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キーマンに聞く

連載④~あなたの会社は大丈夫?デジタルクライシス対策術〜世論の変化で炎上リスクが生まれることも〜(SIEMPLE 主任コンサルタント 桑江令氏)
新型コロナ関連でネット上では毎日様々な事象に対して対立構造が生まれ、議論が巻き起こっている。分かりやすく表現すれば「自粛推奨派」と「経済重視派」とでも言えるだろうか。企業の方針に対して、それぞれの立場から意見を好き勝手に述べる。そしてそれが相手への攻撃へとエスカレートしていく。著名人の発言や投稿は、本人の意図やニュアンスを切り離されて独り歩きし、時には誤解や偏見も加わって、「まさか」という思いもよらない反応が生まれる。このコロナ禍の中で少しでもSNSを利用していれば、もう見慣れてしまったのではないだろうか。こうした事象は確かにここ最近で悪化していると言えるが、実はその兆しはここ1 ~ 2 年で見えていた。
企業のCMやポスターが「不謹慎だ」「〇〇蔑視だ」といった批判を受けているケースに、覚えはないだろうか。著名人の投稿に批判が殺到、というニュースも良く目にするはずだ。個人が気軽に呟ける匿名のSNSだからこそ、過剰なまでの反応が後を立たず、また一度火がついてしまうと多くの人が参加してエスカレートし、“ネットリンチ”のような状態に陥ってしまう。これがSNSの無法地帯ぶりを示していると言える。
このような状況だからこそ、企業側が発信する情報やクリエイティブには、炎上リスクが存在すると言えるだろう。こだわって作った企画やクリエイティブであればあるほど、当事者では気付かないリスクがそこに隠れているのだ。何事にも第三者のチェックが有効なように、今のこのご時世は企業が発信するクリエイティブ(CMなどの動画、チラシやポスターやリーフレットなどの紙媒体、ホームページやネット広告での画像やキャッチコピー)はもちろん、公式SNSアカウントの投稿一つ一つにおいても、炎上リスクをしっかりとチェックすることが望ましい。
ではチェックする際にはどのような視点が必要なのだろうか。これまでのように、法律に関連するような内容であればリーガルチェックは必要だろうが、それとは別にここで必要になるのはあくまで“ネット炎上”を防止するための視点だ。企画や制作に携わっていない社内の第三者が先入観の無い目でチェックすることはすぐ導入できるチェック方法で、その際は年代や性別といったセグメントを分けて複数のメンバーで実施することが必要と言える。
その上で、普段からSNSでの炎上ネタにアンテナを張って置く必要がある。Webメディアの中には「炎上・批判」をコーナーとして記事化しているものがあり、またツイッターでも炎上ニュースを紹介するアカウントもあり、これらを定期的にチェックすることで炎上リスクに対する感度を上げることが出来る。特にブライダル業界においてはジェンダーの視点から批判が生まれやすいと言える。例えば「結婚は女性の幸せ」といった昔ながらの価値観や表現も、今では「価値観を押し付けるな!」という批判が生まれてしまうリスクを含んでいる。
昨年、とある呉服店の広告コピーが炎上しネット上で多くの批判を集めてしまったが、このコピーは数年前に広告賞を受賞した作品だった。つまり「成功」とされていたクリエイティブだったのだが、それが数年後には多くのバッシングを受けてしまう。この事例は、如何に炎上へのリスクヘッジが難しいのかを表している。以前は大丈夫であったとしても、世論の変化で炎上リスクは生まれてしまう。常に最新の状況を見極める必要があるのだ。
こうした炎上リスクは、クリエイティブだけに限った話ではない。広告にモデルとして、または企業のイメージキャラクターとして起用していた人物が不祥事を起こしてしまい、起用した企業側に飛び火するケースも増えている。特に最近は多くの芸能人がSNSの個人アカウントで日々多くの情報発信をすることがあり、こうしたSNSでの発言がバッシングを生んでしまう土壌になっている。またインフルエンサーやインスタグラマーを起用しているケースもあると思うが、そうした人達はちゃんとしたマネジメントを受けておらず、何らかのトラブルを生むリスクは高いと言えるのだ。モデルとして起用する場合は、事前にその起用予定者のリファレンスチェックを行うことが重要ということだ。
次回はこの“リファレンスチェック”について、掘り下げていきたい。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)

