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  • 19.11.18

:連載36:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第36回『台風時の法的対応を一挙 解説<前編/会場と新郎新婦編>~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

 10月の3 連休、日本列島を直撃した台風19号は、ブライダル業界にも大きな傷跡を残しました。
 今号から2 回にわたり、法律の観点より台風と結婚式における諸問題を考えます。まず今回は、【会場と新郎新婦の関係性】についてです。
1.台風により物理的に結婚式が開催できない場合
 たとえば台風によりチャペルが倒壊した、周辺全域が停電になった等の理由で物理的に結婚式が開催できない場合。法律的に「危険負担」(民法536条1 項)の問題となり、その結果、会場は新郎新婦へは代金の請求をせず(すでに受領していれば返金して)終了、という形になります。なお民法536条は任意規定であるため、もし約款において別の規定があれば、その内容が適用されます。
2.「やれなくはないが」会場が中止・日延べを決定する場合
 新郎新婦も中止・日延べに同意していれば何の問題もありませんが、新郎新婦が「決行」を主張している場合には、「会場が独自に中止・日延べを決定できるのか?」という難しい問題が生じます。
 契約がある以上、会場には所定の日時に結婚式のサービスを提供する義務があります。もしそれを一方的にやめてしまえば、債務不履行の責任を負うのが原則だからです。その例外は、提供しないことが不可抗力などを理由に正当化できる場合に限られます。
 ただし、「不可抗力と言える状態だったのか?」という点は事後的な判断によるものとなってしまうため、台風襲来が迫る状況でタイムリーに決断するには、予め婚礼約款等において「台風が襲来した場合にはこういう取り扱いにする」という条項を入れておくことが必要です。
 これまで、台風の多い沖縄県等の例外を除き、こうした【台風条項】については新郎新婦の不安を煽るのではないかという懸念から、採用している例は限られていました。
 しかし、今般の台風19号は世の新郎新婦の意識を大きく変えたはずです。今後はいざというときの条項を規定していることが安心感を与え、逆にそうした規定がないことが不安感を与えることに繋がるのではないかと推察します。
 今回を機に、台風条項の見直しや、婚礼約款への新規追加を検討されてはいかがでしょうか。
3.会場の「決行」判断に新郎新婦が反対する場合
 では、会場として予定通り開催する判断をしたところ、新郎新婦から「こんな時だから中止にしたい」と希望があった場合はどうでしょうか。
 基本的な考え方として、会場が開催可能な状態である以上、どうしても新郎新婦が開催を拒むのであれば、それは契約上の「お客様都合の解約または日程変更」に該当するという解釈は充分成り立ちます。そのため、会場から所定のキャンセル料や日程変更料を請求することも可能だと思います。
 ただ、「開催可能な状態だったのかどうか」の判断は難しく、納得を得られなければ事後トラブルが長引くリスクが怖いところです。 そのため、予め婚礼約款において、台風襲来時には「誰が」「何をもって」「どう判断する」という規定を設けておくことが有用です。
 なお、婚礼約款に条項を追加する場合には、闇雲に書き加えればいいというものではありません。消費者の利益を保護する「消費者契約法」上の規制ともバランスを取らなければならない点をご注意下さい。
 次回は「会場とパートナーの関係性」についてまとめます。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、11月11日号)