LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

2社共創で業界をアップデート【CRAZY 吉田 勇佑氏 × BLD WEDDINGS 染矢 抄氏】
CRAZY(東京都渋谷区)は9月17日、全国の式場を対象にパートナーシップ契約を結び、今後の結婚式を共創する事業【C R A Z YWEDDING ALLIANCE】を発表した。第1弾のパートナーは、全国に11店舗の婚礼施設を展開するBLDグループ(以下BLD)。BLDが表参道で運営する『Central Terrace TOKYO』と、来春福岡に開業予定の『THE CENTRAL PARKKOKURA』の2施設において、2社共同でのサービス提供を順次進めていく。事業を推進するCRAZYの取締役COO ・吉田勇佑氏と、BLD WEDDINGS(東京都中央区)執行役員・染矢抄氏のキーマン2人に、これまで感じていた業界の課題、アライアンスの概要、2社でタッグを組む可能性などを聞いた。
スピード感の課題
――新たにサービスをスタートしたアライアンス事業。立ち上げのキッカケは。
吉田「もともと当社はコンセプトを強みとしたオーダーメイドウエディングを武器に、2012年から婚礼サービスを開始。2019年2 月には、初の自社施設『IWAI OMOTESANDO(以下IWAI)』をオープンしました。今年1月には、『CRAZY GRANDE MAISON』を横浜に開業。このレストランの準備を進めていく中で、横浜マリンタワー内の婚礼施設の事業承継の話が舞い込み、運営を決定。リニューアルを経て、6 月に3 店舗目としてオープンしました。店舗展開は当社としても経営戦略のコア部分の位置付けで、マリンタワーのような事業譲受の案件は、機会があれば検討していきたいと思っています。」
吉田「一方、業界全体で施行組数が減少し結婚式離れも加速する中、数年に1 店舗を出すスピードでは、カップルやゲストへの提供価値をどこまで上げていけるのかという課題も感じていました。IWAIは2 バンケット、横浜の2 施設はそれぞれ1バンケットずつなので、当社の所有宴会場数は4 つのみ。この規模では勢いも含めて、自社でできることにどうしても限界があるわけです。そうした中で、BLD高杢会長と当社代表・森山のトップ2 人でコミュニケーションを図る機会が春頃にありました。感じていた業界課題、掲げるビジョンも含め通じるものもあって、現場をそれぞれ見学する流れに。こうしたやり取りを背景に、アライアンス事業のスタートを切り、2 社で課題解決に取り組んでいこうと、共創パートナーとしてタッグを組むことになりました。」
――業界歴約18年の染矢氏ですが、婚礼市場全体の変化も含めて感じている課題は。
染矢「『結婚式って別にやらなくてもいいよね』と思っている人たちの声は、残念ながら以前より増加傾向にあると感じています。そうした声を『結婚式をやりたい』に変えていくためには、プランナーとの打合せを通じて結婚式への想いを深め、準備を重ねる過程がまずは重要。加えて式当日に、新郎新婦とゲストにとってかけがえのない体験を提供することも、必要不可欠だと感じます。一方、『結婚式はやらなくてもいい』との声が実際にゼロではないということは、参列ゲストにまで結婚式の良さを伝えきれていない可能性も否めません。その部分をさらに伸ばしていくためには、プランナーだけでなく当日のサービススタッフの力も必要不可欠で、これは業界全体の共通課題と捉えています。スポットで活躍中の素晴らしいスタッフも数多くいるものの、そのレベルに育てあげるためには投資は欠かせません。特に時間は多くを必要としますから、スピード感を持って変えていくには、なかなか厳しい部分もある。求められているのは、一定の満足度にとどまらず、感動を生み、想像を超える体験を届けること。その実現に向けてはスタッフ一人ひとりの力だけでなく、その力を引き出し、組織全体で再現できる育成と仕組みづくりも重要になります。今回のアライアンスを通じてこれまでの取組みをさらに進化させ、より多くの新郎新婦とゲストに感動を届けていきたいと考えています。」
列席を機に転職決意も
――吉田さんの考える、自社とBLDのそれぞれの強みは。
吉田「私自身の思うCRAZYの強みは、結婚式の満足度はもちろん、新郎新婦だけでなくゲストの人生も深まり、『今日来てよかった』と思ってもらえる感動レベルを上げることに注力している点。アライアンス事業の詳細に繋がる部分でもありますが、分解して考えると①人、②コンテンツ、③場づくりの3 つを当社の競争優位性と捉えています。実際当社は式を挙げた新郎新婦が社員として入社するケースも多く、私もまさにその1 人。その流れは参列ゲストにも波及していて、『IWAIでの参列経験をキッカケに、CRAZYへの転職を決めた』というメンバーもいます。こうしたリファラル採用は、式当日に新郎新婦だけでなくゲストにも感動を届けられている結果の表れとも感じています。」
吉田「一方でBLDの魅力は、再生の文脈から作られた施設という点と、人材です。スタッフ全員とコミュニケーションを取ったわけではなないものの、リーダークラスの皆さんは高いパッションを持っているのも印象的でした。そもそも当社と比較して相当数の結婚式をプロデュースしているわけですから、その点のリスペクトも大きい。今回の共創で、こちらが学ばせてもらっている部分も多いです。」
――染矢さんの考える自社ならではの強みと、CRAZYの印象は。
