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キーマンに聞く

ブランディングの一環【トキノスタンス 代表取締役 若林由章氏】

ブランディングの一環【トキノスタンス 代表取締役 若林由章氏】

 ユニクロの最大40%アップなど、賃上げに関する動きが話題になっている。国も給与のベースアップを呼びかける中で、ブライダル業界にも賃上げを決断する動きが出てきた。とはいえ、業界全体としてはまだまだ反応は鈍いのも事実だ。今号ではブライダル業界特化の人材紹介を運営して実績を重ねてきたトキノスタンス(静岡県静岡市)の若林由章社長に、業界が抱える現状の課題と共に、ベースアップを実現するためのポイントを聞いた。

給与水準は微々なる上昇

――ブライダル業界の賃上げ状況について、人材会社の立場からどのように見ていますか。

若林「コロナ前の2018年と、現在預かっている各企業の中途の求人票を比較してみると、給与の水準は微々たる上昇です。これは最低賃金が上昇していることが要因で、つまりは最低賃金をベースに雇用している結婚式場が多いことが分かります。賃上げについては、給与テーブル、昇給制度の見直しなど制度の変更が必要になりますが、それも含めて自発的に賃上げをしている企業は数社しかない。その中の一つである大手の会社は、コロナ前に3 %程度を上げています。これは最近言われている賃上げ水準と比較しても、十分に高い割合。もっともブライダル業界全体として考えると、まだまだ実施するには課題が大きいと言えます。」

――ベースアップの方法として、どのように対応していくべきなのでしょうか。

若林「ブライダルの求人では、いまだにみなし残業を30、40時間に設定しているケースが多い。それを組み込んでも、月給は20万円前半となっています。そもそもこのみなし残業時間を設定した当時のタイミングでは、おそらく労基も問題ないとしていたのでしょう。ところが現在は、新設会社が35時間に設定した場合、認められないと弾かれてしまいます。そのため多くの企業では、みなし残業を20 時間としています。つまり、以前に認められたみなし残業時間が、現在でもほとんど変わっていないわけです。30時間の残業代込みで20万円、21万円の給与の場合、残業以外の給与額は14、5 万円の水準。それを月の労働時間で割れば、最低賃金になってしまいます。要するに、給与設定の構造自体を変えなければいけない。まずはみなし残業で払っている分を、給与に転換し、みなし残業は15時間、20時間に変更すべきかと。コロナの影響により、残業時間が減っている企業であればなおさら。それだけでも、働いている人の受け方は変わってきます。さらに新しいルールに基づいた基本給、手当の変更を行ない、考課テーブルの設定も変える。それによって賞与も出しながら様子を見ていくというのが現実的かと。」

――賃上げを実行する企業に対しての補助金、助成金の可能性も考えらえるそうですが。

若林「賃上げは国、地方団体、業界団体からも要請されていることで、賃上げをした会社に一律の補助金などを手厚くしていくという可能性は人材業界でも言われています。もっとも来年度の賃上げに関連した補助金、助成金については、現状では具体的な説明が広報されていません。おそらく、補正予算で出されるでしょうが、その場合には中小企業であっても賃上げをしやすくなってきます。」

――給与アップのためには、会社の業績も重要です。

若林「ベースアップは簡単でもベースダウンはできませんから、当然企業に体力がないとできません。その点では、ブライダル業界はまだまだ業績が完全に回復している企業も少なく、そこはなかなか進まない一つの理由になっています。ただ、企業のパフォーマンス、ブランディングの施策として、投資の一部としての考え方を持つべきかもしれません。40%を上げたユニクロは最たる例で、メディアでも大きく取り上げられたことにより、大量の採用エントリーを呼び込んでいます。つまり、賃上げが広告プロモーションになっているわけです。これはブライダル企業であっても同様で、賃上げを実現することで、現職の転職希望者や新卒も流れて来るはず。先々の求人採用費と人件費アップ分のバランスをどのように判断するかは大切で、その考え方を持つことにより可能性も出てきます。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、2月11日号)