他のサービス業に比べて圧倒的に高ければそれでも応募は来た。ところが人手不足により、一般飲食店も給与を高く募集するようになり、配膳職種の優位性はなくなっている。同じ1500円で片や茶髪は禁止、片や個性だから自由となれば、自由な方を選ぶのは当然のこと。ホテルサービスはこうあるべきという固定観念によって、アルバイト募集の厳しい制限になっている。
【べき論】で語られる固定観念は、マーケットの成長期・成熟期には大きな指針となり、多くのプレイヤーの拠り所になる、ただ衰退期に入ると、固定観念自体が衰退要因となっている可能性も否めない。ブライダル市場で考えた場合、結婚式はこうであるべきという【べき論】そのものが、消費者に受け入れられなくなっていて、それを維持しようとすればするほど消費者ニーズとは乖離する悪循環に陥る。これはブライダル業界の場合深刻な課題で、無形高額商品で文化的な側面のある結婚式を売るためには【べき論】こそ最大の武器だったのに対し、それが通用しなくなると一気に消費者離れを引き起こしてしまう。【べき論】そのものが、そう思っていないユーザーには煩わしさしか感じられない。
もちろん、「結婚をするのであれば結婚式をするべき」、「結婚式はこうであるべき」を大切にするユーザー(家族や周囲の人)もいる。ただ現在のナシ婚増の状況を考慮すれば、そうしたユーザーは確実に減少しており、限られたパイの奪い合いはさらに厳しくなってくる。【べき論】のユーザーは固定観念の結婚式を求めており、それに叶う商品を提供できるかどうかも厳しく問われるからこそ、結婚式のクオリティ勝負もまたし烈になるだろう。その点では、好調な会場と厳しい会場の二極化はさらに加速することは充分予想される。
結婚式をするべきという考えが希薄なユーザーを惹きつけていくには、捉われている固定観念を捨て去り、自由な【融通無碍(ゆうずうむげ)】の意識で再構築しなければならない。例えば冠婚葬祭の儀式としての枠を取り払い、エンタメ、ファッション、アクティビティなどの要素からのアプローチは出来ないものか。最近はZ世代に、2000年前後のテイストのY 2 Kファッションが人気となっていて、昭和の曲をカラオケで歌う傾向も注目されている。こうした若者世代のトレンドから結婚式を再構築していけば、煩わしさを払拭できるかもしれない。
固定観念を持たない自由でフラットな声を重視していくことも大切。ブライダル業界で「結婚式をするべき」と考えている人では、「結婚式は良いもの」というバイアスもかかってくる。その固定観念から、新しい発想は生み出されにくい。企業としては、【べき論】を語れる人材育成が必要であったのに対し、これからの発展を目指すのであれば、その【べき論】に違和感を抱いている人こそ貴重な人材かもしれない。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1日・11日号)

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