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《Yumi KatsuraのTalk Session》環境問題と貧困問題を解決する商品【桂由美氏×市瀬豊和氏】
オフィス街で、【山櫻】のロゴを記した配送の車を見かけたことのある人も少なくないだろう。名刺、封筒といった紙製品を製造している山櫻(東京都中央区)は、昨年90周年を迎えた。代表取締役社長の市瀬豊和氏が社長に就任したのは17年前。41歳で老舗企業の経営者となった市瀬氏が推進してきたことの一つが、SDGsの取り組みだ。桂由美氏の対談企画【Talk Session】の今回のテーマは、ブライダル企業でも参考となるSDGsだ。
会社全体で取り組み推進
市瀬「桂先生は以前、花瓶のデザインも手掛けていたのですか?実は当社の社長室には、祖父の時代から先生の花瓶が飾ってありまして。先生のサインも入っているものです。」
桂「これまで、40社ほどの企業から様々なデザインを依頼されてきたので、その一つかも知れませんね(笑)。冷蔵庫やベッドなどのデザインをしたこともありましたから(笑)。」
――今回はSDGsの取り組みがテーマになります。山櫻では、以前から会社全体で積極的に取り組んでいますが。
市瀬「当社は、私の祖父が昭和6 年に創業しました。祖父はもともと長野県で紙問屋の丁稚奉公をしていて、その後26歳の時に紙を断裁して加工する会社を始めました。91歳で亡くなるまで社長を務めていたのですが、その後叔父が後を継ぎ、17年前、私が41歳の時に社長に就任しました。名刺ブランドでは恐らく日本一の会社でありますが、現在は売上の65%は封筒です。1990年代になると紙の関連企業は、大量消費される紙製品を作るために森林をどんどん伐採しているということで、環境を壊していると叩かれるようになりました。それもあって名刺に古紙を含有させるなど、環境に配慮した商品制作を開始。最近ではSDGsが注目されていることもあり、環境だけでなく社会平和なども含めて会社全体で取り組んでいます。」
桂「いただいた名刺も、環境に配慮したものなのですか。」
市瀬「バナナペーパーを使っています。バナナというのは一年草で、実を取った後に根こそぎ木を伐採して、そこからまた新しい木が生えてきます。伐採した木は捨てていたのですが、それはもったいないということで、アフリカのザンビアの貧困村の捨てるはずだった木を輸入。茎を繊維にして、福井県に伝わる和紙の技術を使って紙にしています。この紙は環境問題だけでなく、貧困問題の解決にも貢献しているということで、徐々に注目が高まっています。」
―― 一般社団法人エシカル協会の監事も務めています。
市瀬「エシカル協会は、エシカルの商品を紹介していこうという目的で、紙のみならず、食べ物、脱プラの問題などを、消費者に伝えていくという取り組みをしています。業種の枠を超えて、様々な企業と共にプロジェクトを進めています。」
パイナップルのドレス
桂「ウエディング業界でも、バナナペーパーを使用したペーパーアイテムがここ最近人気になっていると聞きました。実物もきれいですね。」
市瀬「紙の中には茶色いバナナの繊維が混じっていたりするのですが、それがバナナペーパーの特徴でもありますし、エコ素材として味が出ていると評価も受けています。」
桂「こうしたアイテムを結婚式で使う時には、きちんとバナナから出来たペーパーだと説明したほうがいいですよね。」
市瀬「一応、小さく表示はしているのですが(笑)。私たちの世代とは違い、若い人たちは地球の未来を真剣に考えていますので、こうした商品に興味を持つ人が増えています。今は小学生、中学生でもエシカル、SDGsを学校でも学んでいますから、よりリアルな肌感として需要が変わってきています。」
桂「実はフィリピンで、パイナップルの繊維を使ったドレスを作ったことがあります。他にも、鯛の鱗を使ったものなど。」
――桂さんのコレクションでは、和紙を使ったドレスもこれまで注目されてきました。
桂「越前和紙の会社と、長くお付き合いしています。和紙のドレスを制作することに、熱心に取り組んでくれています。」 市瀬「バナナペーパーも、越前和紙の工場で作っています。」
和紙職人とともに1枚1枚
桂「2002年には、イタリアのショーで全てのドレスを和紙で作って発表しました。翌2003年のパリコレでも、半分は和紙のドレスだったので、これまでに100点ほど制作しています。コレクションを見て売って欲しいと言う人もいたのですが、水に濡れたら破れてしまいます。素材として丈夫になるための研究をお願いしたこともあって、そこが解決すれば、軽いですし、売れると思うのですが。」
市瀬「和紙に関しては、細かく切ってコヨリのように束ねて糸状にし、それから生地を作ってく技術もあります。そうすれば頑丈なものになるかと。」
桂「そうなのですね。私のブランドのドレスに使う和紙には、例えばレースのように空間が漉いている部分もあります。和紙を漉いている時に型紙を入れて、その部分だけ透けるようにしているのですが、それを一枚一枚作っていきました。また色も漉いている工程で付けていく。デザイナーと職人が一緒になって、その都度調整をしながらです。」
市瀬「それは大変なチャレンジだったと思います。色、柄の透け感のこだわりを含めて、デザイナー、職人共に相当なチャレンジだったかと。しかし2002年から和紙を使ったドレスを発表しているというのは、大分進んでいますね。」
桂「デザイナーは日ごろから珍しい素材、テクニックを探しています。そのためにもバナナペーパーと和紙との違いなどが分かれば、新たなドレス制作として面白いかと思っています。」
市瀬「既存のバナナペーパーには、実は20%程度しか繊維を入れていません。含有率を増やしていけば、繊維も浮き出てきて、特徴も際立ってくるかと。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、3月11日号)

