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新郎新婦の選択肢を増やすため商品企画に注力【八芳園 取締役社長 井上義則氏】
デジタルの活用、SNSでの発信、イベント開催、各地との連携協定締結による地域創生など、様々な取り組みに着手している八芳園(東京都港区)。2020年のコロナ蔓延当初に9バンケットを撮影し直すなど、業界全体で動きの止まった中でも積極的に攻めの姿勢を取り、現在は婚礼も好調に推移している。取締役社長・井上義則氏の描く、八芳園の在り方とは。80周年を迎える老舗施設は歴史に甘んじることなく、果敢に挑戦を続けている。
未来を見据えた撮影
――昨年は婚礼も好調に推移したそうですが、その要因は。
井上「2020年にコロナで宴会場の稼働が一気に下がったため、その期間を利用して写真撮影を実施しました。多くの施設は動きを止めていたかと思いますが、ブライダルの顧客はそもそも半年後や1 年後など、先を見据えているケースが大半。その人たちに向けて旬のビジュアルを提供していきたいと、9 バンケットを一気に撮影し直しました。当施設の強みでもある庭の緑を活かしたものをはじめ、空気感の伝わるような写真を用意し、コロナ禍でカップルの抱く不安解消にも努めていったわけです。新しいビジュアルを活用したことで、比較的早い段階から回復傾向となり、2022年1月には単月で450組の来館を記録。昨年秋の来館も2019年対比で、120%と好調に推移しました。こうした有事のタイミングは、会社を維持していくことを考える必要性はあるものの、カスタマーの不安要素が明確になりやすく、結果として変革を起こせる可能性も高まってくると考えています。平時の場合は不満の方が目立ちますが、有事の際には不安に変わってくる。その不安要素を分析していくと、今回のコロナ禍におけるブライダルに関しては、特にキャンセル料の部分が大きかったのではと。当施設では一旦はお金を預かりはするものの、日取り変更の期日は設けないようにしました。結果として、日程の定まらない予約済みのカップルは最大で140組まで増加。それでも『一度キャンセルしたい』という声があれば、返金にも応じる方針を早い段階から打ち出していました。そもそも私たちの仕事は新郎新婦の幸せを創ることですから、そうしたことへの真摯な対応も大切にしていきたいと。不安を抱きがちなカップルに向けて、カスタマーに寄り添った私たちなりの見解を出していったことも、昨年の好調を後押ししたと考えています。」
――オンラインを活用した取り組みにも注力しています。
井上「私たちは八芳園という場所を持つ装置産業で、かつ労働集約型産業でもあります。装置部分はオーナーの所有するところになりますが、労働力の資源は人材です。柔軟な経営体制として、建物の所有と運営は分離ではなく、『両軸』であるという感覚を持つことが重要でしょう。カスタマーの希望に応じられるよう、私たち自身がアメーバのように形を変えて、両軸の中でうまく対応する柔軟性が求められているように感じます。一方で、もともとクリエイティブ力には自信はあったものの、デジタル分野は苦手だったのも事実。そこを一気にデジタルにシフトしていこうとなり、現在は装置、労働力、クリエイティブ、デジタルの4 つを掛け合わせているイメージです。今後のブライダルにおいては、装置部分のハードに頼るのではなく、デジタルを事業前提にしたうえで、ウエディングを組み込んでいくことも欠かせなくなってくるはずです。」
井上「音楽の事例でいくと、昔はレコードを購入していたのが、CDに変わった。その後iTunesの登場で、楽曲をダウンロードできるようになり、多くの消費者へ届くようになった。一方で、これだけでは単にデジタルに置き換わっただけですが、現在はデジタルを前提にして音楽を供給しようという考えのもと、『Spotify』の台頭があるわけです。Spotifyではレコメンドをはじめ、友達のプレイリストをチェックできるなど、一種のコミュニティの場になっています。要するに、デジタルを前提に新たな繋がりが生まれているわけです。」
――ウエディングにおけるデジタル活用の考え方は。
井上「例えばWEB招待状。現在、当施設でもその利用率は上がっており、紙との兼用も含めると約半数はWEB招待状を活用しています。この考えをもとにすると、WEB招待状に紐づけて、チェックインもオンラインでできるはず。チェックイン機能もあれば、事前に参加者同士でコミュニケーションを図れる場を作れるようになるのではないか。こうした事前の繋がりを生み出せれば、結果として、リアルの交流も深くなる可能性も高まってきます。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1・11日新春特大号)

