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キーマンに聞く

連載13(前編)《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》ドレスの内製化開始(ゲスト:サン・ワード 代表取締役社長 山下信彦氏)
収益性アップのために、内製化に着手する会場が増えている。サン・ワード(岐阜県岐阜市)も昨年からドレスの内製化をスタートし、そのほかにもバウムクーヘンのAI機械の導入で、デザートやプチギフトを社内で生産する体制を整えている。今後は装花、写真などのサービスに関しても、一つひとつ内製化に着手していく方針だ。今回のT&G岩瀬賢治社長の対談企画『ブライダル経営者サロン』は、内製化のメリットや課題を語りあった。(前編)
バウムクーヘンの機械も
岩瀬「コロナ禍にバウムクーヘンの機械を新たに導入して、施設で焼き上げて提供しているという記事を見ました。」
山下「ユーハイムの開発したAIを使った機械で、本社の方に問合せをしてぜひやらせて欲しいとお願いしました。」
――気温や湿度などの条件で、職人の勘が必要な部分をAIが代替するというものですね。
山下「機械の置いている場所によって温度も湿度も変わりますので、単純に機械を回せば、綺麗にできあがるというわけではありません。パティシエも相当苦労して、やっと出来上がってきたような感じですね。」
――サン・ワードでは、バウムクーヘンのギフトなどでの展開のほか、ドレスの内製化もスタートしました。今日は、内製化のメリットや課題をテーマにしたいと思います。
岩瀬「ドレスの内製化も、岐阜市内に3 店舗を展開していれば十分にできると思います。」
山下「昨年11月から本格的にスタートしました。夏までに2会場の新郎新婦を対象に、年明けには運営する3 会場全ての顧客に対応していく予定です。衣裳のノウハウがあったかというと、決してそうではありませんでした。そこでドレスの卸先でもある会場運営企業から教えてもらいながら、着々と準備を進めてきました。新郎新婦からの評価も高く、いいスタートが切れたのではないかと。」
――内製化は、コロナをキッカケに動き出したのですか。
山下「以前から、進めていこうという思いは持っていました。ドレスに関しても、2019年には卸先と調整していたのですが、コロナの感染拡大により一旦ペンディング。その後、アフターコロナに向け新たな一歩を踏み出していかなければと、昨年11月にスタートした形です。収益性のアップはもちろんのこと、自分たちで衣裳を紹介し、提案をしていくことにより、スタッフのモチベーションを高めるという狙いもありました。さらに前撮りも含めて、様々なオプションに広がっていくのはメリットも大きいわけです。優先順位としてまずは収益性の高い衣裳から始め、今後は装花、美容、写真などの分野もしっかりと考えていきます。」
岩瀬「当社の内製化でいうと、現在は装花、ドレスのほかに、ウエディングケーキ・プチガトーといったスイーツがあります。ドレスについては、ショップのある関東と関西エリアが対象で、他のエリアでは基本的に対応していません。表参道、丸の内、横浜に展開しているMIRROR MIRRORのドレスショップは、それぞれ年間1500~2000組を受注。対象エリアの会場における結婚式の分母がそれなりにあるため、各ショップの受注数も一定のボリュームになっています。対象会場の新郎新婦のうち、内製率は80%台。それ以外のユーザーは、取引先のドレスショップで決めています。」
取引先とカバーし合える
――今後、内製化比率を高めていくことを表明しています。
岩瀬「確かに内製率は上がっています。ただ、無理やり専売化をして比率を高めてきたわけではありません。もちろん収益性の観点から言えば、専売にした方が100%の人に利用してもらえるのですが、私自身、それでいいのかと感じる部分もあります。と言うのも、当社の業績自体が苦しくなった時に、自分達で新作のドレスを何着買えるのかという懸念もあります。また人員を整えられなくて、新郎新婦がフィッティング予約をなかなか取れなくなるなどの事態に対し、これまでは取引先がいたからこそ一緒にカバーし合えた側面もありました。その他にも、取引先であれば真正面から伝えられていた顧客からの厳しい声も、身内になった瞬間に仕方ないとなってしまわないか。結果として顧客に皺寄せがいってしまうのではという可能性も含めると、専売化を進めることに懸念すべき点はありますね。」
――商品クオリティへの影響は、専売化を進めた時に課題になる部分かと思います。
岩瀬「事業を立ち上げたスタッフが関わっているうちは、そうしたことも起こらないと思っていますが、5 年10年経った時に果たしてどうか。自社でドレスを取り扱い始めたものの品質は上がらない、顧客が満足しないということが起き、それでも専売だからそこに送客しなくてはいけないという状況に対するプランナー側の気持ちも分かりますから。そうならないようにという心配も含めて、専売化を一気に進めることに対しては多少慎重に考えています。」
山下「当社のように限定されたエリアで商売をしている場合には、目の届く範囲ということもあり、私自身がそうした考え方をしっかり持って維持していくことが大切だと感じています。ドレスに関して思うのは、プランナーとは異なり、人材面が簡単ではないと(笑)。過度な労働環境になってしまいがちで、そうなると体制もなかなか整えられません。働く意義と環境のバランスを、常に考えないといけないと思っています。」
岩瀬「人材面の苦労は、すごくよく分かります(笑)。これは私自身の反省として、ドレスコーディネーターたちに、今の仕事の10年後、20年後を描いてもらえていないなと感じることがあります。仕事の範疇から枠を広げてあげることができない限り、人員の問題は常に付きまとってくるでしょう。」
山下「結婚式場運営で築いてきた組織、採用方法とは、また違うものを作り出していく必要がありますよね。ドレスという、取り扱う商品に対しての思い入れも強い傾向がありますから、会社としては仕入れる商品コンテンツの強化も求められてくる。ドレススタッフたちが本当に着て欲しいと思える衣裳を揃えていく環境作りを、どこまでできるのか。そうしたことも含めて、社員の未来像も示しながらしっかり方針を伝えていく努力は必要。私達はまだ始めたばかりで、おそらく今後様々な壁も出てくるでしょう(笑)。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、6月1日号)

