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  • 20.05.29

:連載41:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第41回『ガイドラインを武器にする』~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

 ブライダル専門法務事務所、ブライト(東京港区)の夏目哲宏代表による今回の連載は、BIAのガイドライン発表に伴い特別インタビューを実施。ブライダル会場がこのガイドラインをどのように活用すべきかを検証していく。またコロナ禍で相次いでリリースされている、オンライン結婚式に関して、著作権法の対応などを聞いた。

 ――冠婚葬祭を別途でわざわざ明記した、専門家会議による「新しい生活様式」の提言は、非常に忸怩たる思いがありますが、一方で、BIAがそれに対するガイドラインを発表しました。 
 夏目「『新しい生活様式』による多人数での会食は避けての表現は、個人的には営業妨害に匹敵するのではと大変残念に思います。ただ、14日にBIAがガイドラインを発表し、その対応は非常にスピーディだったと思えます。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、神経質になっている消費者に対し、業界団体として一定の基準を示したことで確実に安心感を与えることができるでしょう。今後は各企業、会場でこのガイドラインをどのように運用していくかが大切であり、上手に活用していくべきと考えます。BIAのガイドラインの作成に関しては、経済産業省が窓口になっており、公式なものであるわけです。それに沿っていくことで、会場として適正に対策しているというアピール材料となります。」
 ――緊急事態宣言下では、明確な外出自粛要請、イベント等の開催自粛要請がありました。宣言解除によって、こうした自粛の基準が個々人のとらえ方によって曖昧となり、そうなれば逆に延期やキャンセルの判断が会場、消費者で完全に相反しトラブルも増えるのではということを危惧しています。
 夏目「確かに、消費者がパーティ=多人数での会食と考えてしまうと、結婚式はやるべきでないと判断することになり、キャンセルも顧客都合ではないと論じてくる可能性が高まります。ただ提言はあくまでも参考例であり、提言を受けて公式のガイドラインが出た以上、感染防止対策を適切に対応していれば法的に見ればキャンセルは顧客都合となります。専門家会議も提言しているからキャンセルするという理屈は立たず、だからこそガイドラインが武器になります。特に大切なのが、顧客と対面する現場のプランナーが、提言とガイドラインの内容をきちんと知っておくこと。原則論を正しく知っていないと、それがトラブルを引き起こす要因となりえますから。」 
 ――社会的に結婚式のキャンセル料請求に対し、最近厳しい意見が出てきているのも事実です。会場側でも頭の痛い問題です。 
 夏目「こうした論調でよく語られているのが、不可抗力という言葉です。例えば2 月実施予定だった新郎新婦が、7 月に延期。しかし7 月も不安だからと解約を相談したところ、解約料金を支払ってくれと。これに対し、コロナによる感染拡大、緊急事態という不可抗力だから、顧客都合にはならず支払う必要がないという声があります。これについては、そもそも日本で緊急事態宣言が発令されたのが初のことです。そうした状況下での不可抗力に関する判例もないため、どうなるのかは正直分からない部分もありますが、個人的には不可抗力とは言い切れない場合も多いと考えます。例えば自然災害などで、チャペルが全壊してしまったなど、事実上結婚式が開催できなくなった場合、不可効力で料金を徴収できなくなります。ただ今回の事態については、開催しようと思えばできる状況。特に前例の7 月の挙式であれば、緊急事態宣言が解除されている可能性も高いわけです。さらに準備に関しても、オンラインなどを使って進めようと思えば十分にできます。それを考えると、不可抗力だから常にキャンセル料金を支払わなくてもいいというのは、理屈が立たないという見方です。ちなみに法務省でも、結婚式をキャンセルする場合は原則契約の通りという文面を出しています。もちろんトラブルにならないために、話し合いは大切ですが、少なくともこうした一連の発表、原理原則については知識を得ておくことが大切ではないでしょうか。」
 ――リアルに多くの人を集めることが不安という新郎新婦に対し、オンラインでの結婚式を提案する会場、そうした仕組みを提供しようという企業も増えています。ここで大きなハードルになるのが、音楽著作権の問題です。 
 夏目「一言でオンライン結婚式と言っても、結婚式のような映像を一から作って配信するもの、挙式のみ、挙式・披露宴のオンライン配信など様々かと。例えば全ての音楽について著作権フリーの音源を使用している、クラシックなどの作詞・作曲家の死後70年以上経過している曲を生演奏するのであれば問題ありません。ただ、作詞作曲家や、CDなどの制作者に権利がある楽曲をオンラインで流すことは、著作権に引っ掛かります。ブライダル業界では、DVDなどの複製に関する権利に関しては、これまでJASRAC、レコード協会、そしてISUM等が仕組みを整え申請許諾することも可能でした。しかしオンライン配信に関しては権利が異なるため、その仕組みを使っての申請許諾は現状できません。別の許諾が必要となるのですが、現状では各権利者に個別に許諾を得るしかありません。オンライン結婚式で市販楽曲を無許諾で配信することは権利侵害の恐れがあり、注意が必要です。」
 ――仕組みだけ提供して、新郎新婦が勝手に配信したというスタンスであったり、オンライン部分では費用を取らないから私的利用だという理屈を語るケースもあります。
 夏目「著作権侵害の当事者は仮に新郎新婦であっても、そこに式場や業者が関わっていれば、当然悪質性が高いとみなされるでしょう。さらに演奏権とは異なり、非営利無報酬であれば私的利用だという例外規定は、ことオンライン配信に関してはありません。無料であっても、著作権処理が必要となっています。つまり、無断利用は著作権侵害になるのです。コロナでブライダル業界も大変だからといって、違法行為をするのは認められないのは当然のこと。現状申請許諾には課題が残る状況を踏まえ、オンラインで式やパーティを実施する場合生演奏やフリー音源の使用の徹底など、適正対応が必要です。」。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)