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キーマンに聞く

声と言葉を“カタチ”に残す【ケーアールケープロデュース 営業部部長 猪股 進氏・テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングアドバイザー 有賀明美氏・ワイケープロデュース クリエイティブディレクター 中村友洋氏】
写真やアフターブーケなど、結婚式を“カタチ”として残せるものはそう多くはない。その1つに記録映像はあるが、受注率に課題があるのも事実だ。今号は、「記録映像は絶対に入れるべき」と長年力説してきたテイクアンドギヴ・ニーズの有賀明美氏と、撮影事業を展開するワイケー(ケーアールケー)プロデュースの猪股進氏、実際に現場で撮影を担う中村友洋氏の3名で、その価値を改めて語り合った。人の記憶は薄れていくからこそ、『記録映像を通じて声と言葉をカタチに残すべき』と提案することは、ブライダル事業者に必要なことだ。
伸び悩む受注率
――記録映像の受注に関して、業界全体の傾向は。
猪股「撮影事業者のみなさんと情報交換することもあって、話を聞く限り、スナップ写真の受注率はほぼ100%。撮って出しエンドロールは、70%くらいで推移している状況です。一方で記録映像は、業界全体で微減傾向。中には受注が30%を下回っているという式場の話も耳にします。記録映像を売れない理由は様々あるものの、撮影事業者として、プランナーの皆さんに、そしてカップルにも価値をもっと知ってほしいとの想いを強く持っています。価値がきちんと伝われば、受注状況は改善してくると感じています。」
有賀「私自身も『記録映像を売ろう』ということを、社内外で強く言い続けてきました。T&Gのお客様アンケートを見ていくと、『記録映像をもっと勧めてもらえていたら、発注していたかもしれない』という声もあって、“後悔”とも捉えられるわけです。さらに紐解いていくと、エンドロールを発注したことで、スピーチや謝辞のシーン、手紙の演出など、全て撮ってもらえると思っていたという“勘違い”もゼロではありません。エンドロールと記録映像は同じ動画とはいえ違うものだということを、私たちはきちんと伝えきれていない。これは大きな業界課題の1 つだと感じています。逆を言えば、記録映像とは何か、またその価値をきちんと伝えることができれば、約20万円の予算を捻出してくれる可能性は高まってくるはずです。」
――売れない理由の1 つに、提案フローもあるそうですね。
有賀「写真も含め、エンドロールと記録映像の撮影関連商品を同じタイミングで提案するケースも多いかと。『スナップが〇円、エンドロールも希望でしたので、合計〇円ですね。ちなみに記録映像はどうされますか…?』と、この日だけで見積りが一気にアップしてしまうことから、つい弱腰な提案になりがちです。これ以上言って押し売りと思われたら嫌だという心理も相まって、しっかり説明できていない。『エンドロールだけで大丈夫です』というカップルの言葉にどう返すか戦略を立てていくことで、発注率は改善されていくと思います。」
中村「時間をかけて創り上げた結婚式がどうカタチになり、どんな風に表現されているのかを“ダイジェスト”のように見られますから、『エンドロールは大好き』というプランナーは多いように感じます。一方で、記録映像に関しては『あまり見たことがない』というケースも昨今は増加傾向にあって、結果としてカップへの提案も、自信のないものになっている可能性は否めません。」
――改めて、エンドロールと記録映像のそれぞれの特徴は。
涙までのストーリー
有賀「撮り方の違いなど専門的な部分もありますが、分かりやすい部分は『声と言葉』を残せる点。映画に例えると、エンドロールは涙のシーンやクライマックスをハイライトで収めたイメージ。記録映像は、その涙が生まれるまでの登場人物の葛藤や苦しみといったプロセスにも光を当て、一連のストーリーとして残すものです。実際にあったパーティーで、孫の晴れ姿を見た祖母が、『今日まで長生きしてよかった。おばあちゃんはとっても幸せ』と言う言葉を口にしていました。記録映像を頼んでいなければ、この声と言葉はもうカタチに残らない。お父さんの謝辞も同様に、『エンドロールのみではそのタイミングはもう撮影できないため、動画に残らない』とプランナーからきちんと伝えることで、『じゃあ購入しようか』とカップルは絶対に考えてくれるはずです。