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キーマンに聞く

連載7《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》昨年12月に給与をベースアップ(ゲスト:小野写真館 代表取締役社長 小野哲人氏)

連載7《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》昨年12月に給与をベースアップ(ゲスト:小野写真館 代表取締役社長 小野哲人氏)

 テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区、以下TG)岩瀬賢治社長の連載企画【ブライダル経営者サロン】第7回のゲストは、小野写真館(茨城県ひたちなか市)の小野哲人社長。写真スタジオ、ブライダル施設、振袖レンタル店等を展開し、昨年は伊豆の旅館をMAし運営を開始した。背景にあるのが、技術職である自社のカメラマンのセカンドキャリアを作っていくこと。TGの各種制度も含め、サービス人材の給与をどのように対応していくか語りあった。

旅館とフォトの運営担う

岩瀬「実は2020年の年賀状は、御社の運営するスタジオCocoaで撮影した写真を使いました。」

小野「本当ですか!! Cocoaは首都圏を中心に9店舗を展開しています。小規模の完全貸切型のスタジオですが、振袖レンタルのアズとツーブランド展開し、スタッフを共有して入口を分けているようなイメージです。今度川崎にも出店します。」

岩瀬「面白い仕組みですよね。スタジオ系は背景が一緒で毎年代わり映えしない写真だったため、ロケフォトなどを探していたのですが、その時にCocoaを見つけました。場所とスタッフの時間を買うという感覚で、説明を受けている最中にも、ウエディングドレスを着た花嫁が時間ギリギリまで写真を撮っていました(笑)。」

 

―― 小野写真館は、昨年旅館をMAして運営を開始しました。その狙いとして、カメラマンのセカンドキャリアを会社として整えていくという考えがあるようですね。

小野「もともとカメラマンが主の会社で、そこからブライダル、振袖レンタル事業を始めていった経緯があります。企業として成長していくと、マネジメントをする店長、事業部長が必要になるわけですが、例えば写真が上手な人が店長になっても失敗することもあります。またカメラの性能がどんどん進化していることもあって、現在は新卒1年目からデビューが出来るような教育をしています。以前だったら露出や技術的な要素が求められていたわけですが、今はそれも必要なく、それこそセンスさえあればすぐにでも撮影できます。そうなると、技術を身に着けてきた男性カメラマンが30代、40代になった時、どんなに写真が上手であっても、なかなか給料を上げられません。結果として独立していくわけですが、独立しても簡単ではなく、収入が落ち込む可能性もあります。それならば、カメラマンが社内独立していくような流れを作りたいと考え、旅館運営を開始しました。旅館運営で簡単なPLを担ってもらいながら、自然豊かなエリアを生かしたフォトブランドも立ち上げたので、カメラマンとして自分のキャリアを存分に活かしてもらう。子会社、委託のような形で、夫婦で旅館を管理しながらフォトで独立するという考え方です。会社としても最低限の給与を保障し、旅館とフォトで目標を達成したらレベニューシェアのようなモデルにしていければ。カメラマンのセカンドキャリアも見越していかなければ、働いていても幸せにはなれない。プランナーも同じような技術職だと思うのですが、そうした部分の課題感を岩瀬社長はどのように考えているのでしょうか。」

岩瀬「会社として、長く働いてくれるスタッフのキャリアや、若い世代にチャンスや権限を与えていくことは、重要だと認識しています。今は全体のバランスも取れていますが、今後は難しくなる可能性はあります。会社のステージが変わっていく時は、会社に必要とされるスキルも当然変わっていきますから。例えば今までは想いが大切だったのに対し、それがカルチャーとして企業内に根付いてくると、あえて維持する必要もなくなる。その段階では、これまでとは違う力が加わらないと、成長できないというフェーズになります。現在、主たる事業部の部長は、2006年~2007年度の新卒社員ですが、それとは別に40歳代以上のキャリアの長い社員は、有事の際の機動力などはやはり頼りになります。それぞれに得意分野や持っているスキルが異なることを踏まえ、適切な役割分担が必要だろうと考えています。」

