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キーマンに聞く

仕込みと同時に腕を磨く スキルアップチャレンジ【アニヴェルセル 取締役 総料理長 羽根真樹氏・調理本部 責任者 湯澤勇人氏】
――羽根さんは2011年から総料理長を務めています。キャリアも長いですが、調理場の変化をどのように捉えていますか。
羽根「昨今はスタッフの二極化がより顕著になってきたかと。調理スキルをどんどん身に付け早く成長したいタイプと、もう一方はオンオフをしっかりつけてメリハリよく働きたい人材。前者に寄せた教育スタイルは過度な働き方になる可能性もありますし、後者に寄せると『もっと学ぶためには転職が必要かも』という不満から、離職に繋がる可能性もゼロではありません。以前のように朝から晩までというわけにもいきませんし、どちらがいい・悪いではなく、バランスを取っていくことが求められていると感じます。」
――こうした意識の変化もある中で、調理技術を習得できる独自の取り組みが『スキルアップチャレンジ』です。
湯澤「通常の仕込みの中で、例えば野菜の皮剥きやベースの出汁、ソースの取り方など様々な項目を用意し、タイマーで測って時間内にクリアできるかをチェック。達成できた分は評価制度にも繋げ、切磋琢磨しながらモチベーションアップを図る取り組みです。若手はもちろんのこと、肉の焼き方などキャリアに応じた項目を用意していますし、日々の仕込みと同時に、楽しみながら、かつ数分でできるのもポイントです。」
――モチベーション向上の取り組みとして、生産者への現場訪問にも注力しています。
羽根「我々調理人は生きた食材を使い、“生きた料理”にしていくことが求められる仕事。この理解促進を目的に、様々な生産現場に足を運んでいます。例えば、神奈川・三浦の農家を訪問し野菜を実際に植え、その野菜を納品してもらうなど。また、ブライダルの現場で魚をおろす作業も減ってきていますから、魚市場ではどういった処理をしているのかを自身の目で見るだけではなく、ここでも自分たちで魚をおろし、その魚を提供してもらう。エリアやスケジュールなどにもよりますが、若手も多く参加するようにしており、スタッフからは『楽しかった』という声もあがっています。シンプルな感想ではありますが、特に若手にとっては『仕事を楽しい』と感じられるかどうかは、中長期的なキャリア形成において重要ですから。ワイナリー訪問では日照時間によってブドウの味がどれだけ変わってくるのかを実際に体感し、そのブドウを肉・魚料理に使うとどうなるかなどを考える機会にも繋げています。」
湯澤「生産者訪問はサステナビリティの側面も目的の1 つ。働き手不足の農家をサポートする意味もありますし、生産現場を見ることで、食材を最後まで使い切る意識もより強くなりました。現場を回っていると『捨てるなんてもったいない、まかないに使いますよ』という声も多く聞かれていますね。」
――若手も含めたモチベーションアップの1つが、年に1 度の社内コンクールです。
湯澤「料理は今年で12回目、デザートは17回目と長い期間続けてきました。もともと料理に関してはスキルアップチャレンジのようにスピード重視のコンクールでしたが、その評価方法では若手が上位に食い込みづらい。年次に関係なく切磋琢磨し合いながらスキルを認めてあげたいとの想いから、評価方法を途中から変更しました。ウエディングメニューは見た目の華やかさも購買意欲に繋がりますし、列席者は料理写真をSNSにアップすることも多いですから、1 次審査はスマホで撮影した写真選考としています。決勝では味やプレゼンなどを評価項目に設定。『3 連覇して殿堂入りしたい』という強いモチベーションで臨むスタッフもいて、料理の品質向上だけでなく、人材育成の面でもコンクールの影響は大きいですね。優勝者の料理は式後のカップル・家族を招く『記念日レストラン』や店舗のランチとして採用しており、年次にかかわらずそのチャンスを用意しています。」
――婚礼調理の魅力を伝えていくために、調理師学校にも定期的に訪問しているようですね。
羽根「就職担当者はもちろんですが、学生の指導にあたる先生への訪問を強化。教員が婚礼を経験していないと、平日に何をしているか知らないケースもありますから。週末に向けての仕込みは重要な作業で、例えば平日があるからこそオマール海老の頭からソースを作れるなど。仕込みの醍醐味をきちんと伝え、新卒採用に繋げられるようにしています。一方で、中途採用は厳しい現状。業界全体として、特にコロナ以降の中間層不在は大きな課題でしょう。結果として各店舗の料理長の負担が増え、若手はキャリアアップを望まなくなるという可能性もゼロではありません。この課題を少しでも解消できればと、もともと当社で勤務しており、出産を機に退職した女性スタッフに声を掛けることで、ママさんパートとして復帰してくれるケースも多くなってきました。スキルも申し分ないですし、若手のフォローもしてくれる頼もしい存在。そうしたメンバーも含め、店舗運営をしっかりしていければと感じます。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月11日号)

