LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

オンラインの対応強化と本質の追求を図る【バリューマネジメント 代表取締役 他力野 淳氏】
「打合せのオンライン化は進んでいくが、大切な人が集まる結婚式の文化は消えない」。そう語るのはバリューマネジメント(本社:大阪市中央区)の代表取締役・他力野淳氏だ。文化を紡ぎ続けるには、結婚式の本質をカップルに伝えていくこと。その時間を割くための業務効率化や今後可能性のあるビジネスモデルなど話を聞いた。
――コロナの感染拡大による春の婚礼施行状況は。
他力野「2 月いっぱいは基本的に通常通り施行できましたが、3 月に入り徐々に影響が出始めました。他社も同様かと思いますが、4 ~ 6 月は大半が延期となり、特に5 月はもともと施行繁忙期のため、大きな打撃を受けたことは否めません。秋以降のカップルに関しては、5月中旬時点でほぼ問合せベースで、現状予定通り開催していきたいと実施に前向きな声が大半を占めています。」
――MICEなど一般宴会の受注にも積極的でした。
他力野「予定していた70%が延期ではなくキャンセルに。実施するパーティは現状ない状態です。とは言えブライダルと一般宴会の大きな差はリピート率。参列したゲストが新規来館してくれるなど、結婚式におけるリピートももちろんありますが、宴会部門はこれまでも、そしてコロナ収束後のこれからも毎年利用してくれる“太い顧客”の状態です。今までどおりの関係性を引き続き構築していくことで、『今年は無理だったけれど、また来年よろしく頼むよ』と言ってもらえるわけです。合わせて当社の顧客の中には官公庁や高級アパレルブランドなど、1 件あたりのパーティ単価が高いものも多かった。インバウンド系は来年までは受注・開催できないとの予測を立てていますが、長期的なV字回復を目指していきます。」
――全国各地で宿泊ビジネスも積極的に展開していますが、影響とその打開策は。
他力野「緊急事態宣言発令後も、基本的にホテルは営業自粛要請のカテゴリーには入っていませんでした。とはいえ当社の施設はビジネスホテルではないため、言ってしまえば“不要不急”に該当するわけです。また各地の感染状況に応じて自治体によって差もありました。福岡や兵庫に関しては不要不急の施設ということで、自治体からの通知も届いたため一旦クローズ。当社の宿泊施設のADRは6万円を超えていますが、この単価の顧客層がどこにいるのかを想定すると、都市部という回答になります。要するに、地方展開する私たちの宿泊マーケットは、結局のところ大都市からの流入になるのです。各エリアが日常を少しずつ取り戻す一方で、東京や大阪などの自粛が今後も続けば、影響は長期化すると予測しています。」
他力野「一方で歴史的建造物を活かした再生案件など、当社の宿泊施設は造りが三密ではないのが特徴。客室数は1 エリア5 室など規模も小さく、多くても数十室です。さらに棟が分かれているケースも多く、1 棟1室という贅沢な空間を提供している所もあります。4 月7 日には政府がコロナの緊急対策として補正予算案を閣議決定。そのうちの観光需要喚起を目的とした『Go Toキャンペーン』がスタートした際には、他の顧客との交流が少なく密を避けられることを前面に出し、少しずつ受注回復に繋げていきたいと考えています。」
――ブライダルに話を戻しますが、秋以降施行が戻ってくるとすると今から少しずつ準備を進めておく必要があります。
他力野「ブライダルに関しては、結局のところカップルの“気持ち”の部分が大きいでしょう。エリアによっては緊急事態宣言が5月半ばに解除され、都市部においても1 日あたりの感染者数が少ない日も目立ってきました。要するに、『落ち着いてきたな、大丈夫かも』と思えるようになったら潮目。ゴールデンウィークは観光業などを始め各業種での繁忙期と言えますが、今年の日本はそれを“捨てて”しまったわけですから、政府はなんとしてでもお盆までには経済を復活させたいと考えているはずです。以前のように完全に戻ることは難しいかもしれませんが、夏以降は少しずつ行動の範囲が広がってくると期待しています。結婚式においても『大丈夫だろう』という日がいつ来てもいいように、今準備をしておく必要があるわけです。」
――あとは結婚当日を迎えるだけ。そんな状態を今から作っておくために、現在オンラインでの対応を強化しています。
他力野「打合せはもちろん、新規接客もWebで対応しています。もともと国際結婚も受注していたため、日本と海外を繋いだオンライン対応はすでに経験がありました。一昨年からはオンライン化が更に進むと見越し、準備に着手。360度会場が見られる映像などもトライアル会場から導入し始め、昨年末には全会場にインストールが完了していました。そこから日々PDCAを回し、現在に至っています。実際に4月以降オンラインのみの新規接客で受注できたケースも出始めており、これまで少しずつ積み上げてきたものが結果になってきたと言えるでしょう。」
