LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

連載25《自社運営施設では成約率60% 中小会場の成約率UP》日程の希少性以前に希少価値を積み上げ【KAKEHASHI 代表取締役寺田 英史氏】
年始商戦に向けて今から準備しておくべきこととして重要なのは、「希少性の伝え方」です。これは単なる差別化ではなく、いかに自社の会場やサービスが“他では手に入らない特別な体験”であるかを、新郎新婦に実感してもらうことにあります。他会場では実現できない価値を提示できなければ、「なぜこの会場でなければならないのか」という理由が生まれず、成約の決め手にもなりません。
「希少性」は、単に日程や特典だけに依存するものではありません。それだけでは顧客の心には響かないことが多いのです。なぜなら、日程や特典の限定性を訴える前に、「この会場でしか得られない価値」を感じてもらう段階こそ大切だからです。
まず会場そのものの希少性や、商品・サービス・スタッフなどの独自性を伝えていきます。「この場所でしか叶えられない演出がある」、「このスタッフだからこそ提供できる体験がある」という価値を積み重ね特別感を感じてもらえないと、「別に今日じゃなくてもいい」、「他の会場でもできる」と判断されてしまうわけです。
特典の設計においても、単に「当日成約特典」を並べるのではなく、来館時期や検討状況に応じて柔軟に変化させることは重要です。たとえば、「この時期に来館された人限定の特典です」、「1 軒目に見学した人に用意しています」といったように、条件そのものにストーリーを持たせることで納得感を生み出せます。また、「今日のフェア限定の特典です」という提示も、“今この瞬間”の特別感を演出できます。
さらに、成約特典を設定する際には、料金面での値引きだけに頼るべきではありません。価値のある特典でなければ、「なくなってしまうのが嫌だ」と感じることはありません。人は“失う痛み”には敏感です。だからこそ、本当に魅力的な特典を提示することで、「この機会を逃したくない」という心理が生まれます。そのためには、まず顧客が欲しいと思える要素を、的確に見極めることです。仮に館内案内で噴水ショーを気に入ってくれた場合は、それを当日成約特典に設定する。あるいは、1 軒目で来館したカップルには「初回来館特典」として、最も心を動かした演出を組み込む。こうした柔軟な対応が、「この会場で決めたい」と思ってもらえるきっかけをつくります。
結局のところ、商戦期に向けて必要なのは、「即決のための仕掛け」を作っていくことではなく、「即決したくなる理由」を育てていくことです。日程や料金の希少性を強調する前に、まず会場・サービス・人・演出といった本質的な魅力を磨き上げ、それを丁寧に伝える。その積み重ねこそが最終的に「ここで挙げたい」と思わせる最大の要因となります。ブライダル業界では現在も「即決特典」、「当日限定割引」は主流になっていますが、これからの時代は、もっと深いレベルでの希少価値づくりが求められています。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、11月1日号)

