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バリュー基準の表彰制度【テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長 岩瀬 賢治氏】

バリュー基準の表彰制度【テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長 岩瀬 賢治氏】

 テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区)岩瀬賢治社長のインタビュー後編は、従業員の働き方をどのように改革し、環境整備を進めているのか。業界全体の人材不足が課題となる中、新卒・中途共に順調に採用を進められているのは、安心して働ける制度・環境整備が一つの要因にもなっている。コロナ禍であっても給与アップを実行し、現在は2年前と比較しても年収で33万円アップしているなど、業界最大手として一つの指針を示している。

――従業員向けに、低用量ピルや卵子凍結費用を一部負担する女性特有の健康課題へのサポート施策『Femself BOX』、来年6 月6 日~10日の土日を含めた5 日間、一斉休館日とする『リチャージ休暇』を設けています。働く環境整備の側面を、どのように考えていますか。

岩瀬「例えば、当社は社員1500人であるため、会社として社員を直接褒めるような機会はなかなかとれません。社員総会で壇上に上げて表彰するといったことは多くの企業でも行っていますが、ほとんどの場合業績でフィルターをかけています。業績でない部分でも社員をもっと褒めていく機会を作ろうと考え、当社の【クリエイティビティ、チャレンジ、カインドネス】という三つのバリューを最も発揮できた人をクォーター毎に選んで、表彰する取り組みを今年から始めました。対象となる社員は、最終的にエリアマネージャーの独断と偏見で選んでいるものの、上長の立場からすればバリューの観点からもこれまで以上に部下をよく見ていなければなりません。1 年間を通せば、全体の10%程度の人数が対象となり、より多くの社員を直接褒めることができるようになります。あとは有休の消化をキチンと促進していく取り組みも強化。1 年で付与される20日分の有休を、どこで取るのかあらかじめ決めていきます。」

――チャペルなどのリニューアルと共に、働く環境の整備のために各施設の事務所の改装も進めているそうですね。

岩瀬「これは細かい部分になりますが、床を張り替え、棚を作り、デスクもいいものに変更しています。1 回で300万円前後かかる改修を、各施設で随時進めていく。またプランナーはこれまで、デスクトップPCで仕事をしていましたが、ノートPCにすれば新郎新婦の目の前でそのまま処理もできるようになり、格段に業務効率は上がります。これは一部の店舗で既に実証していて、今年中にはプランナーのパソコンは全てノートPCに変更します。」

――そうした部分にも、あえて費用を費やして変えていこうとする想いとは。

岩瀬「今、そうしたことに取り組むのが、実は大事なのではと思っています。もちろん毎週毎週の新規で何組来館した、どれだけいい結婚式を提供できたといったような部分は必要であり、決して手を抜くことはしないものの、それと共にブランド認知や冠婚葬祭業の負を解決するための活動もキチンと進めていかなければなりません。労働環境の向上にも、真面目に取り組んでいこうと。」

――労働環境、労働条件面を、一般の上場企業レベルにまで引き上げていく感覚ですか。

岩瀬「そこまでは考えていなくて、結果としてそうなるように進めてはいるものの、まずは社員たちが一生懸命頑張れる環境を作ってあげたいと思っています。有休も、取りたい人が気兼ねなく取れることは大切。こうした改善は、社員を甘やかして力を弱めてしまうのではなく、これからも頑張れるように会社と従業員の関係を良くしていくという考えで進めています。当然、環境を改善すればするほど、会社としては成果を期待しますし、その成果についてはシビアに評価しています。例えば賞与に関しても、成果に応じて0.0から2.0までの係数をかけていて、普通評価で20万円の人がいる一方ゼロの人も出てきます。上長にとってはその優劣をつけることは大変なことであると思いますが、そこに優劣をつけなければ本当に頑張っている人に報いることはできないでしょうから。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、9月1日号)