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キーマンに聞く

オファー型集客メディアの可能性【オリジナルライフ 代表取締役社長 榎本 純氏】
多くの業界で定番化してきたオファー型メディア。ユーザーの登録条件に対し企業からオファーを送る仕組みで、ユーザーの検索行動が受動型に移行している時代に即した仕組みだ。検索型が一般的であったブライダルの集客メディアだが、新たにオファー型を構築しチャレンジを掲げたのがオリジナルライフ(東京都港区)だ。11月にβ版をリリースし、12月から本格スタートする【パーソナルオファーサービス】について、同社の榎本純氏に聞いた。
迷っている人を導く
――新たな集客サービスを開始する背景とは。
榎本「当社は、結婚式準備アプリ【ウェディングニュース】を運営しています。また現在は予約プラットフォームとしての進化により、全国の会場とのネットワークも広がっています。アプリについては昨年、全国の花嫁の40%程度に利用してもらっていますし、ユーザーと会場のマッチングサービスの実績についても倍近いペースで増えているなど、それぞれの事業は順調に伸びてきています。」
榎本「今回のオファー型メディアスタートの背景として、まず一般ユーザーの行動変化があります。現在のユーザーを見てみると、能動的に何かを検索するのは、モチベーションも高く、情報処理能力のある人に限られる。そうした人以外の圧倒的多数は、基本として受動的に情報を得たいと思っている時代です。こうした検索行動の変化に加え、ブライダル業界の状況として、結婚式をすること自体当たり前でなくなってしまい、迷ってる人たちの割合は以前よりも格段に増えているわけです。つまり今の情報環境からすると、わざわざ探すというところにまで行きつかない。熱量高く結婚式場を探してくれている層だけを検索サイトの中で会場が待っている状況では、限界もあるということで、それならば迷っている多くの人たちも気軽に利用できるような、新たなソリューションを考えました。」
――オファー型メディアは、他業界では既に定番化しています。
榎本「イメージしてもらいやすいのは、採用の領域。自分の履歴書を並べておけば、企業側からオファーが来ます。以前のようにユーザー自ら検索サイトで検索して、『この会社がいい』と判断し動いていた時からは、大きく変化しています。また採用領域以外でも、オファー型メディアは広がっていて、例えば出会いのマッチングアプリ、それ以外にもファイナンシャルプランナーや高額の不動産業界などでもかなり普及してきています。他業界でオファー型が加速している中、この流れは避けては通れないはずと、ブライダル業界向けのオファー型メディアを構築しました。」
――ユーザー、会場側をオファーで結び付けていく仕組みを教えてください。
榎本「まず、ユーザーに希望条件を登録してもらいます。その際、リリース段階としては結婚式に対する希望をアンケート形式で回答する形を取っていきます。恐らく、本当の希望というものは、なかなか言語化しきれないでしょう。こだわりを持って多くを語れる人もいれば、さっぱりイメージが湧かないという人もいますから。そこでアンケートの構成や分析も含め、順次AIを活用して、希望を言語化できるようにアップデートを進めていきます。ユーザーの基本条件、提案されると嬉しい内容を個人毎に登録し、次に会場の特徴と見合わせ条件に合う候補をメディア側で選出。会場としては候補の絞られた状態で、カップルの情報を確認できます。そこで『自会場に合う』、『こういう提案ができる』といったユーザーに対して、オファーを送ってもらう。ユーザーはそのオファーをチェックして、気に入った会場に来館予約をするという流れになります。ユーザー側からすると、自分の希望をある程度言語化しておけば、会場から思いも寄らない素晴らしい提案が来るかもしれない。その点でハッピーになるサービスですし、そこにメディアとしての価値があると考えています。」
会場の手間を省く機能
――会場側の手間もなるべくかからないような形を考えているそうですが。
榎本「マッチ度の高いユーザーを会場ごとにメディアから推薦していきますし、『こういう理由で向いてます』というところまで出していく予定です。つまり会場側では、ユーザーの情報を全て読まなくても、どのポイントがマッチしているかを一目で把握できます。後々は、会場自らユーザーを探せる検索機能もリリースする予定ですが、スタート段階ではメディアとして介在した推薦のみで対応します。もう1つ、オファー用の専用テンプレートを事前に用意する仕組みも設けます。オファーをする際の文面については、ユーザーに即したパーソナライズ化が大切。もっとも自会場の強みやペットOKなど、ある程度パターンも決まってくるかなと想定しています。事前にテンプレートを作っておけば、それを組み合わせることで簡単にオファー文面を作れるようにします。」
――会場のメリットは、どのように考えていますか。
榎本「一つは、戦略的に『会いたい』と思うカップルに対して、的確にアプローチができます。例えば予算の都合上、12月までにあと1 組施行を取りたいといったケース。そこで価格重視のユーザーを狙って『3 ヵ月以内の施行であれば安く出来ます』といったオファーを出せば、決定率も高まるでしょう。こうした戦略的対応は、検索サイト上だとやれることもかなり限られます。誰にでも見られるオープンな情報にすると、価格だけに釣られて全くマッチしていない人の来館が増える、また安売りしているとブランディング上の課題も出てきますから、その点では、パーソナルなオファー型だからこそ、ピンポイントでその人に合わせたアプローチが可能です。その他にも、週末のフェアであと3 組足りないといった時。マッチ度の高いユーザーに限定して、『今週末に来るべき』という意味合いのオファーを出すことによって、目標達成の後押しになります。」
