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ビジネスメリットを生み出す都市型店舗【エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏】

ビジネスメリットを生み出す都市型店舗【エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏】

 都市型店舗であるがゆえに、コロナ禍のダメージもその分大きかったエスクリ(東京都中央区)。とは言えその立地だからこそ、業界外企業に対して大きなビジネスメリットの期待も与えている。同社がSBI、TKPとの資本業務提携を発表したのは2020年。あれから3年半が経過しそれぞれの提携事業の形が作られてきていて、今年は少しずつシナジーを発揮していく1年になる。渋谷守浩社長自らの決断で蒔いてきた種が、どのように花開くのか。

MICE需要が伸びる

――昨年1 年を振り返ってみて、いかがでしょうか。

渋谷「当社は駅近のビルインという超都市型の展開であり、その分コロナの影響をもろに受けました。5 月の5 類移行によって、もう少し戻りは早いだろうと想定していましたが、回復という面では少し苦戦しましたね。もっとも決算に関しては、これまでも第3 四半期以降に売上・利益を伸ばす追い込み型でもありましたので、通期で見れば、ディスクローズしている数字に対して想定通りという見方をしています。」

――ビルインの都市型という立地はコロナの影響が大きかった一方、MICEなどの取り組みという点ではメリットも大きいと考えられます。

渋谷「昨年の忘年会シーズンから、都市型のポテンシャルが発揮されてきています。ユーザーの利便性に対する意識は徐々に持ち直していますし、さらにティーケーピー(以下TKP)との提携もあって宴会の数字は大きく伸びました。コロナの5 類移行で宴会をする、パーティーをする、人が集まるという意識が戻ってさえくれば、当社の立地は間違いなく強みになりますから。とは言え、コロナ禍からの回復というステップバイステップの幅は、他社と比較しても広いと考えています。まだまだ都市型店舗の後遺症はある中で、それを打破するためにIT、AIなどこれまでとは違う分野で攻めていく取り組みを、テクニカルに動いていかなければなりません。いわば、しっかりと地に足をつけた再生プロジェクトを進めていく。今大事なのは、ショートで見るより、ロングで見ていくことで、それこそ5 年後、10年後にどのような立ち位置にいるかを重視しています。」

渋谷「何より、今すぐに慌てて走り出して、後で帳尻が合わなくなるのが一番怖い。それならば、今は基礎となる四股を踏んで足腰を強化しておく。だからこそ、以前より決断に対しては慎重になっています。例えばレストランやホテル事業に関しても、ブライダル業界の他社に遅ればせながらも今着手することは果たして正しいのか。数字を作るために慌てて始めるのではなく、今は決算の見た目は悪くても、本業であるウエディングを強化するために四股を踏むべきではと。そこは100年企業の4 代目という経験も踏まえて、すぐに動かないということも必要だと考えています。」

出店のタイミングを読む

――そうなると、今後の成長のためには新規出店がカギになってくると考えられます。

渋谷「来期以降は、チャレンジングな決断もそろそろしていかなければいけない年になってきます。もっとも出店コスト面を見れば、果たしてタイミングとしてどうなのか。分かりやすく言うと、閉めるのであれば閉めることに特化する。開け出したら開けるに特化すべきですから。現状は、どんどん出店していくタイミングなのかどうか。建築業の経営者の目線で言うと、円安状況では100円で出来ていた建物が150円かかってしまいます。仮に為替が今年の春に130円程度になれば、150円かけていたのが130円で出来るわけです。為替の動きの今後の予測も必要ですし、あとは大阪万博のような国家的なビッグイベントが控えている時には、建設はあまりすべきではありません。建築会社の立場からすると、忙しくて仕事が受けられない状況ほど、別の仕事を依頼されれば見積もりは高くなるのも当然です。そうしたことも踏まえて、建築のプロとして出店するタイミングは誰よりも敏感ですし、自分のプロ感を信じてしか動きません。」

――建築コストの落ちてくるタイミングこそ、出店のチャンスということですね。

渋谷「このまま上がり続ければ、家にも住めないし、多くの商売は合わなくなります。世の中はそんなことを許さないわけで、そうなるとコストは自然と下がってきます。またビッグイベントの需要が落ち着き、建築の絶対的な仕事量が減れば人は余ってくる。実際に万博の駆け込みによって大工の日給は3 万5000円程度にまで高騰していることもあって、これまで人材不足だった業界に多くの若者が入ってきていますし、さらに建築会社も増えています。今は万博の特需で潤っている彼らも、それが落ち着けば仕事も少なくなり、当然受注費も下がってきます。また危険な作業や作業車のオペレーターのロボット化も進んでいますから、それも建築費抑制に影響してくる。これは私自身が培ってきた経験でもあり、経験をベースに決断をしていくということですね。ただそれは時間でしか証明できない。実際に社員からは、新規事業へのチャレンジや新規出店を進めたいという意見も出てきます。理想は全員で一緒に四股を踏むことなのですが、仮に四股を踏むことに疑問を抱いているスタッフがいたとしても、そうした人材のコントロールを含めて、私の仕事だと思っています。もっとも、今年はチャレンジングな動きを、少しずつ始める年になることは間違いありません。」

詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1-11日新春特大号)