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キーマンに聞く

《地方ブライダル企業の地域密着戦略》高価格帯のロケフォト撮影【KAKEHASHI 代表取締役社長 寺田 英史氏 チーフスタイリスト 織田 小春氏】

《地方ブライダル企業の地域密着戦略》高価格帯のロケフォト撮影【KAKEHASHI 代表取締役社長 寺田 英史氏 チーフスタイリスト 織田 小春氏】

静岡市の式場サンタアムールの展開する、ロケフォトブランド【ウップス‼ブライダル】が好調だ。29万7000円からの価格帯ながら、今年は120件の撮影を見込んでいる。その秘訣としてブランドの集客、接客、当日コーディネートまで全てを取り仕切る、美容師でもある織田小春氏の存在は大きい。フォト顧客にも衣裳の試着、ヘアメイクリハーサルを行い満足度を高めている。運営するKAKEHASHI(静岡市葵区)の寺田英史社長と織田氏が語る、事業成功のポイントとは。

別ブランド展開の経緯

――フォト事業は、コロナ禍からスタートしたそうですね。

寺田「コロナで会場の結婚式施行がなくなり、売上を確保する目的で2020年7 月にフォトプランを開始しました。チャペルやバンケット、さらに周辺の森の中で撮影する内容で、受注もどんどん増えていきました。一方で結婚式についても、中小人数帯をターゲットにしたことで徐々に回復。一日一組貸し切りを打ち出しているため、結婚式が戻れば撮影に会場を使えなくなります。そこで2023年1 月に、会場周辺ではなくもっと外で撮影するロケフォトブランドとして【ウップス‼ ブライダル】を立ち上げました。」

――会場名ではなく、別のブランド名で展開をした理由は。

寺田「もともとあったフォトプランは、会場名で展開しながら最初は4 万9800円で販売していました。スタート半年で撮影も70件を超え順調でしたが、その後ロケフォトに変更する段階で、そのままだとどうしても低価格の展開しかできないと考えました。写真のクオリティに対する評判が良く、撮影件数も毎年伸びていた中で、もっと単価を取れると判断し、それまでとは異なる新たなブランドを立ち上げました。内容についても、以前のように会場周辺の森での撮影ではなく、100キロ圏内であれば希望のところで撮影するという形に変更。結果として単価も洋装1 点29万8000円、和装33万円、和洋装55万円と高い水準に振り切れました。」

――このロケフォトの運営は、織田さんが一手に取り仕切っているそうですね。

寺田「美容師である織田は別の式場でヘアメイクを担当していたのですが、以前からフォトウエディングをやってみたいという思いを持っていました。コロナで結婚式もできない状況下、当社でフォトプランを作っていくにあたりジョインしてもらったのが入社の経緯でもあります。ヘアメイクもできるという強みを生かし、フォトに関しては集客ブランディングから接客、当日のアテンドまで全てを一気通貫で任せています。」

織田「フォトに関しては、新規接客も私で対応しています。会場の結婚式のヘアメイクには携わらず、フォト専属という立場ですね。ちなみにカメラマンもフリーランスの決まった一人に任せていて、ヘアメイク・スタイリストも私一人なので、撮影する写真が担当する人によってブレることはないですし、集客面でもインスタ上の世界観が統一されるというメリットになっています。」

――単価について、静岡でもかなり高額と考えられますが。

織田「内容としては、どのプランにも衣裳、小物、さらにレンタルブーケも付いています。オプションでアップセルするフォトプランも多い中、当社の場合パックに全て入っているため、これ以上は上がりませんし、2 人が何かを用意する必要もありません。また差別化のポイントとしては、私が美容師である強みを活かして、ヘアメイクリハーサルも行っています。結婚式と同じような対応によって、満足度を高めています。あとは片道100キロ圏内の範囲であればどこでも撮影対応しているため、静岡の海、山、川など様々なシーンの撮影ができるということで喜ばれています。」

100キロ圏内なら対応

寺田「静岡のロケフォトの相場は、18万円~20万円程度です。その点、当社のプランは高額ではあるものの、もともとナシ婚層をターゲットにしてきたことで、結婚式を挙げるよりも安いという感覚で受注に至っています。実際にナシ婚層は、全体の70%を占めています。また撮影件数も毎年伸びていて、昨年は約100件、今年は120件を見込んでいます。」

