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キーマンに聞く

連載3(後編)《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》どこでも調理できるキッチンカーの可能性(ゲスト:賑屋 代表取締役社長 山中扇氏)

連載3(後編)《T&G岩瀬賢治社長のブライダル経営者サロン》どこでも調理できるキッチンカーの可能性(ゲスト:賑屋 代表取締役社長 山中扇氏)

 大阪市内でレストランミッテを運営する賑屋の山中扇社長を迎え、厨房マネジメントをテーマに語りあったブライダル経営者サロンの後編。今号では変化する料理人の意識、さらにスチームコンベクションオーブンの登場によって加速していくシステム化の可能性について。

賑屋ではブライダルを始めとした各種ケータリング事業も展開。一方、T&Gは、オートクチュールウエディングチームが式場以外での結婚式も手掛け、そうした背景から婚礼料理を既存厨房以外で調理することもある。そこで話題に上がったのが、最新キッチンシステムを配備したトラック、【キッチンカー】の可能性だ。料理人育成のための大切な文化を維持しながらも、どのようにシステム化を検討していくのかも注目だ。

 

難しくなるマネジメント
山中「最近はキッチンのマネジメントが難しくなっているわけですが、その背景には、『親方制度』の崩壊もあるかと。これまで、若手は親方から学んで成長し、独立を目指すものでしたが、この“親方”の役割を会社が担っていく状態に進んでいくのではと思います。親方・弟子という意識も希薄し、修業という考え方は労働環境の問題もあります。そもそも独立にメリットを感じない料理人も増えている。だからこそ、会社としてどうしてあげるのかを考えていくべきです。数年前に論争になった、3ヶ月間の学校を出たばかりの職人が活躍しミシュランを取ったという寿司店。寿司を握るまでに7~8年の修業を費やしていた店と何が違うのか。その店は年齢層もバラバラで、全く経験のない人が、単に寿司を握ってみたいなどの理由で転職をしてくるなど、バックグラウンドも様々です。これも親方がいない代わりに、企業がその役割を担っているケースであり、海外にも店舗展開をするなど、ビジネス的にもすごいなと。おそらく今後は、こういった方法が進んでいくのではと感じています。」

岩瀬「最近思うのは、料理人として入社してくるわけですが、料理が好きとは別の理由で入社する人も増えているような気がします。もちろん採用する側の課題の1つでもありますが、分かりやすくいうと、入社半年くらいでやっぱりアパレルで働いてみたいといって退職することがある。つまり、料理が好きだからという動機ではなく、仕事として何をするかという観点から料理を作ることを選んでいる人が増えていると感じます。」

 

――仕事としての場所の提供と共に、料理が好きで学びたいという意欲のある人に向けては技術を高めていく機会も必要。そのバランスが難しいのでは。

岩瀬「シェフたちの日々のマネジメントは、確かに大変になっているのでしょう。料理そのものへの関心がそれほど高くないスタッフには、やはり料理の楽しさを教えたいとも思うわけです。ただ会社としては、自分自身のためにも新しいステージに飛び出たほうがいいのではというスタッフもいます。ところがこうしたスタッフが、仕事をする場所として会社に残っているのも事実です。いわば【料理が好き】という理由で働いているわけではない人もいる中で、どのようにバランスよくマネジメントしていくべきか。その点、料飲部でも1 回頭を整理するように伝えています。」

山中「料理人希望者のパッションが、以前に比べて薄くなってきている傾向にあるのは事実ですね。とはいえ、これは致し方ない部分があるとも感じます。だからこそ、これからはキッチンのあり方も変わっていかなくてはならないかと。例えばキッチンの機材の一つである、スチームコンベクションオーブン。2010年前後に初めて日本で発売されたわけですが、この機能をフル活用すると、1人料理を分かっている人がいれば、2~ 3人のアルバイトに指示を出すだけで大量調理の婚礼料理が提供できます。つまり、料理人の職域が機械に取って代わられている現状になっています。焼く、蒸す、煮るなど95%の加熱料理に対応できる機能性に、最初は戸惑いましたが、新しい可能性を感じ導入しました。」

岩瀬「その点当社の場合は、まだ昔のような地味に仕事をしていますね(笑)。」

 

カルチャーとの両立
山中「スチコンは実際に多くのレストランなどでも導入が進んでおり、結果として今の若いスタッフのスタンダードになっています。もっとも導入の際には厨房の人員も減らせるわけですから、それでいいのかという葛藤が生まれるのは当然かと。」 岩瀬「料理を作る行程も、一気に変わりますね。」

山中「オーブン内の段によって煮物を作る、パンを焼くということが同時に出来ます。それぞれの温度調整もできますし、それこそ夜全てを準備してスイッチを入れ帰宅すれば、翌朝には出来上がっているといった機能も。4バンケットあるブライダル会場の場合、それまで10数名でキッチンを回していましたが、今後は技術に見合う人数の採用が難しいとの考えから、導入を決定しました。この機械をフル活用することで、例えばミャンマーやベトナムなど、日本の料理現場で働きたいという強いパッションを持った外国人人材に仕事を任せることもできます。そうなってくると、パッションの低い日本人は、負けてしまう可能性も出てきます。」

岩瀬「そうした部分では、当社は20年間ほぼ変わっていないですね。厨房の規格も変えていませんし。今後ホテル展開を視野に入れているため、その際は今までの考えをゼロベースにする必要があるとは思っていますが、現状でT&Gのキッチンは回っているので、一気に変えることはないかと。平日は何人で仕込んで、週末の施行時には何人がどう動くかを考えることで、人のことを理解できるようになり、かけてあげる言葉なども変わってくるでしょうし。そこは大切にしていきたい部分でもあります。ただ、今のままでは回らなくなる可能性があれば、それは今から準備が必要になるとも思っています。」

山中「岩瀬社長のおっしゃる通りで、私もそういったカルチャーは大事にしたいと思っています。例えば、週1回自分たちで食材を買いに行き仕込んでいることもその1つです。同時に、新しいやり方に備えるという想いもあり、店によっては社員2名+アルバイト1名で回しながら、本店と同じクオリティが出せる仕組みを展開することで、両立させています。当社ではケータリングも受注しており、ウエディング関連の依頼もプロデュース会社からきます。出来立ての美味しさをキープして提供することを考えていくと、やはりマシンの力を借りることは必須と考えるようになりました。理想は事前に料理を75%程度まで作っておき、現場で仕上げることですが、屋外などではキッチン設備もなく思うようにできませんでした。今は機械の性能が上がっていることで、それができるようになっていますが、さらにクオリティを高める上でも、トラックをキッチンカーに作り変えたものを会社で買おうかと真剣に考えたほどです。見積もりでは1000万円前後でした。最新の機器を備えた大型のキッチンカーを導入すれば、大きなニーズがあるのではとも感じまし、店舗をオープンするなどのコストを考えればビジネス的にも採算は取りやすいはずです。」

岩瀬「当社にも『オートクチュールデザイン』という、ゼロベースから結婚式を創るプロデュースチームがあり、実際に両国国技館で結婚式を施行した際は、会場内に一からキッチンを作っていきました。何もないところで600人の婚礼料理を提供する必要があったことで、機器を全て会場内に運び込み設置していったわけです。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月11日号)