今回は最高裁判決で話題となった「夫婦の姓」に関する民法上の規定について解説します。結婚「式」の仕事には直接関係はないかもしれませんが、「結婚」関連の仕事をする上で知っておくべきホットなテーマですので是非ご一読ください。

１．今回取り上げるテーマ
　事実婚の夫婦が「夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だ」として、夫婦別姓での婚姻届の受理を求めていた裁判で、去る6月23日、最高裁判所は夫婦の訴えを退け「夫婦別姓を認めない法律は憲法に違反しない」との判断を示しました。
２．日本での「夫婦の姓」の歴史
　わが国での「夫婦の姓」の歴史について振り返ると、江戸時代までは大名や武士等の一部を除き「姓」をもつことは許されていませんでした。明治維新後、明治3年に一般国民も「姓」をもつことを許可され、明治8年には、徴兵や徴税の効率化を図る目的もあって、国民全員が「姓」をもつことを義務付けられました。
　では、この頃の「夫婦の姓」はどのようなルールであったかというと、明治9年に『結婚しても元々の姓を用いること』という太政官指令が出されており、明治初期の日本は『夫婦別姓』の国であったと言えます。
　しかしその後、明治31年に民法が制定されると、戸主制という「一家の大黒柱を中心とした家族観」に基づき『結婚したら妻は夫の姓になる』という『夫婦同姓』のルールに変更され、終戦後の昭和22年には「男女平等」を前提とした日本国憲法の影響を受け『結婚したら夫または妻の姓になる』というものに改正されました。結婚後の姓を「夫の姓」に限定せず「夫の姓」と「妻の姓」から選択できるようになったのは当時ではかなり先進的な出来事でしたが、「別姓を選ぶ権利」までは認められないまま今日に至っています。
３．現在の規定と賛否の意見
　上記の歴史を経て、現行民法は第750条で『夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。』と規定し、戸籍法第74条は、婚姻する者に対して「夫婦が称する姓」を届け出るよう求めています。これに対して以前から「別姓を選択できるようにするべきだ」という意見（選択的夫婦別姓論）があり、この意見に対し「賛成派」からは、95％前後が夫の姓を名乗っており実質的な男女差別が残っている。②姓を変える側の負担が大きい。③結婚後も姓を変えたくないという意思を尊重するべきだ。　などの意見が出され、「反対派」からは、①家族で姓が異なることで一体感が損なわれるのではないか。②旧姓利用を広く認めれば解決するのではないか。③子供の姓をどうするのかの議論が十分ではない。
　などの意見が出され、対立しています。
４．最高裁判所の判断
　そして今回の裁判では、最高裁判所は「夫婦別姓を認めないことが憲法違反とはいえない」と判断しました。
　留意すべきは、最高裁判所は「裁判所は憲法違反かどうかを判断するが、どのような制度が妥当かは国会で議論され、判断されるべきだ」という趣旨の見解を述べている点です。つまり、最高裁判所は「夫婦別姓制度を導入することが憲法違反」だと言ってこれを妨げているわけではなく、「夫婦の姓」をどうすべきかは国会で議論して決めるべきものだ、と言っているのです。国会のみならず、国民の間での議論が進むことを祈るばかりですが、読者の皆さんはどのような意見をおもちでしょうか。
（詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月11日号）