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  • 23.02.24

:連載74:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第74回 ブライダル法務Q&A vol.14「『卒花さん』用いた広告が違法に?」~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

 今回のコラムでは、2023年の夏頃に予定されている『景品表示法』の規制対象の拡大について、ブライダル業界への影響をQ&A形式で解説します。特に『卒花』を用いた広告展開にかなり影響が出そうなのでくれぐれもご注意を・・・。

Q.報道によると、この夏にも『景品表示法』の規制対象が拡大されるようですね。
A.そうなんです。『景品表示法』とは、商品・サービスの品質等を偽った広告や、過大なおまけを用いた営業活動を規制する法律ですが、その規制対象に「ステマ」を加えようという動きが加速しています。

Q.「ステマ」とはなんでしょう?
A.広告であることを隠して口コミや感想を装う宣伝活動のこと。欧米では以前から「消費者の判断を誤らせるもの」として規制対象となっていましたが、昨年末にようやく、消費者庁の有識者検討会が日本でも法律レベルで規制する方向での提言をまとめました。具体的には、インフルエンサーや顧客などに何らかの経済的利益を与え、自社に有利な投稿またはライバル会社の評価を落とすSNS投稿といった依頼をする行為などが問題視されています。

Q.ブライダル業界にはどのような影響が及びそうですか?
A.卒花やプレ花の「声」を用いた広告に注意が必要です。ブライダル事業者にとって、実際に結婚式を担当したカップルや、式場を選んでくれた顧客の「声」は営業上とても貴重なもの。一方で、仮に現在検討されている通りに規制対象となった場合、たとえば、卒花に金銭提供や無償ディナー招待券など何らかの経済的利益を与えて、「自社の有利になる情報」や「ライバル社の評価を落とす情報」のSNSへの投稿を依頼し、実際に投稿されたとしたら、これはステマであるとして『景品表示法』違反となる危険性が生じてきます。

Q.なんと!卒花やプレ花嫁を用いた広告活動が出来なくなるということでしょうか?
A.そういうわけではありません。「広告」、「プロモーション」などの表示があればステマとはならないので、卒花さんが「これは○○社から依頼された宣伝です」と表記していることがポイントです。または企業からの依頼ではなくあくまで卒花自身で「私が挙式した会場はこんなに素晴らしい」と書き込んでくれた場合は問題ありません。

Q.ただ、「これは○○社から依頼された宣伝です」と表記した発信は、正直なところ効果が半減してしまいますよね・・・。
A.そこが悩ましいところです。事業者としては出来るだけ「宣伝や広告であること」は隠しつつ「お客様の声を表に出したい」という意向がある一方、このたびのステマ規制の趣旨は「宣伝や広告なのかはっきりしない発信で消費者の判断を誤らせることを防ぐもの」なので、現状の広告・広報活動に対する一定の制約に繋がることは避けられないように思います。

Q.具体的な線引きがとても気になるのですが。
A.まだ決定していません。今後、具体的な運用基準が消費者庁で検討され、今夏を目途に『景品表示法』の規制対象に追加される見込みです。今後消費者庁から示される運用基準次第では、現状のブライダル業界内で展開されている営業活動の一部は、違法またはグレーゾーンの領域に含まれてしまうおそれがありますので、注意が必要です。もちろん、必要があればこのコラムでも改めて最新情報をご紹介したいと思います。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、2月11日号)