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  • 20.05.30

〈記者座談会〉顧客・スタッフ・パートナー 3つの視点で評価される

 このまま感染拡大が抑えられれば、延期した夏シーズン、さらに秋の繁忙期に売上げも取り戻せるという希望が出てくる。一方、コロナの渦中にあった春シーズンに、売上減少だけでなく、様々な負を背負ってしまったという企業もある。延期などに伴う消費者からの信頼。感染予防を含めた自社スタッフの納得感。さらにパートナー企業との関係だ。繁忙期になったとしても、顧客から選ばれるのか、喜び働いてくれるスタッフがいるか、パートナー企業が協力してくれるかという点で、シビアな評価の下運営そのものに支障が出てくる可能性がある。ここでは、コロナ禍の各社の対応などの裏話を、3つの側面から記者が語り合った。

前受金が与えたイメージ

 ――ブライダル各社の顧客対応に関して、評価が真っ二つに分かれている。個人的には延期、キャンセルの無料対応に関しては、特別なこと。コロナとは言え会場が規定通りに料金を徴収することを非難される状況は、それならば結婚式場が潰れてもいいのかと。当初は結婚式場も企業であるのだから、キャンセルの負担を被るのはおかしいという意見も多かったが、実際に外出自粛など社会が神経質になっていくにつれ、神対応が基準になってきた。本来真っ当であるはずのキャンセル料金の話が出来なくなってきたことで、上手に納得させていかないと多くの非難がSNSに出てしまっている。
  A「今回の緊急事態宣言下で感じたのは、私もステイホームが多くなると、ネットやSNSを利用することが多くなるわけです。ブライダルに関することも、ツイッターで企業名のハッシュタグを検索しましたし。延期料金を支払ってもらうというスタンスをとった会社の新郎新婦たちが、集団訴訟をしようなどという過激な投稿もありました。考えてみると、本来こうした対応は新郎新婦がもっとも信頼を寄せている、現場のプランナーと直接交渉していたわけです。ところが施設も休みとなり、信頼関係に基づいた話が難しくなってしまった。延期料、キャンセル料はデリケートな問題ですから、電話やオンラインでというのも難しいでしょう。店舗の臨時休業により、こうした話が企業のコールセンターと新郎新婦というドライなものになってしまったのも炎上した一つの理由かと。今回の事態で見えてきたのは、やっぱり現場プランナーが築いている新郎新婦との関係性は重要だということ。さらに、直接会ってお互いの温度感が伝わらないと、杓子定規なものになってしまう可能性も高いですね。」
  B「私も各社の評判を調べましたが、不満のポイントは大きく2 点。一つは相談のタイミングによって方針が変わってしまい、自分は損をしたのではという思い。社会の情勢がそれこそ一日一日変化する中で仕方のない面もありますが、どこかで花嫁同士が情報を共有することはないという軽い気持ちがあったのではとも感じます。今回の件だけでなく、あなただけに特別ですよと言った対応が、あっという間にインスタなどで共有されていく時代です。そうなると、他の花嫁からしてみれば、何故この人は良くて自分はダメなのかという不満になり、実際にここ数年はこうした課題が浮上していました。この傾向について、まだまだ甘く考えていた企業もあるのではと。もう一つの不満が、どこに相談したらいいか。店舗が休みだから会社に連絡したものの、それは現場でと言われてたらい回しされる。その間にキャンセル料率が変化してしまうとなれば、イライラが増してくるのも当然ですよね。」
  C「再延期などが重なれば、当然会社としての収入もどんどん後ろ倒しになっていきます。資金繰りの面から、延期の場合でも一定額を事前に支払ってもらう、それを結婚式当日の支払い分に充当するなどの措置を取るケースもありました。コロナの影響で大手企業であっても先の見通しが立ちにくい状況。特に新郎目線では、本当にこの会社は大丈夫なのか、先払いをしろというのは、経営が厳しいからでは。そのお金も戻ってこない可能性があるかもという不安をさらに加速させてしまったのでしょう。ブライダル業界では大丈夫だと思っても、世間一般とズレてしまうこともあります。」
  A「新郎新婦の意識の根本は、幸せ気分で高揚感もある。結婚式をやりたいという思いが強く、延期になったことを本当に残念に感じている人がほとんどでしょう。ただ、親や親族の立場ではどうか。ゲストとして招かれる側であったらどうか。仮に秋以降の延期だとしても、社会全体が感染予防に慎重になっている段階で、親の立場であれば、何もこんな時期にとなりますし、私がゲストであれば感染が不安だから行かないかもと。幸せ気分の新郎新婦にとっては、今回の事態によって周囲から何度も冷や水を浴びせられ、その意味では最大の被害者です。だからこそ目の前の新郎新婦だけではなく、2 人の周囲にも想像力を働かせることが今後も求められるはずです。」
  ――延期対応によって、現場のプランナーの疲弊感が増しているとの声も聞く。ここ数カ月の一連の対応によって、スタッフの思いにも大きく影響があったと考えられるが。