 

働き方の選択肢を増やす

小野「当社にも、40代の代表的なカメラマンが2名います。私よりも前から働いていて、何かあった時には会社のビジョンも共有してくれているため力になってくれます。特にコロナ禍においては、本当に彼らがいて助かりました。ただ、企業としては、そうした人ばかりではスケールしない。特に会社が成長し、優秀な人材が入ってくるとそのバランスは難しいですね。」

岩瀬「ウエディングプランナーの場合、今は圧倒的に女性が多いため、最初に直面する壁は出産。当社では常時30名程度が産休育休に入っていますが、戻ってきたときの働き方として、時短で働くか、年次の契約社員になるかを、今年から選べるようにしました。契約社員の場合、どういう成果に対してコミットするのかをエリアマネージャーと決めていきます。コミットする内容は、月に何件担当する、教育面でどのように貢献するなど。それで1年間働いてもらい、その成果に合わせて昇降格もあります。また、もっと自由が欲しいという場合には、フリーウエディングプランナー制度もあります。これは会社と業務委託契約を結び、出勤する義務もない。PCを貸与して、顧客と直接やり取りしてもらいます。」

小野「フリーということは、TG以外の結婚式のプランニングもやるのですか。」

岩瀬「それを望むプランナーもいます。ただ、色々なところで活躍したいと言っても、カメラマンと一緒で仕事がなかなか取れない可能性もあります。そこで毎月どの程度の収入があれば生活できるのかを確認した上で、会社として最低限の売上が保障できるように担当を渡しています。それ以外は自由です。こうしたプランナーが例えばプロデュース契約を他の法人と交わす際には、会社が契約書のチェックをフォローしたり、HP制作などもサポートしています。このように働き方の選択肢を増やしていくことで、バランスを維持しています。」

小野「成長のフェーズが変わったタイミングはいつですか。」

岩瀬「第一は、業績が落ち込んだ2006年、2007年のタイミングであり、その後は2014年、2015年ですね。創業直後は【とにかく頑張ろう】でしたが、業績が悪くなった時に今までの頑張り方がどうだったのか見つめ直し、顧客第一主義に戻って【顧客の方を見て頑張ろう】に変化しました。その後2012年にカスタマーセンターを作ってから、顧客の感情の変化をきちんとデータで見られることで、【何を頑張ったら顧客満足度が上がるのか】になりました。」

 

年功序列の概念をなくす

小野「個人的に感じているのは、やはり店舗を出さないとポストが出来ないため、社内体制も変わっていかない。結果、企業としての成長速度が落ちていくと感じています。」

岩瀬「その点は、当社としてもホテル事業を拡大すれば、新たなチャンスを作れると考えています。一方、当社の店舗の支配人は1番若くて27歳。かたや長年務めている43歳の支配人もいます。20年近くのキャリアの差があるのですが、同じ職位です。これは年功序列の概念が一切ないということ。例えば40代のプランナーもいますが、年齢に対して特別なポストはなくても、彼女にいい結婚式を作るスキルがあれば、その分高く給料を払うということが本筋かと。こうした部分を、賞与で反映するような制度設計にしています。給与に関しては、昨年12月、制度を変更して新卒であれば年収ベースで37、8万円上げました。同時に2、3年目のスタッフも新卒の水準に抜かれないよう、50万円程度ベースアップ。本当は昨年の4月に予定していたのですが、コロナの様子を見て12月に変更しました。」

小野「今この状況で、固定給をオンするのはなかなか出来ない判断ですよね。当社ではまず利益が出て、最終的に変動費化できる賞与部分で上げていくという方法を採っていますが、固定費を上げるのはやはり相当覚悟がないとできません。それをブライダルトップの企業が実施したのは、本当に衝撃的です。」

岩瀬「その代わり、どれだけ1人あたりの生産性を上げるのかもセットにしています。生産性が上がっていけば、結果としてグロスの人件費は同じでも、一人ひとりにたくさん払ってあげられるという考えです。今は人件費が先ですが、未来はそういう方向に持っていきます。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、4月11日号)