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1円単位で支出を見直しコストカットを実現【CRAZY 代表取締役社長 森山和彦氏】

1円単位で支出を見直しコストカットを実現【CRAZY 代表取締役社長 森山和彦氏】

 「12月まで施行できない最悪のシナリオを念頭に、コストカットと売上の補填を考えている」。そう語るのはCRAZY(本社:東京都墨田区)の代表取締役社長・森山和彦氏だ。新しい生活様式に合わせた企画力の重要性や業界外へ発信する意味など話を聞いた。

――プロデュース事業のCRAZY WEDDINGと、昨年オープンした初の自社会場・IWAIOMOTESANDOの施行状況は。

森山「3 月の段階でともに40%が延期。4 ~ 5 月にかけては100%、つまり両サービスで施行は1 件もなく苦しい状況でした。6 月も90%が日延べとなり、大きな打撃を受けています。9 月は受注のうちすでに15%が延期を決定し、秋口まで影響が出始めています。一時期と比較してコロナの波は少し落ち着いてきたように見えますが、今後の感染状況、第2 波の襲来があるとしたら『やっぱり延期をすべきでは』というカップルも出てくるでしょう。5 月中旬時点の延期状況が、さらに悪化してくる可能性は否定できません。」

――森山社長自身の経営者としての今後の予測は。

森山「個人的な希望としては、8 月以降は受注のうち25%が実施できたらと考えていますが、これはあくまでベストなストーリー。正直なところ、やはりそのシナリオは難しいのではと思っています。現実的に考えて、9 月以降にようやく顧客の4 分の1 が予定通り施行するようになると想定。資金繰りに関しては、12月まで施行がない最悪の状況を念頭に入れ準備を進めてきました。」

――数千万規模のコストカットも実施しました。

森山「仮に12月までキャッシュが入ってこないとなれば、どう生き残っていくかを考えなければならない。簡単に言えば代わりとなる追加の企画で売上を生み出すと同時に、“無駄”を削っていく必要があるわけです。まず着手したのが広告費の削減。SNSなどを中心に集客を図ってきましたが、ここを大々的に見直しました。合わせて3 月からは両国本社を基本的にクローズしたため、福利厚生の一環としてスタッフに毎日用意していた自然食ランチも一旦停止。当社は企業カルチャーの創出に注力しており、これまでも頻繁に社内イベントを開催してきましたが、これもストップしました。感染予防が第一の目的ですが、現状を鑑みるとコストカットの意味でもイベントを中止にする必要があったわけです。細かいですが、Gmailアカウントも半分に削減しましたね。要するに、1 円単位で全てを見直し、とにかく最悪のシナリオを頭に入れたコストカットを。売り上げに大きく結びついていなかった“無駄”を見つめ直せたのは、ある意味いい機会だったと捉えるようにしています。」

――プロデュース事業のCRAZY WEDDINGは、三密を避け換気のもと開催できる、屋外施行のイメージも大きいかと。

森山「とは言え天候を考えた時に、やはり屋内を希望するカップルが多い。野外のパーティを予定していても当日悪天候であれば、必然的に室内での開催となりますから。IWAIを除くプロデュース事業の施行は、年間250組。大手媒体が発表している1 件あたりの平均施行金額より単価も高かったため、そこの穴は大きかったのは事実です。一方で今後また施行がスタートしたら、さらに単価を高めていく必要があると考えています。納得して購入してもらえるよう、当社ならではのコンセプトやオリジナリティを前面に出していきます。とはいえプロデュース事業は賃料が発生しないので、コロナ禍においては“救い”になった面もあると言えるかと。」

――新しい生活様式の発表もあり、今後はコロナとうまく付き合いながら、式を開催していくことが求められています。

森山「例えば飛沫感染を防ぐアクリル板。『そんなの結婚式にそぐわない、無理だ』という意見もあるかと思いますが、もし本当にこれが必要とされるのなら、導入を視野に入れたクリエイティビティが求められるかと。例えばどんな素材なら会場にマッチするのか、どれくらいの長さだったらゲストが心地よく過ごせ、かつ安全なのか。端から無理と諦めるのではなく、結婚式を創っていくプロとして、どう提案していくかの創造力が求められるでしょう。もし仮にマスク着用が必須なのであれば、例えば新郎新婦がゲストのマスクを用意するような企画に結び付けるなど。新しい生活様式に則り、結婚式全体をどう“デザイン”していくかは、私たちのクリエイティビティ次第だと感じています。」

