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  • 24.05.23

《ありがとう桂由美さん》ドレスデザイナー同士の交流 子どもの百日祝いにも参加【THE HANY デザイナー 伊藤 羽仁衣氏】

 先生とは公私ともに仲良くさせていただきました。パリやニューヨークでのお食事だけでなく、マッサージ、カイロプラクティックへ一緒に行くなど。振り返ってみると、たくさんの楽しかった思い出に溢れています。
 先生はまさにブライダル業界のレジェンド。生前時には、『生きている歴史上の人物』だと思っていました。人の幸せを誰よりも願い、その幸せを自分のことのように喜べるのが、たくさんあるうちの先生の素晴らしさの1 つだったと感じています。
 10年前、私の結婚式に参列してくださった先生。誰もが知る業界のレジェンドが列席者の中にいるわけですから、私の友人も握手をリクエストするなどしていました。その都度、「あなたもお幸せにね」と優しく声をかけていたのを今でも覚えています。
 2 人目の子どもを出産後、先生からお祝いの品やお手紙をいただきました。人の幸せが何よりも嬉しい人ですから、「ぜひ私の家族と一緒に過ごしてほしい」との思いで、百日祝いには声を掛け、先生も当日参加。長男とは楽しそうに接し、次男には『歯固めの儀式』をしていただきました。子どもの成長と誕生を喜ぶ、先生の笑顔が昨日のことのように感じます。
 ウエディングドレスのデザイナーという同じ立場だったので、共通していたのはドレスを通じて花嫁に幸せを届けること。言ってしまえば同業者で、競合他社とも言えるわけです。それでも『THE HANYが盛り上がることで、業界はさらに活気づく。頑張ってね』と応援してくださいました。
 先生はブライダル業界全体のこと、これからの結婚式のことを常に考えていました。特にコロナ禍では社会的に結婚式を躊躇する風潮でしたが、「お祝い事は幸せの連鎖。結婚式を今、もっと盛り上げていきたい」と話していました。実際にコロナ禍では一緒にインスタライブをやってみるなど、先生のアグレッシブな挑戦を本当に尊敬しています。
 業界を盛り上げたいというのは、これからの活躍が期待される学生にも向けられていました。ブライダル分野での優秀な人材確保を目指した、給付型の『YUMIKATSURA記念財団奨学金』。私も審査員を務めていましたが、先生は「このままでは日本のデザイナーがいなくなってしまう」と、常に未来を見据えていまし__た。「学生のデザインも世に送り出したい」と、若い力の持つ可能性にも、常に期待を寄せていました。
 ウエディング業界が盛り上がれば、カップルはもちろんゲスト、業界全体の幸せに繋がる。「業界の底上げのために、色々なデザイナーが集まってファッションショーができたら面白いと思うの」と、ワクワクしながら語る先生の笑顔を、今でも鮮明に思い出せます。同じデザイナーとして、その遺志を私自身が引き継いでいけたらと思っています。先生との思い出は、私にとって何にも代えられない宝物。大好きな先生、本当にありがとうございました。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号)