――100キロ圏内どこでもというのは、アテンドも大変かと。

織田「撮影時間は2 時間半という区切りは設けていて、その時間内、100キロ圏内であれば何ヵ所でも対応しています。人気のロケスポットは、静岡市から1 時間の場所にある森の中、その後に沼津の海で撮影するコースです。インスタでも数多くアップされているので、同じような写真を撮りたいというカップルは多いです。それ以外にも、例えば新しくオープンするコストコで撮りたい、茶畑、富士山の見えるところ、2 人の思い出の場所、自宅でという様々な要望があり、100キロ圏内であればどこでも対応しています。インスタでも人気になっているスポットを提案するほか、2 人の希望するキーワードをもらって、ここはどうですかという案内もしています。カメラマンも、色々なロケーションを知っているため、希望に合わせて探してもらうこともあります。」

――ドレスも購入し、フォトの顧客に提供しています。

寺田「2023年10月に、付き合いのあった衣裳店からドレスを購入し、会場から離れた市内にサロンもオープンしました。その後も買い足していき、現在は100着を揃えています。和装希望の場合のみ、提携する衣裳店で対応。ドレスを結婚式のカップルに提案することもありますが、基本はフォト用です。ヘアメイクも織田で対応しているので、カメラマンと和装以外は内製化を実現していて、利益率を高めています。」

――購入するドレス選びにも、織田さんのスタイリスト経験が生きているようですね。

織田「フォトに関しては結婚式で着用されるお姫様のようなものより、スタイリッシュなドレスが人気です。少し個性的なドレスを選びながら、ヘアパーツやイヤリングなどの小物にもこだわり、喜ばれるオシャレなコーディネートを重視しています。またヘアメイクリハーサルに合わせて、ドレスも試着して決めてもらっています。安心してもらうサービスが、ブランドの人気を支えています。」

寺田「結婚式の対応と同じで、事前にドレス選び、フィッティングをして、ヘアメイクも事前カウンセリングを行いリハーサル。それが出来るのも、結婚式の現場を経験してきた織田の存在あってこそで、新しいドレスを購入する時にもトレンドを押さえながら、今の世代に合ったものを選んでくれるのは大きいですね。ちなみに、ロケフォトで使うためドレスが破損した場合には、お手入れの出来るスタッフもいます。」

【フォト婚式】もリリース

――ロケフォトに対する評価から、結婚式に繋がるケースもあるそうですが。

寺田「ウップスのインスタを見て、サンタアムールでの結婚式を決めたという人もいて、そうしたケースでは前撮りを絶対にやりたいとなります。またナシ婚層の場合、撮影時に家族と一緒に来ることも多い。そうした場合、チャペルでの挙式、家族での写真撮影、さらに会食も提案しています。」

織田「流れとしては、ヘアメイクだけを先に対応し、会食をしてから、着替えてチャペルで撮影。その後ロケ先に行くようにしています。」

寺田「こうしたニーズを受け、フォトウエディング以上、結婚式未満という定義で【フォト婚式】を商品化し、商標登録もしました。写真に重きを置きつつ、せっかくだったら挙式も行いたい、会食をしたいという声に対応するものです。チャペル撮影+ロケフォト+会食と、チャペル挙式+チャペル撮影+ロケフォトの2 つのパターンのプランを用意しています。」

――集客に関しては、インスタでの対応ですか。

織田「これまではインスタ運用、インスタ広告のみで集客していて、現在公式アカウントのフォロワーは5000人になっています。問合せについてはインスタのDMではなく、LINEに誘導しています。インスタのDMだとただ料金だけを聞きに来る人も多かったため、LINEのチャンネル登録をしてもらい、そこから連絡を受けることで受注率を高めています。」

寺田「2 ヵ月前から、他式場で結婚式を実施する人向けに、前撮り用の別ブランドも立ち上げ、フォト関連のサイトでの告知も始めました。ウップスはナシ婚層ターゲットであるため、これまで前撮り層は非常に少なく、ただそこに売上げの伸び代があるのも事実。もっとも29万8000円という料金は、結婚式の前撮りとしては高額です。少なくとも10万円台に抑える上でも、別のブランドにしてPRを行っています。」

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、4月21日号)