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“怖さ”を越えて一歩踏み込む勇気【テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングアドバイザー 有賀明美氏】

“怖さ”を越えて一歩踏み込む勇気【テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングアドバイザー 有賀明美氏】

 一歩踏み込まなくても、結婚式は創れてしまう」。そう語るのは、テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区)のウェディングアドバイザー・有賀明美氏だ。離婚といった家族背景のほか、親・きょうだいとのわだかまりなど様々な事情もある中で、新郎新婦の抱く“陰”に一歩踏み込む勇気を持てるかどうか。「“怖さ”を乗り越えられれば、家族の人生を変えられる」と力説する有賀氏に、ヒアリングのポイントなどを聞いた。

センシティブな話題から逃げる

――業界歴20年以上の有賀さんから見て、昨今感じるプランニングの課題などはありますか。

有賀「『どんなパーティーにしたいのか』といった新郎新婦の希望自体はヒアリングできている一方で、さらにその先、一歩踏み込むアクションを躊躇しているケースはまだ多いように感じます。例えば、『兄は結婚式に参加しないので』と言われた時、なぜそうなのかを聞くべきなのに、〝怖さ〞が勝り、『承知しました』とだけ答えて話を流すなど。センシティブなトピックは家族の人生ストーリーに一歩踏み込むわけですから、躊躇ってしまう気持ちも十分理解できますし、こうした〝陰〞の部分を深掘らなくても、結婚式自体は滞りなくお開きまで持っていけるでしょう。一方で、その〝怖さ〞の殻を破ることができれば、未来をきっと変えられる。家族の人生に向き合う姿勢は、重要と感じます。」

――有賀さんも長いキャリアにおいて、多くの結婚式をプロデュースしてきました。様々な背景を持つカップルも、中にはいたそうですね。

有賀「社会全体で見ても離婚数は一定ありますし、例えば父親不在のケースでも、家庭により背景は異なります。死別の場合、新婦の幼少期に亡くなっていてもう気持ちの整理がついているのか、それとも半年前のことで心に大きな穴が空いたままなのか。離婚においても離れた父親と新婦の仲はいいのか、また母と父の関係性はどうなのか、などなど。ちょうど先日、『私の担当プランナーは、AIみたいに決まったことしか言ってくれない』という、プレ花嫁の投稿をSNSで見ました。新郎新婦にもっと介在していく必要性を感じましたし、『躊躇している場合じゃないよ』とプランナーの背中を押していきたい。AIが生活の一部になり簡単に情報を収集できる今こそ、プランナーの踏み込む姿勢の価値が問われているように感じます。」

――とはいえ、どのようにヒアリングしていくかも難しいところです。

有賀「こうした部分を引き出すには、そもそも信頼関係をきちんと構築できているかが大前提。例えばヒアリングの最中、家族の話になった途端下を向く、表情が一瞬かげるといったこともありますから、カップルの変化にアンテナを張っておくことは重要です。さらに、『結婚式は2人のこれまでをギュッと凝縮したような時間。楽しかった思い出はもちろん、家族や友人とのわだかまりなど、〝心残り〞に感じることがあれば、それも一緒に教えてほしい。心の準備が出来ていないのなら、今日でなくても大丈夫ですよ』と、前もって伝えておくのもポイントです。表情の変化から疑問を感じた一方、新郎新婦から話が出なければ、『前回打合せの際に私はこう感じたんですが…気のせいでしょうか?』と、こちらから一歩踏み込んでみる。パートナー不在の方がいいと判断すれば、個別に電話を入れるのもいいでしょう。カップルの人生に向き合う覚悟を、きちんと見せているのかがカギと言えます。」――一歩踏み込んだことで、未来を変えられることもあるそうですね。

有賀「新婦はお父さんとバージンロードを歩くのが夢だった一方、両親は離婚しており、父親自身に『幼少期から離れて暮らしているので、私にその資格はない』と断られてしまったということがありました。新婦を喜ばせるために新郎も数ヵ月にわたって説得を試みたものの、お父さんの気持ちは堅かったようです。そこで、カップルとプランナーとで打合せの時間を設け、改めて気持ちをヒアリング。『やっぱり夢を叶えたい』という2人の想いは強く、親族と被らない時間帯で、表向きは写真だけを撮る流れにし、まずはお父さんに来館してもらうことを、プランナーからカップルに提案しました。式当日、ゲストもまだいない時間に来館したお父さん。プランナーは新婦から預かった手紙をお父さんに渡すなどして気持ちを盛り上げ、最終的にはバージンロードを一緒に歩けたそうです。一歩踏み込む〝怖さ〞を乗り越えられれば、見える景色と、家族の未来を変えられる。私はそう信じています。」