――施行が少なくなるなか、減少した分の売上を補填する新サービスも開始しました。

森山「5 月20日にリリースしたのが、お祝いの機会をWeb上で創出していく『Congrats』のβ版です。コロナ禍において大切な人に寄り添いお祝いしたいという気持ちが高まっている一方で、物理的に大人数が1 ヵ所に集まれない現状。結婚式の本来の意味でもある祝福や感謝の想いを伝えていく機会を設けたいと、約1 ヵ月間の急ピッチで準備を進めていきました。」

――具体的な内容は。

森山「簡単に言うと、全ての準備がオンライン上で完結できる新しい結婚式。当日はカップルと家族や友人がWebで繋がり、オンライン上で感謝の気持ちを交わすなどします。コロナ禍においてなかなか準備に時間が避けないケースを始め、経済的な負担に関してはカップルだけでなくご祝儀を払うゲストも同様でしょうから、気軽に開催できるお祝いの形としてローンチします。プランは3 つ用意しており、1 番リーズナブルなものであれば新郎新婦は無料で利用可能。さらに上の2 つのプランは当社プロデューサーが介在し、それぞれ11万、38万5000円となります。合わせて新郎新婦がご祝儀の代わりとなるお祝い金をサイト上で設定して、ゲストがWebで支払いをする流れなのですが、その決済手数料の10%分も当社の売上になっていく仕組みです。食事をゲストに配送するオプションも提案していくので、ニーズに合わせて単価アップにも繋げていければ。これまでと大きく異なる新しいサービスではありますが、実際にサイトオープンから1時間で『興味がある』と問合せが舞い込みました。トライアルで実施したカップルは、150名のゲストがWebから参加。『IWAIのお祝いごはん便』も利用してもらえ売上にも繋がり、新しい記念日の過ごし方を見ることが出来ました。」

――コロナ禍で苦境のブライダル業界にとって、“応援者”を増やすことが重要との考えです。今後は業界内においての企業間をまたいだ取り組みや、業界外への発信も加速していきたいそうですね。

森山「創業から丸7 年が経ち、社名の通り業界内では“異端児”のイメージを持つ人も一部ではいたかと思います。とは言え業界との関りを持ちたくないわけではありませんし、昨年自社施設・IWAIをオープンしたことで、ブライダルで活躍している他企業とようやく同じステージに立てたとの実感もありました。先日BIAの野田専務理事とも話しましたが、やはり企業の枠を超えて全体でこの苦難を超えていくべきだと。実際にこれだけの数が延期になっている現状であれば、キャッシュが回らない企業が出てくるのは当然でしょう。その結果、業界全体のイメージがマイナスになり、風評被害にあってしまうことも考えられます。TwitterなどのSNSでは一気に話題が広まるわけですから、そうなる前に業界をサポートしてくれる“応援者”をたくさん作っておくべきかと。ブライダルの苦しい状況は業界内にいれば百も承知ですが、ではフィールドを一歩出たらどうか。異業種からしてみれば、今ブライダルがどれだけ苦しいかは、なかなか伝わっていないのです。これまで創設者の山川咲が様々なメディアに登場する、ある意味“広告塔”のような存在でしたが、彼女は今春でブランドを卒業。業界外に発信していく役目は、私の方でしっかりと引き継いでいく予定です。幸いにも他業種で活躍する経営者の知人などもいるため、いかにその人たちにもブライダルの現状、これからの結婚式の在るべき姿を知ってもらえるか。まずは取り組みの1 つとして、noteでの発信をスタートしました。1 人でも多くの人に閲覧してもらい、『婚礼業界はやっぱりすごいよ。コロナと戦いながらいい式を創っている。何か応援できることはないか』と思ってほしい。積極的にライティングを続け、業界の魅力を外にも発信し_ていきたいと考えています。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1-21日号)