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広告出稿を1年停止し自社集客を試す【アニヴェルセル 代表取締役社長 松田健一氏】
AOKIホールディングスが昨年11月に発表した2022年3月期の半期決算において、アニヴェルセル(東京都港区)は売上43億200万円、営業損失1億4800万円となった。売上は2年前と比較してもまだ半分に満たない状況だが、一方で営業損失が前年同期の26億4000万円から大幅に改善され、通期での黒字化の見通しが出てきた。社長就任1年も経たずにコロナ禍を迎えた松田健一氏。厳しい1年半で取り組んできたことが、今後への礎となる。
コロナ禍のプロダクト
――コロナ禍の1 年半を振り返ってみて、いかがでしたか。
松田「特に2021年に関しては、結婚式を挙げられる状況になるようBIAなどが動いてくれたことには本当に感謝しています。それによって、何とか経営努力ができる土台になっていました。平時では見直すことのできない経営体質をより強固にしていくこと念頭に、どういう風に改革をしていこうかと考えた1年半。1 つは弊社の経営理念でもありますが、顧客満足×営業利益ということを頭に叩き込んで取り組んできました。いかに、安心して結婚式を開催してもらえるか。特に2020年の『結婚式が出来ない!』という雰囲気から、2021年はwithコロナの中で、どういう風に開催していくかというように変わってきたため、例えばオンライン対応や、お重の中に料理をまとめて短時間で実施する結婚式なども含め、プロダクトの開発も進めてきました。お重の料理『御祝福膳』は2020年8 月からのスタートでしたが、結婚式で実際に利用が増えたのは昨年に入ってから。従来の結婚式の多様化ということで、こうした取り組みが一定の満足を提供できたのではと考えています。」
――昨年は、集客媒体への広告出稿を全てストップしたことが注目されました。
松田「2020年の10月から1 年間ストップして、昨年の11月23日に再開しています。はじめは、自分たちで覚悟を持ってどれだけ集客ができるかということを試すタイミングは、この1 年しかないという考えから、自主販促をするために踏み切ったわけです。結婚式の数が少ない状況で何ができるのかを考え、それこそ各店舗でチラシを作って、近隣にポスティング。支配人達は、自分たちの所属しているエリア性を考えながら、様々な取り組みも進めました。エリアに密着した対応策として、例えば長野の店舗では『夢先ゴールドパートナー』という長野市が展開している恋人を作りましょうというプロジェクトに参画し、会場の提供なども行いました。そこに来るのは相手を見つけて結婚をしたいという人たちですから、式場としても非常にマッチする取り組みだと。それ以外にもみなとみらいでは赤レンガ倉庫と共同で、プロポーズプランを打ち出し、注目を集めることが出来ました。」
――コスト削減の側面もあったのでしょうが、まずは店舗として何ができるかということに1 回立ち返ってみようという意味合いですね。1 年間やってきて、集客面はどうでしたか?
松田「マーケットの戻りと比較するとあと1 歩ではありましたが、継続していくにつれマーケットとの乖離は狭まっていきました。昨年10月に緊急事態宣言が明けて、これからユーザーが動き出すだろうというタイミングがちょうど1 年だったので、それを機に広告出稿も再開。この1 年を振り返ってみると、例えばエリア内に競合の少ない店舗や大型の施設など、そこまで減少していない店舗もありました。実際に店舗自体がメディアのような役割を果たしているみなとみらいは、街に人が出てくればそれに比例してある程度集客も高まりましたから。店舗毎の傾向が明らかになったのは、得るものも大きかったです。10月で1 年間の状況を振り返りましたが、今後についても自分たちのできるところはしっかりと進めていき、それでも足りない分を、媒体と上手に付き合いながら補完していく。媒体に出稿して問合せをただ待っているだけというスタンスではなく、自分たちでもここまで出来るということを気付く機会にもなりました。」
――自社集客によって、成約率も高まっていくかと。
横の連携に助けられる
松田「成約率の向上は、スタッフ達が来店してくれることのありがたみを本当に実感できたからという側面もあります。1組1 組を大切にする意識でどう接客していくかという点について、個々のマインド部分が大きく変化し成約率を押し上げました。それ以外にも、ある程度時間があった期間を使って、教育にも注力しました。」
――結婚式における人数減の影響はいかがですか。
松田「当社はコロナ前には70名程度だったのですが、コロナ禍で50名になり、平均では20名程のマイナスです。12月、1 月については60名にまで戻ってはいますが、コロナ明けに申し込んで結婚式をしてくれるまでのターンになるまで、もう少し時間はかかるだろうなと予測しています。」
――とはいえ、決算では黒字化まであと一歩です。施行がある程度戻ってくれば、今の人数帯であっても、ある程度黒字転換の見通しは立ってきたかと思います。
松田「特に販管費については、今まで当たり前であったものを当たり前と思わない視線で見ていきました。例えば昨年1年で、清掃や庭園管理、警備なども当たり前にそれぞれ外注していたのですが、色々な横の繋がりを通じて他社の話も聞いていくとまだまだできることはあると気づけました。今回ニューノーマルの件で業界の横の繋がりが持てたことで、各社の社長からノウハウをたくさん共有してもらい、非常に勉強になりました。コロナ前には気軽に話や意見を聞くチャンスがなかったですからそれは良かったことですね。」
――組織体制はどうですか。人が減ってしまったという噂は聞こえてきますが。
松田「これは他社も同じだと思うのですが、このコロナ禍で卒業していく人もいました。辞めていくことに対してネガティブに捉えるのではなく、空いたポジションはスタッフの成長のチャンスになるわけですからどんどんつかみ取ってほしいという想いもあり、プラスになると考えています。またこの期間で、多くの優秀な人材がいることを発見できました。例えば今までは支配人として見ていた人が、実は経営的なしっかりとした考え方を持っているなど。これまでのように支配人がいて、その上にまた別のレイヤーが存在するという組織体系の場合、現場と経営陣の意見が乖離してしまうという面がありました。そういう意味では、コロナ禍で支配人のレイヤーからも色々な経営の提案をしてもらいましたし、実は役員レベルのスタッフがいるということに気づくこともできました。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1・11日新春特大号)