――オンラインは業務効率化に繋がる可能性もあります。
他力野「例えば成約後の1 回目の打合せ。ヒアリングはもちろんですが、初回は今後の流れなど根本的な説明が多いわけです。当社ではこの部分を5 年前からセミナー化。担当プランナーがそれぞれの顧客1組ずつに準備の流れを説明するよりも、プランナー1名対複数カップルでのセミナー形式の方が効率的なわけです。では次のステップとして、この初回セミナーをオンライン化したらどうなるか。ライブイベントとして開催するのはもちろんですが、その動画を1 回レコーディングすれば、カップルは好きなタイミングで自宅からチェックできるようになります。長い文章が書かれた資料を説明するよりも、映像の方が実は分かりやすかったりすることも。結果として打合せ回数が減り、忙しいカップルに対してもメリットが生まれるはずです。こうしたアイデア転換が、コロナ収束後も求められるはずです。」
――業務効率化が図れれば、他力野社長自身、極論打合せは3 回でもいいと考えているそうですが。
他力野「内容を決めていく打合せ自体をスリム化し、本質部分に時間を充てていくことが重要でしょう。そもそも結婚式を合理的に考えれば、極論の答えは『開催しない』となるわけです。実施するとしても、料理や衣裳など必要なコンテンツだけをオンラインショッピングのようにWeb上で選択していけば、クオリティは別としてパーティは創れてしまいます。では、ブライダル業界はそれでいいのか。プランナーを始め私たちが介在する価値は何なのか。当社では『時旅』と題し、式を挙げるカップルに運営する施設に泊まってもらい、お互いを更に深く知るという夫婦の価値観ワークのような提案もしています。業務効率化を図ると同時に、今後プランナーは結婚式を挙げる理由や意味をカップルに考えてもらうことに、プラスの時間を割くべきかと。結果として顧客満足度も上がり、式をする本来の意味を伝えていけるはずです。」
――マーケットの拡大はあるとしながらも、結婚式当日はオンラインよりもリアルを重視したいそうですが。
他力野「私もですが、大多数の人間はやっぱりリアルな三密が好きなはず。オンライン飲み会が流行っている一方で、コロナ収束後の余暇の時間も引き続き全員がWeb環境に残り続けるかと言えば、そうではないでしょう。オンラインウエディングのサービスも各社がスタートしており、今後この流れは進むと思います。一方で、バリューマネジメントとしてはリアルな結婚式を大切にしたい。多くの人が一堂に会して開催する結婚式の文化は、コロナ収束後に復活すると考えています。当社の婚礼平均料理単価は、昨年ベースで1 万9500円前後と高水準を記録しています。要するに、メインの顧客層は総額が少しアップしても料理でゲストをもてなしたいと考えている人たち。結婚式はたくさんの人が集まり、直接新郎新婦の顔を見てお祝いの言葉を掛け、カップルや家族の表情をリアルに見られる臨場感が醍醐味だと感じています。いわば、人と人とが集まりコミュニティが形成される場。今後家族婚などの少人数化も進んでいき、そのマーケットは拡大してくるはずです。コロナ禍においては少人数の受注強化も視野には入れていますが、コロナ収束後は引き続き結婚式の本質、価値を伝えて、70名以上など多人数のパーティを積極的に提案したいと考えています。」
――こうしたパンデミックが再度起きる可能性は否定できません。新たなビジネスモデルを展開していく可能性は。
他力野「あくまで可能性の話ですが、施設を持たないビジネスはあり得るかと。例えば重要文化財を所有せずに、1 日限定のイベントを企画・プロデュースするなど。結局のところブライダルや飲食業界など、コロナ禍においては賃料を始めとした固定費が痛手だったわけです。ハコに依存せず何かしらビジネスを展開できれば、今回のようなことが起きても、結果としてリスクは抑えられますから。合わせて業界内ではすでに一部スタートしていますが、当社が培ってきた組織づくりのノウハウを外部に出していく可能性もあるでしょう。現状ブライダル業界は施設ビジネスのため、『人が集まったらダメ』という状況に再度陥れば一発アウト。サービス産業の垣根を越えて別業界に当社のチーム作りのノウハウを提供できれば、結果として“サブスクビジネス”のような定期的な収入に繋がってくるわけです。こうしたビジネスモデルの構築は、今後考えていきたい分野の1つです。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)

