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即決なしのポリシー【ノバレーゼ 代表取締役社長 荻野洋基氏】

即決なしのポリシー【ノバレーゼ 代表取締役社長 荻野洋基氏】

 緊急事態宣言明け以降、ノバレーゼ(東京都中央区)が好調だ。特に集客において、11月はコロナ前も含めて過去最高の数字を叩き出した。様々な施策はもちろんのこと、徹底したユーザー目線を重視した安心感の提供が大きな要因になっている。即決はしない、新規は2時間、いつでも来館OKの対応を推進する、荻野洋基代表取締役社長にコロナ以後に求められる結婚式場としての姿勢を聞いた。(今号は前編)

結婚式の価値を守る姿勢

――足元の数字が、好調に推移しているそうですね。

荻野「緊急事態宣言が明けて、10月の来館はコロナ前の110%に達し、11月に関しては、これまでを通じて過去最高を記録しました。コロナ禍で既存メディアだけに頼らず、インスタなどのSNSを活用して集客をしていこうという方策を各店舗でも積極的に進めてきたので、その結果が徐々に出てきたと考えています。まだまだ多額の集客コストを使えないという制限がありながら、これだけ順調に集客できているというのは今後に向けて期待もできるかと。」

――人気の会場は2019年比で100%程度に戻ってきているとも聞きますが、それにしても過去最高とはすごいですね。

荻野「特にアマンダンが好調です。例えば厚木の店舗も、今年の₅ 月にはこれまでにない施行数となっています。コロナの影響もあり、リゾート感、自然豊か、完全貸し切りができる、窓があって開閉も可能といった会場は好調ですね。」

――ノバレーゼはフォトに関しても低価格に引きずられないなど、コロナ過でも自らのスタイルを維持してきたかと思います。こういう時期を経たからこそ、ノバレーゼの結婚式はこうだということが改めて明確になったとも考えられませんか。

荻野「今回一番大きかったのは、自分達の存在意義を改めて認識できたこと。フォトについても、もともと始めたきっかけはコロナで新郎新婦がキャンセルせざるを得なくなり、直近であれば実費を頂くわけです。そういう人たちに対して何かできないかと考えた時に、写真だけでもと現場から声があがって、それならばキャンセル料に充当してフォトをしようと。ただ通常の結婚式を望む人のことを考慮すれば、単に安くするのではなくきちんと適正価格でやってもらうべきだと考えました。」

――フォトも競争が激化し、低価格化が加速しています。

荻野「安く多くの受注を獲得するのではなく、スタッフがきちんと準備をしているわけですから、しっかりとノバレーゼのブランドを維持したものを提供しています。例えばドレスを持込みOKにして料金も10万、20万円程度にしてしまえば、結果として同じ会場で結婚式をする新郎新婦の価値さえも落としてしまうことになりかねない。そうしたことからフォトプランのスタンダードは平日限定で54万2300円、ドレスは持込み不可ですが結婚式と同様に20%OFFにしておりトータル100万円程度となっています。これからは本物の価値を求める人が増えると思っていますので、安かろう悪かろうではなく、ノバレーゼの結婚式の価値、ドレスの価値を大切に守ることが必要です。」

――新規事業などは。

荻野「当社の場合は毎年一回社内で新規事業の提案を受け付けていて、コロナ禍でも続けました。会社を起こすというところまではいきませんでしたが、今年は提案された新規事業の中から、いくつかチャレンジしたいものもあります。これは以前から考えていたのですが、研修を外部に提供してみるのも面白いのではと。プランナー研修以外にも、ブライダル業界に捉われないプログラムも持っていますので、それを表に出して展開していく。新規事業のプロセスとしていきなり会社を作るリスクを取るよりも、まずは事業部としてやってみる。そこで成功したら法人化。新規事業については、どんどんチャレンジをしていきたいですね。」

――大手ブライダル企業によるノウハウの外販は、企業色があると敬遠されがちでしたが、最近は少し変わってきていて、大手の持っているノウハウを自社に組み込んでいこうという流れが出てきている感じはします。

 

ノウハウを共有する時代

荻野「当社のグループであるマーケティング会社のDoは、今でもノバレーゼ内の仕事をやってくれています。同時に外部の企業からも、評価を受けている。恐らく自分たちだけが良いという時代はとっくに終わっていて、今はノウハウを共有することで、業界全体が良くなることが大切。私自身も他の会場を見学させてもらった時には、良いものをどんどん盗みたいと思っていますし(笑)、今後はそういう流れがどんどん加速すると思います。例え隣の会場であっても、そこが良くなって集客が増えていけば、当然自社の施設にも来てくれますから全員がハッピーになります。」

――昨年末に発表したビジネスサポート事業も、中核は共同購買ですからむしろ自社施設に近い会場の方がメリットは大きいです。話は変わりますが、コロナ禍の厳しい状況であっても、基本スタンスである即決をしないというポリシーを守り続けてきました。

荻野「予約をした新郎新婦に対して、一番始めに来館して欲しいと伝えることも一般的ですが、これはつまり他の会場に即決されてしまうことを防止するため。そういったことが当たり前になっているのは、非常に危機感を感じます。実際に経営者同士で話をしていると、『とにかく決めろ』、『即決しろ』といった考え方とは正反対だったりするのですが、現場ではそういうことがまかり通っているのも事実です。」

――トップの考え方を聞くと、本当に結婚式を大切にしていることが感じられます。それでも強引な契約が横行しているのは、数字を追っていけば結局そうなってしまうのかと。

荻野「ただ現場が強引になっているということは、経営者をはじめ経営陣にもそうした側面がどこかにあるのだなとは思っています。本来の私たちの目的は、誰かを笑顔にすることや、幸せな時間を作っていくことであるはず。ところが目的が数字、売上になってしまえば、とにかく契約を取るためだけに現場も必死にならざるを得ない。今回のコロナを機に本来の目的に立ち返れるか、それとも目先の自分たちの都合を優先する姿勢から変わらないままなのかという点で、今後は大きく二極化が進むのかもしれません。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1・11日新春特大号)