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  • 19.05.03

トップ商空間デザイナー杉山敦彦が語る【売れる施設づくり】ブライダル会場の効率的な導線づくり(THE WHOLEDESIGN代表取締役 杉山敦彦氏)

 ブライダル会場づくりは、デザインはもちろんのこと効率的な導線も不可欠です。しかも、新郎新婦、ゲスト、新規来館者、そしてスタッフと、4 つの視点での導線をデザイン前に想像しなければならず、それだけノウハウが求められます。私はもともと会場運営会社出身であり、オペレーションや、パーティーの流れなどを理解していることが強みになっています。
 大手企業はこれまでの経験から独自にノウハウを蓄積し、デザイナーや建築士にそれをきちんと伝えることができます。一方、異業種参入の新規や、これから複数展開を目指していこうという企業の場合、ウエディングをそれほど理解していないデザイナーや建築士に任せっきりにしてしまうことで、オープン後に様々な問題が浮上するということも珍しくはありません。
 当社は、初めての取引先のデザインを手掛ける際、入念にヒアリングをしていきます。ブライダルのことは理解していても、企業によってオペレーションや考え方、企業文化は様々であり、他の会場で成功したものをそのまま適用はできないからです。受付けはどのタイミングで行っているのか。挙式前のゲストの待機場所、式終了後の流れ。それこそトイレのスペースに対する考え方や、男女更衣室の大きさなど。様々な項目をヒアリングで確認していきます。
 ヒアリングで企業独自のオペレーション、ノウハウを知ることで、提案につながっていきます。例えば挙式リハーサル一つ取っても、直前で実施するところ、そうでないところに分かれます。仮に直前にチャペルで行う場合、その手前にあるゲスト待合を新郎新婦が通らずにショートカットする必要が出てきます。では、どのようにしてショートカットさせるのかを提案します。ウエディングドレス姿の新婦に、まさかバックヤードを通すことはできませんから。また、挙式のタイムスケジュールが夜にかかる場合はもちろんのこと、新規来館を仕事終わりの時間にも想定している場合は、人がいないことでチャペルが寂しいといった印象にならないよう、ライティングなどを工夫しています。このように、企業によって異なるオペレーションを想定した上でのデザインが重要なのです。
 オペレーションも含めてブライダルをそれほど理解していないデザイナーや建築士の場合、様々な問題が発生します。よく見られるのが、デシャップのレイアウト。100人に料理を提供するバンケットであれば、できれば50皿は並べたいところですが、狭すぎるということはありがちです。パートナー企業の搬入導線を来館者から見えない位置にしなければならないのに、チャペルの外でフラワーシャワーをしている時に搬入トラックが見えてしまうことも。
 スタッフがどこから施設に入ってくるのかも考えるべき事項です。私服姿のスタッフが玄関からしか入れなければ、顧客と鉢合わせになってしまうことが想像できます。保健所の指導でトイレの扉を作れなかったのは仕方ないにしても、ロビーに近すぎて中の音が漏れる。当社ではエレベーターに関して基本11人用を提案していますが、価格を考慮して少人数のものを設置してしまうこともよくあります。結果、ゲストがエレベーターホールで待たされ、しかもギュウギュウ詰めで乗らなければならず、満足度が低下する要因になります。せっかくオープンキッチンを作ったのに、調理スタッフがお尻を向いているレイアウトで、ダクトばかりが目立っているなどなど。苦戦している会場ほど、こうした問題が見受けられ、しかも竣工後には手の打ちようがなくなってしまいます。
 例えば、独立型チャペルでそこに行くまでに屋根を作れないことがあります。当然、雨の日は不便なのですが、そこで雰囲気のある和傘を採用し、景観を優先したから屋根をあえて作らなかったなどの営業トークを構築すれば、ウィークポイントをプラスに変えることも可能です。また、新規来館見学についても、実際の結婚式と会わないようにすることは基本ですが、別導線を作りチャペルやバンケットの小窓から様子を見せる会場もあれば、ムービーを視聴してもらい空いている時間に案内するといったスタイルをとるところも。
 最終的にどちらを優先するかは、あくまでもオーナーの判断となります。ただし、デザイナーとしては、そこで発生するであろう課題を、しっかりと伝えていく役割があるのです。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、4月11日号)