冒頭の顧客アンケートの話に戻りますが、記録映像をオーダーしなかった“後悔”はここに詰まっています。『あの言葉、残ってないんですか?』という後悔を生まないようにするためには、提案する側が2 つの映像商品を改めて理解し、きちんとその違いを伝えていくことは必要不可欠です。T&Gの公式インスタアカウントでも、コメントがつくのはエンドロールではなく記録映像。エンドロールの美しさはもちろん価値あるものの、笑い声、歓声、そして言葉。これからの時代において、そのリアルな部分こそ、人の心を動かすと思います。これはスマホの動画でも同じこと。イメージしてほしいのは、例えば今から赤ちゃんが産まれるという時、撮るのは写真ではなく、その産声を残すための動画です。プロポーズのシーンも、その言葉を残す動画に価値がある。ではなぜ、結婚式をムービーで撮らないのか。きちんと提案さえできれば、記録映像はもっと多くの人に届けられるはずです。」
中村「私自身もエンドロールの撮影担当で現場に入った際に、カップルにとって大切な人の言葉、声を現場で聞いて、『このパーティーは絶対に記録で残した方がよかった』と感じることは多々あります。撮影事業者側の話になりますが、エンドロールと記録映像の差が薄まってきていることも挙げられるかと。企業によってはエンドロールに生の音を一部入れるケースもあるようですが、全部の言葉を追うことはできません。また、クリエイター目線から見たエンドロールとの違いは、記録はやはり『記録』ということ。カップルのために映像を撮るのはもちろんですが、直近ではなく10年後、更には20年後に見返した際に何を残せるかを重視しています。例えば、挙式の新郎入場シーン。新郎のアップというよりも、拍手で迎えるゲストの様子を引きで撮影、そこから新郎はどんな表情を見せているのかに繋げていくイメージです。反対にエンドロールは、後日友人に見せることもあるかとは思いますが、メインで見るのは当日の列席者。そもそもゲストは入場シーンを現場で体感しているわけですから、全体的な構図よりも、新郎の表情、それに対してお母さんがどんな仕草を見せるのかなどにフォーカスを当てています。尺はもちろん、撮り方も表現の仕方も大きく異なるわけです。個人的な考えとして、エンドロールと記録の2 つがあって、ようやく結婚式に必要な“映像”になると感じます。」
提案タイミングを変える
――ここまで聞くと、記録映像の持つ価値を強く感じる人も多いかと。そのうえで、確実に受注に繋げていくポイントは。
有賀「1 番やりやすいのは、タイミングをずらすこと。現状の受注状況から見ても、『エンドロールは入れたい』というカップルは多いでしょうから、写真とエンドロールを先に提案。その際にも、記録映像の話と価値を伝えておくことはポイントです。そこで受注できればベストではあるものの、断られるケースが大半。要は、その1 回のみの提案で終わってしまい、そのまま施行当日を迎えていることが問題なわけです。実は記録映像は、打合せが進み具体的な進行も決まって、ゲストの集まるイメージを描けるようになってから、必要性を感じてくれる人も多い。仲のいい友人にスピーチを依頼した、挙式で誓いの言葉をお互いに伝え合うことが決まった、ファーストミートで想いを伝えたいなど。決定事項の増えていくタイミングこそ、1 番の提案チャンスです。『結婚式当日は、大切な人達からたくさんの言葉を受け取る日になりますね。やっぱり記録映像で、その言葉と声をカタチに残しませんか?』と、もう一度価値を伝える。これにより、受注率は10ポイントアップできると思っています。私自身も担当してきたパーティーで、1 回目の提案で断られたことは数多くあります。その上で、『絶対に記録で残してほしい』と頭の片隅に入れていますし、いいものだからこそ提案したいと、私も必死で打合せに臨んできました。例えば、記録映像を断られた後、『新婦にサプライズで手紙を読みたい』という相談を新郎から受けたとします。この場合、記録映像の再アプローチをかけるのは新郎側。『手紙を読み上げる際の声は、新婦からもう一度聞きたいと、将来絶対に言われますよ』と伝える。進行の中で1 番残したいものは何かを考えると、自ずと提案に力はこもってくるはずです。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月1日号)