染矢「会社全体の強みは、ホールディングスとして婚礼だけではなく、再生可能エネルギー事業にも注力しているユニークさ。婚礼のフロー収益と、エネルギー事業のストック収益という2 つの経営基盤があるのは、安心して働ける環境と、安定的な運営を用意できることに繋がっています。婚礼事業に関しては既存の建物や遊休地などに価値を見出し、式場として運営することに注力。建物がもともと持っている物語、そのエリアで長く愛されてきた施設など、“再生”の部分に重きを置いています。また、福岡の『オーシャン&リゾート マリゾン』は海に囲まれた唯一無二の立地。こうした独自性のある空間とハードは、当社の強みとなっています。CRAZYの印象としては一人ひとりのマンパワーの強さがあるかと。実行力のある人が、とにかく多いと感じています。」
サービス人材の内製化
――IWAIではオープン当時から、ゲスト満足度に重きを置いた結婚式を目指してきました。実際にクチコミサイトでは、ゲスト満足度で高い評価を得ています。今回のアライアンスでは、①場づくりを担う司会&サービスディレクター(サービススタッフ)、②新郎新婦の人生を紐解く『ライフストーリー』、③チップ制度の3 つをメインサービスに据えています。
吉田「様々なポジションで力を合わせて結婚式を創り上げていくことを考えれば、スタッフ全員はキーマン。とはいえゲスト目線で考えた時に、接する時間が長いのはサービスです。マリンタワーに関しては事業承継した流れの兼ね合いもあるので現状は別ですが、IWAIとCRAZYGRANDE MAISONは、サービススタッフを自社雇用し、内製化。今回のアライアンスにおけるサービススタッフは、当社で採用したメンバーを、表参道と福岡・小倉のBLDの各会場に配属させるイメージです。福岡に関しては東京から出向くメンバーもいますが、合わせて現地採用を強化していきます。食事を提供する、次のドリンクを聞くといった配膳作業はサービスにとってあくまで仕事の1 つで、ゴールではありません。重要なのは、新郎新婦は結婚式当日をどんな日にしたいのか、そしてプロデューサーがどんなディレクションを考えているのかを理解し、自分の担当するゲストテーブルはどんな人たちなのかまで把握しておくこと。当社施設では、同じテーブルの人たちが深く繋がり、最高の思い出を作るお手伝いをすることに重きを置いています。挨拶のタイミングといった詳細のマニュアルはなく、人として繋がるのを大切にしようという想いをベースに動いているイメージです。」
染矢「実際に結婚式を見させてもらい感じたのは、ゲストへの気付きを具体的なコミュニケーションに繋げるアプローチが非常に上手だということ。例えば、新婦のお母さんのネイルがとても綺麗だったとします。そうした細かい部分に気づく察知力や、『きっと今日のためにネイルをしたんだな』と背景まで想像し、会話に繋げていける力。こうした一つひとつの気付きやコミュニケーションは、ゲストの体験価値をさらに高めるのに必要と感じました。」
――サービススタッフにとって、担当するテーブルのゲストはどんな人かを理解していなければ、コミュニケーションを図るのも難しいかと。サービスによる場づくりという意味で、コアコンテンツに位置付ける『ライフストーリー』はカギとなります。具体的にどういったサービスで、どのように現場の運営に活用していますか。
吉田「先日ある撮影事業者の社長と話す機会があったのですが、『共有されるのは基本的に進行表のみ』とのことでした。分刻みのスケジュールは把握できるものの、新郎新婦が何を大事にしているのかまでは、正直見えてきません。当社では成約後1 回目の打合せで、2 人のこれまでの歩みをヒアリング。人生を年表にしたようなシートを用意しており、記入してもらった後に担当プロデューサーによるインタビューを実施します。大切な人との関係性を紐解いて言語化し、完成したものを式当日に上映。ゲストも一緒にストーリーを見るまでを、一連の流れとしています。例えば、『子どもの頃空手をやっていた』など詳細まで書いていない一文も拾い、その背景にある想い、エピソードまでヒアリング。結果として、当日参列する学生時代の友人の話などもこのストーリーに出てくるため、ゲストと新郎新婦の関係性を深めるサービスとなっています。現場の価値を高める意味で、完成したライフストーリーはサービススタッフに事前共有。学生時代のエピソードなどを知り、ゲストと会話できる状態を前提に、当日施行に臨んでいます。これは実際当日の場づくりの意味で、大きな違いを生んでいます。今回のアライアンス事業においては、BLDの担当プランナーと当社プロデューサーの2 人体制で、初回のヒアリングを実施。CRAZY側で、ライフストーリーを作成していきます。」
染矢「もともと当社でも、大切な人に手紙を書く『感謝のダイアグラム』を最初に行っていて、これまでの人生を振り返る機会の創出に繋げてきました。ライフストーリーのポイントは、新郎新婦にとって年表形式で人生を振り返れる点にあるかと。2 人にとってこれまでを“整理”する機会になりますし、これは非常にいいことだと思っています。先ほどの『空手をやっていた』の例であれば、幼少期の場合は特に親の意向、想いなども入ってくるので、そこを深掘りすることで家族のエピソード、親目線の感情も入れられるようになります。式当日、そのストーリーをゲストも一緒に見られるのは大きな魅力ですし、そもそも年表づくりは新郎新婦だけではなかなかできないでしょうから、私たちがそこに介在し、サポートするという部分にも独自性を感じています。こうしたゲスト情報を施行に関わるスタッフが事前により深く理解し、当日の接客に活かしていくことには、大きな可能性を感じています。サービスのさらなるブラッシュアップに繋げていきたいと思っています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、11月1日号)

