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キーマンに聞く

連載10(後編)《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》SDGsの取り組み(ゲスト:タガヤ 代表取締役 神田尚子氏)
テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区)岩瀬賢治社長の【ブライダル経営者サロン】は、前号に引き続きタガヤ(京都市中京区)の神田尚子社長。SDGsの取り組みを推進し、学びを提供する協会を設立した神田氏は、若い世代に浸透するその精神を年長者が支援していくべきとの考えを持つ。SDGsという言葉は使わないものの、自らが出来うることをしっかりと対応していくべきというポリシーの岩瀬社長と、いかに推進していくかを語り合った。
顧客対応もSDGs視座
神田「コロナ禍で、社会全体が大転換期だと思います。人も変わってきますが、その中でこの危機を一緒に乗り越えた人かそうじゃない人かによって、次の時代に上がるステージが変わるのではとも感じています。」
岩瀬「どういう企業カルチャーかということを、働いている人たちからもシビアに見られていると思います。社員たちが、より会社のことを好きになってくれた企業は強くなるのではないですかね。顧客に対してはもちろん、社員の雇用、給与、賞与などにどう対応したか。普段から口でいくら良いことを言っていても、厳しい時だからこそ会社としての素が出るというか。それをシビアに見られた、一年半だったと思いますね。」
神田「当社では、雇用・給与は維持しましたが、一方で賞与については満額払えなかったです。ただ、この状況だから賞与は出ないと言っていたので、わずかでも出した時には社員たちも喜んで、次の日にはお礼メールも殺到しました(笑)。T&Gは満額出したそうですが、ステークホルダーたちの手前難しい面はなかったのですか。」
岩瀬「一年で100億円の借金が増えたわけですが、それに対して社員に一回賞与を払うと総額で₄ 億円程度。これを仮に半額にしてもその差は₂ 億円であり、全体から見れば生きるか死ぬかの規模ではないということが一つ。次に、株主つまりステークホルダーの人たちがどう思うかという話があります。確かにコロナ禍の売上・利益低迷は結果責任だと言われればそうなのですが、少なくともT&Gという会社の戦略が間違っていたわけではなく外部環境要因です。それを前提に、社員に危機感を持ってもらいながらも一緒に頑張ろうという会社からのメッセージが賞与の持つ意味だと考え、それを例えば50%にするのは社員に対して失礼だということから満額を支給しました。」
神田「スタッフ達も、どちらかというとキャンセル料や延期料を取りたくないという意識は強いじゃないですか。私たちはSDGsの視座を持っているため、全部そちら側に軸を合わせていくのですが、そうすると会社の利益にはならないけれども社会の利益になっているのだったらOKとなります。その点、ストンと自分の中に落ちるようなところはあるので、コロナ禍で改めてSDGsに取り組んでいてよかったとも思いました。」
岩瀬「その面では、企業カルチャーの素の部分ですよね。」
神田「T&Gもそうですが、私たちは少子化の中でのウエディングを2002年から意識していたため、ワンチャペルワンバンケットの展開を中心にしてきました。ワンバンケットであれば、どんなにマーケットが小さくなってもやっていけるだろうと。そのため展開する施設は₃ つしかありませんし、しかも全部土地から買い上げているため損益分岐点が低いのは今回救われました。その分、他の事業に力を掛けることもできましたし。」
年末年始は14日連休
岩瀬「ここまで長引いてくると、大手の方が一旦はきつくなっているとも感じます。固定費が大きいですから。神田社長と同様に、当社も地域一番店を目指すという感覚はありません。売上額でいうと、地域の₃ 番手とか₄ 番手にいればそれで十分に採算がとれるという規模ですから。そこを目指しながら、東京で1 番流行っているものを全国にきちんと最短で提供できるということを重視していくというスタンスです。」
神田「実は₂ バンケットの施設では、一日₄ 回転だったのを₃ 回転に減らしました。コロナがいつまで続くかわからないので、有効日も少なくしています。それを基準にして、オペレーションの人数設計もミニマムに改めました。今年の年末年始は、14日間連続で休みです。以前だったら、新年の₂ 日、₃ 日のオープンと決めていたのですが、そこも全て休みにしようと。私も年末年始にどこに行こうかと考えられますし(笑)、スタッフも今から盛り上がっています。ワンバンケットはプランナーの数も少なくて済み、そのまま施行までしっかりと対応させてもらうため顧客満足度も高まります。この素晴らしいビジネスモデルを、T&Gが業界の先鞭をつけて構築してくれたので、ベンチマークにしてきました。その中で私たちは、土地は絶対に買おうという戦略をとってきて。資産価値が出てきますので、今回のように新しい事業を展開する必要に迫られた時でも、後々効いてくるだろうという考えでした。そのため、神戸を最後にずっと買えずに出店できていないのですが(笑)、今思えばそれが逆に良かったです。」
岩瀬「当社も、出店フェーズではなかったことは助かりました。出店が一通り済んで、利益率を高めて事業を成長させていく段階でしたから。多くの施設も20年が経過し、減価償却も終わっているところも多いのはコロナでもダメージを少なくできた要因です。」 神田「当社は一般社団法人日本ノハム協会を設立し、SDGsに積極的に取り組んでいます。T&Gの対応はいかがですか。」
岩瀬「まず、コンセプチュアルに外に出しているという点では、当社グループのTRUNK(HOTEL)が非常にわかりやすいと思います。サスティナブル、社会貢献というキーワードで、ハードも作っています。廃校になった小学校の蛍光灯で作ったグラスを使うなど。ポイントは、日常の延長線上でそれを進めるというスタンスです。肩に力が入ってないというか、そのこと自体を特別扱いしないことが大事なところだと考えています。CSRなど様々な言葉はありますが、普段から意識をせずに自然とやれることによって継続していきたいですね。TRUNK(HOTEL)もソーシャライジングというコンセプトで、非日常ではなくて日常、等身大で社会的な目的をもった生活を掲げています。運営側としては、使ってもらうだけで、それが社会貢献に変わっていくような仕掛けをしていく。例えばアートワークは重度の知的障がいのある方が作ったものを飾っているのですが、見ている人にとっては自然に素敵と感じてもらえればいいのではないかと。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月21日号)

