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キーマンに聞く

カジュアルスタイル専門式場【テイクアンドギヴ・ニーズ CASUAL WEDDINGプロジェクトリーダー UNWEDDING中之島支配人 畑中克彦氏】
テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区/以下T&G)は昨年10月、カジュアルスタイル専門施設の【UNWEDDING (アンウェディング)中之島】を、大阪にオープンした。高付加価値・高単価のウエディングを“得意”としてきたT&G。カジュアル領域への着手は、既存の婚礼スタイルにマッチしないカップルへの訴求を強化するという強い想いが根底にある。CASUAL WEDDINGプロジェクトリーダーであり、同施設の支配人・畑中克彦氏に、これまでの業界課題と企画の背景、サービス概要などを聞いた。
新しい祝宴マーケット創出
――カジュアルウエディングスタートの背景は。
畑中「私自身もともと新規事業企画の部署に在籍しており、ブライダルのほかホテルのプロジェクトにも取り組んでいました。その中で当社社長の岩瀬から、『今ターゲットにできていないカップルに、どうリーチをしていくべきか。ビジネスチャンスを考えてほしい』と言われたのが、そもそものスタートです。マーケット自体もシュリンクしている中で、『注目されるのは恥ずかしい』、『準備が大変』、『金銭的に厳しい』といったことから、結婚式を実施しない層は一定数います。この層にT&Gとしてもしっかりリーチし、実施率向上に繋げていきたいと。今までにない新しい価値観を提供し、新しい祝宴マーケットを生み出すため、2023年10月、社長直轄のプロジェクトチームを発足しました。」
――畑中さん自身感じていた、業界の課題とは。
畑中「新規見学に来たカップルに、『結婚式は素晴らしいものなので、絶対に挙げるべき。ぜひ当施設で』と伝えているにも関わらず、いざ自分の番になると旅行だけで済ます、写真も残さない、指輪すらも買わないという業界関係者も多く見られています。本来ならば自分たちの手掛ける結婚式を“購入”するべきなのに、なぜかそれが起きていない。T&Gにおいては、高単価高付加価値のウエディングを“得意分野”とし、プランナーのヒアリングスキルと提案力を武器に、カップルのニーズをキャッチしてきました。例えばそこから、普段は見られない親子の感動シーンに繋がるケースもあります。結婚式と聞くと心の動く瞬間を想像する人も多いですし、そうした場面は本当に素晴らしいもの。一方で、“御涙頂戴”のない結婚式があってもいいのではと、私自身感じていました。最終的にカジュアルスタイルとしての打ち出しに至るわけですが、これに関しては社内でも賛否両論あり、『T&Gらしくない』といった声が出たのも事実です。一方で、感動シーンを恥ずかしいと思うカップルも一定いますし、何より業界で働きながら結婚式を挙げていない人がいることは、既存で提供している結婚式は全てではないと。選択肢の少なさを課題に感じていましたし、そこに対してイノベーションを起こしていきたいとの想いです。」
――主なターゲット層は。
畑中「サービスのコアターゲットに設定したのは、形式的な儀式は苦手、無駄な演出・進行を避けたい、ゲストに満足してほしいといった考えのカップル。これに加え、サブターゲットとして、金銭的に難しいなど物理的に結婚式を諦めている人たちへの訴求も目指しています。そこで、2024年9 月に当社の施設『TRUNK BY SHOTOGALLERY』において、モニターカップルのパーティーを実施。案内時点で既に反応はよく、30組の応募となりました。実際に聞かれた声としては、『食事会のような気軽さで友人とパーティーをしたい』、『結婚式1 日のために準備を重ねていくのは大変そう』など、まさにターゲットに設定したカップルからの応募だったわけです。後ほど詳細もお話ししますが、現在展開しているパーティースタイルで実施したところ、参加したゲスト2 人から、『私もこのスタイルでやりたい』といった声もあり、事業の成功を確信。その年の翌月から、既存店舗での販売を早速開始しました。」
――モニター施行からの実店舗における販売。スムーズにいったようですね。
畑中「トライアル成功の一方で、いざ提案をスタートしてみると課題も見つかりました。既存店での商品化は、単価400万円の結婚式を販売すると同時に、別のカップルにはカジュアルスタイルを提案するということ。要するに、接客するカップルに応じて一方の商品を“否定”しなければならいないと気付いたわけです。どちらの結婚式が正しいということではなく、それぞれにいい部分があり、そもそもターゲット、価格帯も全く異なる中で、同一店舗でやっていく“二毛作”は難しいと判断。スタートから4 ヵ月後の昨年2 月、既存店での販売中止を決定しました。とはいえスタイル自体はモニター実施から確信を得ていたので、“二毛作”が無理なのであれば、カジュアルスタイル専門の会場を作ろうという流れになりました。」