榎本「もう1 つ、メディアとして大切なポイントだと考えているのは、各会場の【自会場らしい、作りたい結婚式】をしっかり伝えていくことが出来る点。例えばある会場のブログで、保育園の先生の結婚式で幼児100人を呼んだという事例がありました。これも貸切り会場だから実施できるわけで、そうした事例を含めてオファーをすれば、より会場の強みは際立ちます。他にも『おじいちゃんの育てたお米でおにぎりを提供した』といった結婚式も、実施できる会場、出来ない会場、やりたくない会場で分かれるでしょう。中には当たり前のサービスとして、シェフが必ず新郎新婦と料理の打合せをし、オリジナル性を発揮しているという会場もあります。そうであれば、『家族への感謝を伝えたい』というユーザーに、実例と一緒にオファーを出せば刺さるわけです。プランナー一貫制と分業制も、それぞれの特徴。『結婚式でやりたいことは分からない』というユーザーがいたとします。その場合、プランナーが新規・打合せを通じて明確になっていない潜在的希望を引き出し、言語化していかなければなりません。一貫制であればプランナーが最初から最後まで伴走するためその可能性も高まりますし、実際に何気ない会話からこんな結婚式に導いたという事例を紹介すれば、ユーザーの不安も払拭できます。自会場らしい、作りたい結婚式の実例を情報提供することで、そうした結婚式を希望するユーザーとマッチングできるわけで、メディアとしてもその部分は大切にしていきます。」
――オファー型は、マッチングの精度がカギになってくると考えられます。
榎本「現在、テスト的に運用して分かってきているのは、AIモデルを活用しているため、正しい情報さえきちんと入っていれば精度も高くマッチングできます。ただ現状では、どうしても全ての会場の情報を正しく把握しきれていないため、そこは今後の課題であると考えています。まずは自会場の強みやこのニーズの人ならば絶対勝てるといったところを、メディアの中でキチンと表現してもらえるように呼びかけていきます。」
マッチング精度を高める
――ひとりのユーザーに対して、あまりにも多いオファーが来ると、逆に煩わしさを感じさせてしまうことになりかねませんが、その対応については。
榎本「例えば転職サイトだと、1 人に200通といったオファーのメールが来たりしています。そうすると、メール確認も面倒になり、タイトルだけを見てほぼ開かないといったことも起こります。メッセージを受け取ったユーザーが疲弊してしまわないよう、メディアとして候補会場を選出する際には、オファーメールをキチンと読んでもらえるレベル感の数に抑える必要はあると思っています。」
――とにかくオファーを数多く出そうと、会場側としても『なんでも出来ます』と言いたくなるかと。例えば、ペットウエディングについて。ユーザーは結婚式・披露宴でずっと一緒にいたいとします。ただ会場によってはチャペルとガーデンにしか入れられず、バンケット会場は不可。それでも『ペットOKです』とオファーを出してしまう可能性も出てくるかと。
榎本「例えば飲食サイトでも、神田の店舗なのに銀座に近いとオファーを出してしまう問題も結構起こっています。ペットWについても、一部しか出来ないのにオファーを送ってしまうと、ユーザー側も『マッチしない提案が来る』となっていきます。そこは慎重に進めなければなりません。その一つとして、会場がユーザーを検索できる機能をスタート段階では設けず、マッチしている人の情報のみを出す形にします。当社としてもウェディングニュースの【花嫁レポ】に出てくる体験談などのデータを取っているので、ある程度会場のリアルを把握した状態で候補を選出できます。いわゆるDM的に『誰にでもオファーを送る』ことのないよう、制限をかけています。」
新たなメディアへ期待感
――これまでになかったオファー型のメディアですから、オリジナルライフはもちろんのこと、ユーザー、そして会場側も上手に使い慣れていくという意識は大切かと思います。
榎本「今回ネーミングを【パーソナルオファー】にしたのは、メッセージ性としてパーソナルを大切にしながら、ユーザーにマッチした情報を送って欲しいからです。ユーザー側もパーソナルだからこそ、自分に合った情報が来るという期待値を持っていますから。DM的な使い方をしないよう理解を求めつつ、仮にそのような場合は会場自体のイメージダウンになってしまうことは伝えていきます。またユーザー側に、全然オファーが来ないというケースが出てきてしまう可能性は十分にあります。そこで、どういう情報の入れ方をするとオファーが来やすいかといったことも、運営しながら得るデータの中である程度の成功パターンは見えてくるでしょう。そこはメディアとしてノウハウを蓄積していき、それを会場・ユーザー双方にフィードバックしていきます。メディアの料金体系は月6 万円(利用期間6 ヵ月~)であり、いわゆる広告モデルのメディアに比較すれば安価に抑えています。これが出来るのも、当社のマッチングサービスはもともと成果課金であったからこそ。大手ブライダル企業の社長にも、新たなメディアの登場に期待しているという言葉をもらいましたし、様々な協力を得ながら高めていこうと考えています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月1日号)