現場スタッフの納得感は 

 B「これは顧客からの評価とも大きく関係しますが、結局のところ現場のスタッフ自身が会社の出す方針にどこまで納得して対処していたのか。コロナの影響がいつまで継続するのか分からないのは、経営者も現場スタッフも同じ。会社の方針として年内までのキャンセルは無料、それ以降は有料とした場合も、そのスタッフ自身が年内に収束は難しいのではと考えていれば、どうしてもハッキリとした説明が出来なくなります。会社と新郎新婦の間に立つ彼・彼女たちの迷いが、結果として曖昧な対応を引き起こします。もちろん逆であれば、会社の方針を信念をもって伝えられるはず。その差が非常に大きかったのではないかと。今回消費者の評価が厳しかった会社は、そもそもスタッフがその方針を真に納得していたのかを考えるべきでしょう。その見直しをしないと、スタッフの会社に対するロイヤリティがすでに大きく失われている点にも気づかず、収束後に多くの人が退社してしまうというリスクも出てくるかもしれません。」
  C「業界の中には、6 月危機説を語る人もいました。ボーナス支給の時期となりますが、インセンティブ制などを導入している企業の対応が難しくなります。そもそも会社の資金が不足する中、約束していた成果報酬分が支払われないとなれば、労務問題に発展しかねませんから。また休業補償で100%を維持するのも、5月までが精いっぱいとの見方もあります。雇用調整助成金の限度額が変わるとは言っても、いつ入ってくるのかも見通しが立ちにくい。企業としてはまずは目先のキャッシュアウトを減らすことが最重要であり、そうなると負担が重い人件費に手を付ける必要が出てきます。」
  A「緊急事態宣言によって、会場はもちろん、多くのブライダル企業はスタッフを休業としました。休業補償も当面は100%という企業が多かったわけですが、この部分は難しい面もあります。というのも、コールセンターや経理部門など、どうしても出社しなければならない人たちもいます。こうしたスタッフは、感染するかもしれないという不安を抱えながら出社している。一方で、休んでいるスタッフについても、通常通りに給与が100%補償されるというのは、そもそも平等なのかということを指摘する経営者もいました。全スタッフのことを考えて100%補償を打ち出す会社もあれば、出社するスタッフとの兼ね合いも考慮しあえて休業補償は6 割、8 割にしたという話も聞いています。また出社しなければならないスタッフを配慮し、車で自宅まで迎えに行く、普段は対応していない昼ごはんなどを提供する、特別手当を付与するといった企業も。休業対応でも、経営者の姿勢が表れますし、それをしっかりと伝えることが大切では。」

