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『掘り起こしを絶対に諦めない』【テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長 岩瀬 賢治氏】

『掘り起こしを絶対に諦めない』【テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長 岩瀬 賢治氏】

 業界の様々な課題に対して、最大手企業であるテイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区)の代表取締役社長・岩瀬賢治氏は、何を思うのか。昨年10月に大阪・中之島で運営をスタートしたカジュアルスタイルの専門施設の展開で、『なし婚層』とはそもそも何か、そしてなぜ結婚式を挙げないのかといった、改めての気付きも多くあったという。「業界の成長を、業界にいる私たち自身で諦めてはいけない」という岩瀬氏の、強い意志に焦点を当てる。

カジュアルWからの気付き

――岩瀬社長自身、業界の課題をどう感じていますか。

岩瀬「結婚式を行わない『なし婚』という言葉の意味を整理して考えてみると、結果として結婚式を実施しなかった人たちを、業界側でそう名付けていると改めて感じるようになりました。そもそもこの意味を考えるキッカケは、昨年10月大阪にオープンした、当社の新施設『UNWEDDING(アンウェディング)中之島』でした。会費制のカジュアルスタイル専用施設で、カップルの負担額は66万円としています。結婚式には全く興味を持っていなかった人たちにアプローチし、その意向を実施に変えるのはなかなか難しいと思っていたわけですが、このスタイルを始めたことによって、『結婚式の実施を迷っているカップルはこんなにもいるのか』ということを改めて知る機会になりました。先日施設側から提出されたレポートには、『私たちは盛大に結婚式をやる資格がないと思っていた』という声も複数ありました。家族構成、人間関係なども昨今は人によって様々ですから、そのあたりに気を遣ってまで結婚式をやるべきなのかと言えば、躊躇してしまうのも“仕方なかった”のかもしれません。自分たちに合う結婚式のカタチを知らないために、結果として式をしない選択、いわばなし婚層になった人たちが一定数いること。そして、なし婚に繋がる流れをリアルに把握できたのは、当社にとっても貴重な気付きだったと思っています。」

――既存施設の結婚式とカジュアルスタイルの違いにも、発見があったそうですね。

岩瀬「結婚式に100%前のめりの気持ちを持てていないケースもありますから、ウエディングの提案以前に、『やるかやらないかから、まずはお話をしましょう』というのがスタート地点になっています。迷っている理由をきちんとヒアリングするのは重要だと感じていて、そもそもそこを紐解かない限り、最初の一歩は踏み出せないわけです。現在中之島の施設では、『OPENHOUSE』というすでに式を挙げたカップルも参加する試食会のようなイベントを定期的に開催。実際に成約前のカップルからの声としては、『先輩夫婦の話を聞いて、これならやってみようかと思った』、『このスタイルなら、家族と友人に感謝を伝えやすいかもしれない』などの声もあり、反応は決して悪くありません。新規接客から契約まで1 ヵ月~ 1 ヵ月半かかることも少なくなく、成約までのスパンの長さは既存店と違いますが、契約率は約60~70%を記録するなど、数字から見てもこのスタイルの支持層は一定数いる。この結果からも、カップルに届く表現の仕方、入り口の用意が足りていなかったことを、改めて実感できました。施行単価的に、集客は婚礼媒体よりもSNSを中心としていて、リーズナブルさよりもコンセプト訴求の方がユーザーの反応はいい状況です。予算重視のカップルも中にはいるものの、単純に安い結婚式を探しているわけではないことも読み取れますから、選択肢を業界からきちんと届けていく。これができれば、業界の底上げはまだ十分に可能だと思っています。厳しい市況が続いているとはいえ、業界全体として絶対に諦めてはいけないと、改めて強く感じています。」

岩瀬「選択肢を増やす=カジュアル領域のイメージも強い一方で、もともと当社は国内の著名人や海外からの依頼も多い『Haute couture Design』も展開しています。カジュアルスタイルも始まったことで、いわゆる既存の結婚式はもちろん、カジュアルから徹底的にこだわるラグジュアリー層まで網羅できるようになりました。領域を拡大し“面”で受け皿を作れるようになったイメージで、希望に合わせてニーズにきちんと対応していこうとの考えです。」

