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キーマンに聞く

連載2:《会場の業績アップ事例》接客の中に宿るポジショニングの真価【ニューバリューフロンティア 執行役員 森房 知史氏】

連載2:《会場の業績アップ事例》接客の中に宿るポジショニングの真価【ニューバリューフロンティア 執行役員 森房 知史氏】

マーケティングのポジションはリーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4 つに分類されそれぞれの戦略があります。もっとも多くの式場は、自ら気づかぬうちに「フォロワーの戦い方」をしています。
マーケティングや広告では独自の世界観やホスピタリティを打ち出しているのに、いざ見積り提示の場面になると、「他社が150万円引いているからうちも同じようにしよう」と、無意識に競合の価格設定に合わせてしまいます。私たちが業績改善を支援する会場では、ポジショニングの明確化が最重要と考えて、サービス導入時にマーケティングセッションを実施しています。チャレンジャーやリーダーを追いかけるのではなく、「自分たちは誰に、どんな価値を、どの立場から提供するのか」を徹底的に洗い出し、ニッチャー戦略への移行を促していきます。
ただ広告戦略や打ち出しではニッチャーの立ち位置を取りながら、営業現場ではフォロワーの体質が残ってしまっているケースは後を絶ちません。その象徴が接客時の「見積り提示の瞬間」です。
ある会場では、見学時に「スタッフのホスピタリティ・温かさ・想いに寄り添う結婚式」を謳いながら、最終の提示では「他社も50万円割引なので、うちも50万円割引します」と伝えていました。本来の打ち出しに共感して来館した顧客にとって、過剰な値引きは違和感を生みかねません。「なぜその金額なのか」、「どういう背景でこの割引が適用されるのか」が説明されないことで、安心感や納得感は損なわれるのです。加えて、1項目あたりの価格を下げるために商品点数を増やす、サービス料の対象範囲を広げるなど、見積書自体が複雑化してしまうことも。これは結果的に、顧客との信頼構築の機会を損ねてしまいます。
私たちは、「ポジショニングを広告や集客施策だけで終わらせてはならない」と考えています。大事なのは、接客や見積提示といった“対面の現場”においても、その戦略が体現されていることです。別の会場では、あえて高額割引をせず、「私たちは○○の価値にこだわっているため、すべての結婚式をこのプランでご案内しています」と伝えるように変更しました。最初はスタッフの不安もありましたが、結果として「価格で選ばれたのではなく、価値に共感して契約したい」という顧客が増え、成約率は前年度比で10ポイント近くプラスに改善しました。

≪今回のワンポイント≫
『価格で選ばれるか、価値で選ばれるか──すべてはポジショニングの一貫性にかかっている。』

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、6月1日号)