LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

AIがリアルタイムでアドバイス【ニュー・バリュー・フロンティア 取締役 AI推進事業部 担当 金増宏輝氏】
画像生成やアイデア出しだけでなく、昨今は多くの人が検索エンジンとしても使うようになった生成AI。今号では、分析ツールのほか、打合せの際などに利用できるブライダル向けの各社の最新AIサービスをピックアップ。ツールをうまく活用することは必要不可欠で、それにより成約率アップ、満足度向上など様々な可能性をもたらす。なかでも2月から提案を開始した、ニュー・バリュー・フロンティア(東京都渋谷区)のAI分析サービス【Dolphin(ドルフィン)】は、年内を目途に50施設への導入を想定。都内の大手婚礼施設に採用されるなど、半年間で評価を得てきた。
アンケートから傾向抽出
――ドルフィンの主な機能はどのようなものですか。
金増「新規のシーンでは、AMSなどカップルの入力した各種事前アンケート情報をシステム内に入れると、顧客ファイルが自動で作成される仕組み。来館動機、カップルの大切にしたいポイント、好きな傾向、懸念点などをアンケートから抽出するほか、これに応じた競合施設の情報などもまとめて提示されます。例えば重視ポイントでは、『ゲストと一緒に楽しむゲーム』との回答に、30代後半といった年齢、その他回答項目も掛け合わせ、『ゲストみんなで肩ひじ張らずに楽しめる一体感』といった仮説を立てていきます。その仮説に対して深掘りに繋がるオススメの言い回しも提案し、それらを事前チェックしたうえで、新規に臨めるようになります。」
――ドルフィンの強みの1 つは、リアルタイムで接客をサポートしてくれる点です。
金増「接客の様子を録音し、文字起こしをしてその場でリアルタイム分析。アンケート回答時から気持ちの変化が出ている可能性もあるため、実際の接客音声をもとに何を伝えるべきか、競合対策にはどんな切り返しが有効か、画面上でリアルタイムにアドバイスしていきます。システム内にはカップルごとのAIチャット機能も用意。『この2 人の成約を後押しするクロージングのセリフを教えて』など打ち込むことで、いわゆるそのカップル専用の『Gemini Notebook(旧NotebookLM)』のような使い方も可能。聞きたい内容を打ち込めば、ピンポイントで回答を得られます。」
――ニーズや好みも多様化する中で、「イメージがわかない」という新郎新婦もいます。
金増「ドルフィンはビジュアル訴求も可能で、音声データから目の前のカップルに刺さる画像をAIが自動生成。例えば想定人数の規模感で希望のバンケットを使い、季節感のあるテーブル装花にしたらどうなるのか、イメージを瞬時に可視化できます。また、2 人の大切にしたい想い、コンセプトに、イラストや写真を組み込んだ『コンセプトシート』も自動で作成。新規接客の内容を分かりやすく、かつ瞬時にまとめられるので、成約の後押しに繋げられます。音声をベースにした見積り作成にも対応しており、例えば『デザートビュッフェを入れてみたい』という会話から、基本プランにビュッフェを組み込んだ見積りを自動で作成。最終チェックのみしてすぐに提示できるため、待ち時間短縮に繋げられる点も導入施設から好評です。」
先輩の音源を参考に
――「中間層がおらず、若手の育成に時間をかけられない」という式場も多いです。
金増「録音データから、各プランナーの接客がどうだったか分析も可能です。アイスブレイクに始まり、結婚式実施の動機や競合の検討状況といった各ヒアリング、会場案内からクロージングまで、シーンごとに分析できます。良かった点を出すのはもちろんのこと、改善点の抽出も可能。例えば、親族は呼ぶ予定がないというカップルに対し、『サラッと進めるのではなく、何か不安なことなどはありますか?と受け止める姿勢があればなおよし』といった、アドバイスも出します。こうしたノウハウは、もともと当社がコンサル、運営受託事業などを行ってきたからこそ。積み上げてきた知識を組み込んでいます。」
金増「セールススキル評価の機能では、傾聴・関係構築、ニーズ整理、深掘りヒアリングといった各項目を、カップルの接客ごとに5 段階で数値化。その点数の理由となるシーンの音源をピンポイントで聞けるほか、仮に点数が低かった場合、似たようなシーンで高得点を出した先輩の接客音源を、お手本としてチェックできます。なお、このページにもAIチャット機能を用意しており、『複数見学のうえ決めたいカップルの対応が苦手』と入力すれば、これまでの傾向なども踏まえて、ドルフィンから対策を提案。こうした評くため、導入施設からは『コントローラーの精度を上げられる』といった声もあります。」
――成約率を見るのはもちろんのこと、なぜ受注できなかったのか、今後に向けた失注対策は必要不可欠です。
金増「例えば失注したカップルとの接客音声データを基に、ドルフィンが新郎新婦に成り代わってシステム上でロープレできる仕組みを用意。人手不足の中でも、セルフ学習の機会に繋げられます。これまでの人材育成、失注対策などは、教育担当プランナーの持つ知識の範囲内から出されたものでした。音声データをしっかり分析、活かすことで、これまでとは異なる“第三者”の視点を得られるのもポイントの1 つです。」
――広告の検証というマーケティング面にも活かせます。
金増「例えば、料理を強みとして打ち出している会場であれば、その情報を事前にドルフィンに入力。接客音声データの分析から、来館動機がきちんと料理になっているのか、“ズレ”の有無を確認できます。実際にある施設では、会場側の見解として料理を強みと捉えていたものの、カップルは料理への期待以上にチャペルから見える景色の興味を持っていて、『遠方から来てくれるゲストの満足度に繋げたい』という傾向が見て取れました。遠方ゲストへのおもてなしに紐づけて料理を提案できれば、成約の角度はグッと上がってくるはずです。集客のKPIとして、来館数と成約という入口・出口だけを見がちですが、広告はきちんとカップルに届いているのか、そもそも今の広告デザインでいいのかの検証にも活用できます。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月21日号)