――カジュアルスタイルのスタートにあたっては、意気込みも強かったそうですね。

岩瀬「既存スタイルと比較すると単価も低いですし、事業モデル的にはリスキーとも言えます。ただ、業界最大手の立場として、『“ファーストペンギン”になるのは私たちであるべきだ』と、強く感じていました。私自身も、このカジュアルスタイルはもっと業界全体で広まっていくべきだと思っていますし、当社としても積極的に出店を検討しています。会場の空き枠をうまく使い通常婚礼とカジュアルを両方販売するスタイルもありますが、“二毛作” の運営については販売してみて難しさを痛感したため、専門店舗のオープンに至りました。空き枠を埋めることを第一目的にしてしまえば、結果として市場にはなかなか広がらないでしょう。明るい話題が業界全体で少ない中で、“ファーストペンギン”として『まだまだいけるぞ』という空気感を、当社から作っていきたい。掘り起こしへの努力は、絶えず取り組んでいかなえければと考えています。」

 

年間で渋谷に屋外広告

――露出に関しての多様化も進んでいます。岩瀬「各媒体からのコンバージョンは年々厳しくなっているのも事実ですから、“媒体依存” をしていくと、やはり厳しくなってくる。当社では、一部店舗を除いて3 月以降、屋号名を『NEEDS by T&G WEDDING』に統一。その背景もあって、集客メディア以外の認知媒体への予算もしっかり取り、広くユーザーとの接点を持っていくべきというタイミングになっています。その一例が屋外広告で、渋谷109フォーラムビジョンでは、4 月から1 年間、毎時動画広告を流しています。とはいえ、それがどのくらいの集客効果に繋がったのか計算しにくいのも事実。それでも認知から見学までの日数は、以前の5 日程度と比較して、現在は約2 週間になってきています。要するに、早い段階で接点を持てるようになっているわけで、これはいいことだと捉えています。これをどれだけ前に持ってこられるかは、屋外広告の1 つの意味と感じます。また、老若男女問わず多くの人が行き交う交差点で、毎時結婚式の動画が流れるということは、シンプルにいいことだと思っています。」

――2026年12月期第1 四半期の決算発表では、平均人数62.9人、施行単価は430万6000円と好調に推移しました。

岩瀬「第1 Qの単価は想定を大きく上回ったもので、通期としては415万円ほどで着地すると見込んでいます。スケールメリットを活かし、様々な装飾アイテムなどを大型倉庫でストックして、各店舗で使用できる『Lab事業』の効果もあって、この金額まで上がってきたと感じています。一方で、きちんと見ていかなければいけないのは、単価向上と顧客満足度の相関性。新郎新婦への提供価値をどう表現するかはとても重要で、これまでにもウエディングパークとの共創事業として、価格の見える化ツールの開発などに取り組んできました。新郎新婦はもちろんのこと、現在は参列ゲストの満足度を重視しています。例えば、サービススタッフの動きやすさを重視したこちら都合のレイアウトではなく、ゲストにとってくつろぎやすいスペースになっているのか。ウェルカムドリンクも片付けやすい配置ではなく、空間として素敵に見えているかどうかなど。こうした点は改めてチェックしていくべきだと思っていて、ゲストからの顧客満足度も高い『NEEDSみなとみらい VERANDA』の支配人などを集め、提供価値を高めるプロジェクトもスタートしています。実際にメンバーは全国各地の店舗に足を運んで、レイアウトを考えたり、結婚式を直接見て進行を提案したりしています。そのほか、全国からスタッフを集めて模擬披露宴を社内で実施していて、満足度に繋がる見直しは、今後も引き続き真剣に取り組んでいきたいと思っています。こうした地道な積み重ねの成果の表れとしては、都内の運営施設を紹介する自社開催のフェアへの来場効果をもたらしています。これまでの結婚式参列ゲストに送ったWeb招待状の機能を活かし、フェア開催の案内をプッシュ型で情報発信していますが、その結果フェア来場者のうち、現時点で約15~20%程度は当社の結婚式に参加したことのある人です。満足度の追求からこうした数字に繋がっていくことは重要と感じます。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、6月1日&11日合併号)