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  • 19.07.26

トップ商空間デザイナー杉山敦彦が語る【売れる施設づくり】リニューアルのタイミング(THE WHOLEDESIGN代表取締役 杉山敦彦氏)

 リニューアルをする理由の一つに、時代のトレンドにハードが合わなくなったからという意見があります。実際に、チャペルやバンケットをマーケティング視点からデザインすると、時代の変化にハードが取り残されていきます。大切なことは、ブランディングであり、建設時にどういった思想を持っているか。
 あるホテルからリニューアルの相談を受けた際、私のデザインしたチャペルはどのくらいの期間で改装していますかと聞かれました。これまでの事例を思い返すと、10年以上、15年以上まったく改装をしていないという施設もあり、しかも売れています。
 例えば流行りのタピオカ店を作るのであれば、トレンドに合わせ流行っているデザインで店を作れば、瞬間的にマックスで売り上げることができます。売れなくなれば、別の事業を始めればいいわけですから。ウエディング、ホテル、大型のレストランなどがこうした発想でハードを作ると、確かに瞬間的には繁盛するかもしれませんが、売れなくなるスピードも早い。これでは、強い施設にはなりません。多様化が進み移り変わりのスピードも急速に早まる中、マーケティング上のトレンドを追っていく空間デザインは、今後さらに厳しくなるでしょう。それを踏まえた上で、リニューアルのタイミングをどのように考えていくべきか。マーケティング視点のデザインがトレンドから遅れてしまえば、結果として集客はできなくなります。集客ができないから、リニューアルすべきと考えるでしょう。もっとも集客減少の原因が、建物にあるのかどうかも考える必要があります。
 この原因を分析するためには、なぜ売れていたのかを把握することが不可欠です。売れていた要因がわからなければ、売れない理由も明確になりません。ここで注意すべきは、実際に集客できていないのはハードが要因でない場合もあることです。むしろ建物はいいのに中身が悪いところもあり、そうなればリニューアルが解決の手立てではないわけです。また、こうした問題の検証と共に、リニューアルの場合には予算とのバランスも大切です。
 以前、リニューアルの声をかけてもらった施設に行ってみると、ハードはそれほど悪くない。ところが、集客が落ち込んでいたため、1000万円を使って改装したいということでした。仮に1000万円で改装したとしても、新郎新婦、利用者から変化を気づいてもらえない可能性が高い。自分たちでリニューアルしたと発信しても、その変化に気づいてもらえなければそもそもリニューアルする意味がないのです。
 現状のハードの状況と予算を考慮し、提案したのはガーデンへの投資です。ハードが悪くない一方、ガーデンへの気配りがそれほどなかったため、900万円をかけて中庭、外庭をしっかりと作り込んでいく。予算は当初より抑えながら、結果として売上が高まりました。
 予算と効果のバランスを考慮した場合、リニューアルをするよりも、例えばHPを改修したほうがいいのではないか、引出物袋をオシャレにすべきといった提案をすることもあります。1000万円の予算が取れたからとリニューアルをしたとしても、それだけの投資では効果もそれほど高まりません。一方、ハードに1000万円をかけるよりも、それを人材教育に充てればその効果は遥かに高まります。また、変化をそれほど見せられない投資をするのであれば、少し我慢してその費用を貯めておき、然るべきタイミングである程度の額を費やすことでドラスティックな変化が生まれます。
 リニューアルにおいて、3 バンケット以上を保有する施設も難しい面があります。バンケットが複数あると、必ず不人気のバンケットが出てきます。こうした施設の一つの方法として、1式場1 バンケットの施設を作る感覚を勧めています。仮に新築で1 式場1 バンケの施設を作った場合、地方であれば120組程度の獲得に対し、建設費は8 億円前後。不人気バンケットを復活させ、100組の増加を目指すうえでは、例えば神殿を1 億5000万円で新設し、5000万円でそのバンケットを思い切って和に振り切ったリニューアルを実施する。挙式から披露宴までイメージの流れも明確になると共に、1 式場1 バンケットの建設による効果が、4 分の1 の投資で可能となります。現在の和婚人気を考えれば、こうした改装も含めて計画していくべきでしょう。 
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月11日号)