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キーマンに聞く

2カメ以上の受注率が約30%に達する【東京會舘 常務取締役 営業本部副本部長 星野昌宏氏】
2022年4月からの来期についても、すでに90%が埋まっている国内屈指の人気施設である東京會舘(東京都千代田区)。コロナ禍にもかかわらず値上げを実施しながら、受注には全く影響もなく、結果として単価が上昇している。常務取締役の星野昌宏氏に聞いた東京會舘の強さの秘密を、2号にわたって紹介していく。前編となる今回は、単価アップを成し遂げる商品開発のポイントについて。
オーダータキシード開始
――少人数による低価格化が厳しい状況のブライダルマーケットですが、東京會舘はそうした流れにまったく巻き込まれていないようですが。
星野「コロナ禍でも、ゴルフ場に行く人が増え、時計の値段も跳ね上がっています。百貨店の外商の人にもそうした話を聞いて、婚礼でも同じようなことが考えられるのではと、試しに衣裳と花の接客スタイルを変えました。新郎新婦の性格、勤務先などを把握した上で、価格云々ではなく高付加価値のものを提案していく。花に関してもフローリストの指名制度を始めたところ、メインテーブルで80万円、各卓もそれまでの倍の料金になる例が出ました。人に応じてきちんと提案することで、大きく単価が高まりました。」
――成約者向けフェアで、プロモーションしたそうですね。
星野「毎年8 月に実施していて、昨年も宣言下ではありましたが開催しました。成約者対象で500組、約1000人が来場。そこでフローリストごとにテーマを決めて装飾し、名刺とパンフレットを置いて案内してもらいました。全ての顧客にそれを勧めるというわけではなく、指名をしてでもこだわりたいという人にきちんと商品を提案するという考えでしたが、結果として受注に至っています。」
星野「衣裳も同じような考えで、昨年は女性のオーダーだけでなくタキシードのフルオーダーを提携店にお願いしました。TAKAMIの場合は、オーダーしたタキシードを、その後ラペルを変えてスーツにする使い回しの出来る商品も持っていたことで、私も自ら購入し接客時に新郎新婦に説明しています(笑)。一方でハツコエンドウは、実際にVIPのタキシードオーダーを数多く手掛けている経験もあるため、フェアの際には担当者に来てもらい採寸をしてもらっています。熟練スタッフの採寸はやはり雰囲気が出ますから、本物志向の顧客には刺さるわけです。提携企業ごとに選択肢を分けていて、結婚式後にスーツに変えられるものがいいという人、銀座の老舗のテーラーを望む人の両者への提案が出来るようになっています。」
――パートナー企業としても、こうした取り組みによって売上が高まることは大きなメリットになりますよね。
星野「これまでの実績もあって、パートナーシップ関係が年々深くなってきており、例えば当社の顧客に合った接客員に入れ替えてもらうようなことも進めてきました。東京會舘で結婚式をする新郎新婦は落ち着いた人、保守的な人が多いですから、より安心感を与えられる接客員を入れてもらっています。また各社には、共同開発のオリジナルドレスも依頼しています。型物のシェアを分析すればどんな雰囲気の新郎新婦が多いのか分かりますから、それをもとに望まれているものを制作し平均単価は全体で10万円程度アップしました。タキシードに関しても、これまでゼロに近かったものが、徐々に定着してきています。」
ベーシックでも安心感
――一方で、見積もりに関して、成約後に大幅に上げるような営業とは一線を画しています。
星野「もともと開業初年度には様々な顧客が混在していて、お金をかけたい人、初期の見積もりのままでやりたい人がいました。実際に苦言が出てくるのは初期の見積もりでやりたい人の方だったことで、花に関しても思い切ってベーシックなプランであっても意図的に盛り付けを増やしていきました。新規の接客で会場を見たときに、これはいくらかとリアルに聞かれる。ベーシックの値段でも華やかになることが分かれば、安心感に繋がりますから。つまり、お金をかけないと寂しくなるというような見せ方はやめようと。ベーシックなものでも十分に安心できるが、よりお金をかければもっと良くなるという見せ方を重視してきたわけです。これは集客効果もあり、華やかな装飾がSNSに掲載されることで、はね返ってきています。」
――初期見積もりの内容に対する批判は、ブライダル業界全体の課題でもありますからね。
星野「仮に初期見積もり通りにやりたいと言われた場合でも、スタッフが自信を持って大丈夫と言えるかどうかかが問われているのでは。最近、顧客が様々な会場に見学に行くほど、見積もりに対しての拒否反応や疑心暗鬼が深まっていると新規接客に出るたびに感じます。当社としては、初期とは言え実態にそぐわない見積もりは避けようという方針を取っています。スカスカの見積もりは、不信感を広げていくだけですから。よりいいものを購入してもらうためにも本来は一番初めが大切であり、当社でも結果として平均で100万円前後は高まってはいるものの、初期見積もりに対する安心に基づいた納得感の上でのアップになっています。」
星野「開業当初は苦言をもらうことも多かったのですが、2020年のコロナ直前から私自身が新規接客に入るようになって、連携しているT&Gともディスカッションを重ねてきました。例えばゲストハウスの場合は施行当日が重要というところも多いのですが、当社に来る人たちは打合せのプロセスが凄く大事。1 年半先の当日までの間に、衣裳決めや打合せなどのプロセスがあり、その流れの過程で、ちょっとした信頼が失われれば結局最終的には不満足だったとなります。これは非常にもったいない話で、金額の話に関して何かしら失望されることがあったのだから、それならば初めから正直なスタンスで行くのは当然のこと。結果的にその方が単価も上がり、満足感も高まっていきます。」
――結果として単価が上がるというのが、まさに理想的です。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1・11日新春特大号)