リーディング企業の覚悟
――式場の稼働を考えると、例えば直近や平日の空き枠で、比較的低単価のパーティーを受注するケースも多いかと。
畑中「専門で施設を作ることに、私自身もリスクを感じていました。専用会場オープンに対して岩瀬は、『仮にうまく回らなかったとしてもその失敗は大きなものではない。リーディングカンパニーである私たちでやらなければ、誰ができるのか』と。これまで当社で展開してきたパーティーと比較しても単価は高くないものの、施行数の増加はパートナー企業にとってもプラスになるわけです。そうした使命を岩瀬自身感じていたこともあり、物件を探した中で、中之島の専門施設オープンに至りました。社長直轄のチームで動けていたことも、実現化の1 つだったと改めて感じています。」
パーティーの途中に人前式
――『具体的なパーティーの流れは。
畑中「コンセプトは『主役にならない結婚式』。施設自体は人前式を実施する水上テラスと、パーティーを行う2 階建の建物の構成です。『写真は残したい』という声も多いので、支度完了後にはフォトツアーの時間を設定。2 人だけで撮るのはもちろん、家族、友人の参加も可能で、オプションとして『リバーフォトクルーズ』も用意しています。また、『手紙を読むのは恥ずかしい』という声の中には、『ゲストの前では躊躇うけれど、親には感謝を伝えたい』とのケースも多い。パーティー開始前にファミリーミートの時間を提案し、感謝の想いなどはきちんと伝えようと提案しています。撮影後はウェルカムパーティーを水上テラスで実施。その後2 Fのダイニングでビュッフェ料理を提供し、水上テラスに戻って人前式を行います。パーティーの途中に式を持ってきたのは、お酒も入り場も和んだタイミングで、肩肘張らずに行えるという点から。その後は1 Fのリビングルームでデザートを提供、歓談の時間とします。リビングには冷蔵庫を設置しており、ゲストは自由に開け閉めしてドリンクを取り出せます。また、バーカウンターではシェイカーを振ってみることもできますし、カラオケも用意していて、これも人気コンテンツとなっています。1 時間のフォトツアーと動きのあるパーティーの2.5時間で、1 施行約3.5時間。1 日最大2 組に対応しています。」
――会費制を採用しており、カジュアルながらもクオリティには強いこだわりを持っているそうですね。
畑中「カジュアル=低単価とのイメージを持つ人もいる一方で、安かろう悪かろうだけには絶対にしてはいけないと考えています。ご祝儀で結婚式費用を全てカバーする自己負担ゼロを打ち出すパターンもありますが、それではゲスト満足度を上げられないと思っています。昨今はリーズナブルな居酒屋ですらノンアルドリンクも豊富にある中で、自己負担ゼロにしてしまうと、ご祝儀3 万円を払ったにも関わらず、選べる飲み物はわずか数種類。料理も同様で、カップル負担をゼロにする以上、サービスレベルを引き下げざるを得ないわけです。当施設においては、会場使用料や写真、動きやすさを重視したドレスなどを含めたプラン金額を、税込66万円に設定。この部分がカップルの支払い金額となります。ゲストは料理+ドリンクの金額を会費として支払うイメージで、現在は平均で40名140万円となっています。」
――食事はビュッフェで提供しています。
畑中「T&Gの既存店で、約20年のキャリアを有するシェフが異動で着任。原価率もレストランレベルを維持しているほか、前菜の後に料理を差し替え、次のメニューを並べるなど、焼きたて、作りたてを出すようにしています。また、1 つずつのポーションはあえて小さめに。大皿ばかりの並ぶビュッフェは、ゲストが料理を取っていくごとに、どうしても見栄えは悪くなってしまいますから。ドリンクと合わせて、冷凍庫にはハーゲンダッツのアイスクリームも用意。自由に食べられるのはゲストから好評となっています。」
――現在の集客状況はいかがですか。
畑中「既存のウエディングスタイルより単価は低くなるので、集客の90%はSNS、なかでもインスタを中心に広告を展開しています。大手媒体をチェックするカップルは、当社でいう既存店スタイルを好む傾向ですから、結婚式への温度感の低いカップルが偶然流れてきたSNS広告を見て、『これだったらやりたい』と思ってもらう流れを重視。初年度は200件程度の施行を見込んでいます。また、月に1 度『OPEN HOUSE』という無料試食体験イベントを開催しています。来場対象者は、検討顧客のほか、成約カップル、またその友人や家族など誰でもウェルカム。施行後のカップルにも参加してほしいと声を掛けていて、『このスタイルでやってよかった』ということを、リアルな口コミとして、その場で見込み客に伝えてもらうフローを目指しています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、4月21日号)