秋シーズンの人材不足 

 ――対応ひとつでスタッフの心が離れていくというのは、会場運営の企業だけでなく、パートナー企業も同様。自社の従業員だけでなく、外注も関連している業種の場合には、春シーズンは全く仕事を発注することができず、関係性も大きく乖離してしまっている。 
  A「特に厳しいのは、サービススタッフかと。秋に向かってこのまま結婚式が順調に実施されても、当日を運営するサービススタッフが圧倒的に不足するという事態が生じます。ブライダルだけでなく、企業宴会が全滅しその影響を受けた配ぜん会は本当に苦しい状況です。フリーの立場の人たちが、収入を求めて配送の仕事などに移行しているとの話も聞かれますし。秋に結婚式が忙しくなったからと言って、その人たちが戻ってきてくれるか。またいつ仕事がなくなるかというリスクもあり、さらに言えば結婚式以上に影響が深刻だと思われる一般宴会によって、10,11月は仕事があっても、また12月以降になくなるという可能性も高いわけです。余りにも繁閑差が極端な業界で、再び働こうと思うかどうか。」 
 C「アルバイトのなくなった大学生を活用すればいいのではという意見もあります。ただ、実際にそうした人材を採用できるのは、仕事の見通しがついたせいぜい1 ヵ月前でしょう。しかも一定数の人を集めるには、配ぜん会側もそれだけのコストを要します。いわばゼロになった人を一から集めるための負担に、その時点であっても対応できるかどうかの問題があります。また、仮に採用できても結婚式サービスに対応できるレベルにまで教育していくのは、なかなかできないですし。コロナ禍でも結婚式をやろうと考えてくれた新郎新婦に、素人同然の大学生たちがサービスを提供するしかない。それが結婚式場の施行の評判に繋がっていく。こうした悪循環に陥れば、その後の新規獲得にも影を与えかねないです。」 
 ――今回の事態によって、ブライダルの内製化のリスクが露呈された。結婚式が厳しくなれば、連座して他の部門も壊滅的になり、その影響も図りしれない。そう考えると、外部のパートナー企業との連携は、今後さらに重要になるが、一方で今回の対応によって、企業=パートナー間の連携が深まったケース、逆の事例もあるようだが。

会場の信用不安に繋がる 

 A「配ぜん会への対応についても、あるホテルは数少なくなった春の結婚式の施行を極力配ぜん会スタッフに回し、さらに人数も通常以上に増やしました。人件費はかかるものの、なるべく仕事を提供することが、秋シーズン以降の施行で大切になるとの考えだったとか。同じホテルですが、写真や美容などのテナント料金を一定期間割引する対応も進めました。施設は臨時休業同然であり、パートナーにそのままテナント料金を維持するのはどうかという議論があり、こうした措置を決定したそうです。」
 B「外注比率が高い業種に関しては、個人事業主が対応することも多く、コロナの困窮をダイレクトに受けてしまいます。サービスと同様に、ブライダルの仕事をそのまま継続できなくなる可能性もあり、そうなると繁忙期に対応する人材がいなくなってしまいます。ある大手企業は、特に個人事業主が関連するパートナー企業に対して、結婚式延期組数× 1 万円の補助をしました。忙しくなってきた時にも、これまで通りに仕事をしてもらいたいという思いであり、結婚式収入の見通しが立たなくなっていたパートナー企業にとっては非常に助かったようです。まさに神対応です。」 
 C「企業によっては、パートナーへの支払い猶予を頼んだという事例も聞いています。中小会場だけでなく、大手でもこうした動きがありました。資金繰りが厳しいのは理解できますが、立場の弱いパートナーへの支払い猶予はいかがなものか。逆に、施行日締めであった支払い条件を、発生日締めに前倒しの変更してくれたという話もあります。パートナー企業もまた、ここ数ヵ月の会場の対応をシビアに評価しています。厳しい対応を打ち出した企業は、経営状況も悪化しているのではとの信用不安となりますから。そうなると、秋以降の仕事の受注にも慎重にならざるを得ません。施行はあってもサービスを提供できない、できたとしてもクオリティが落ち込むなど、今回の様々な対応が今後に大きく関わってくるでしょう。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)