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![:連載56:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第56回『ブライダル法務六法全書 ~仕事に使える法律を厳選解説~ ⑥民法Ⅳ』~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~](https://bridalnews.co.jp/wp-content/uploads/2021/06/52409c7f66275a5182df54c4701471e5-220x330.jpg)
:連載56:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第56回『ブライダル法務六法全書 ~仕事に使える法律を厳選解説~ ⑥民法Ⅳ』~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~
今回は、「参列者からクロークで荷物を預かる場合の法律上の規定」について解説します。意外とトラブルになりがちな点ですので、ぜひ日々の業務にご活用ください。
1.今回取り上げるテーマ 参列者からクロークで荷物を預かる行為は、参列者との関係においては「無償サービス」と言えます。「無償で預かった場合の責任」については、民法659条で「自分のものを管理するのと同一程度の注意義務で足りる」とされていますが、預かるのが結婚式場などの施設事業者である場合には、商法において特別な義務が課せられています。
2.事業者が荷物を預かる場合の責任 商法595条は、結婚式場などの施設運営をする事業者が荷物を預かる際には、仮にそれが無償であったとしても「善良な管理者の注意をもって」保管しなければならないとしています。これは善管注意義務と呼ばれるもので、上記の民法上の義務とは異なり「特に慎重に取り扱う重い注意義務」が課せられます。
では、もしクロークで預かっている最中に荷物が紛失したり壊れたりした場合にはどのような責任を負うのでしょうか? 商法596条1 項は、そうしたケースにおいて事業者は「不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない」と厳しく規定しています。クロークで荷物を預かるということは、意外に重い責任が伴うのです。
ただ、ここで誤解のないようにしたいのですが、商法596条1 項は「クロークで預かっている最中に」発生した場合の責任について規定していますので、当然ながら「クロークに預ける前から壊れていた」「クロークから返した後に壊れた」というような場面には適用されません。つまり、実際のブライダルの現場におけるこの問題のポイントは「どのタイミングで荷物が壊れたのか」という点に集約されます。
それでは、事業者としてはいつも通りクローク内で管理していて、預かった荷物が壊れる原因に思い当たる節がまるでないにも関わらず、荷物を預けた参列者等から「クロークに預ける前には絶対に壊れていなかった」「クローク内で壊れたに違いない」と主張された場合は、法律上どのような取り扱いになるのでしょうか?この場合は「立証責任がどちらにあるのか」が問題となります。立証責任とは「その事実があったことを証明しなければならない責任」のことで、この責任を負う側が証明できないと負ける(=主張は認められない)という関係性となります。
そして、この立証責任が式場側にあるのか、参列者側にあるのかが気になるところですが、法律上、立証責任は「責任を追及する側」である参列者側に生じる、というのが基本的な考え方となります。つまり参列者が「クローク内で壊れた」と責任を追及したいのであれば、自分でそれを証明しなければならないのです。したがって、式場側が「クロークでの保管が壊れた原因ではない」と判断した場合には、参列者からの証明がない限り「当会場の対応に不備があるとは認識していないので賠償責任は負いません」と主張することが可能、ということになります。
なお、商法597条には、クロークのスタッフが荷物を預かる際に「貴重品はございますか?」と声をかけて「ありません」との回答、または何も回答がなかった場合には、荷物の中に現金や高価品が入っていて、それが紛失または壊れたとしても事業者側は責任を負わない、とも規定されています。
こうした事故を起こさないような体制を構築するのが一番なのですが、加えて「貴重品などはございますか?」という声がけを徹底することがいざという時にこんな法的な効力を導き出すということも参考にしていただけると幸いです。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1、11日号)

