LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

SDGsにこだわるレストラン【タガヤ 代表取締役 神田尚子氏】
ミシュランガイド東京2022で一つ星とグリーンスターをW獲得した【Noeud. TOKYO】を運営する、タガヤ(京都市中京区)神田尚子社長へのインタビュー後編。従来は廃棄される可能性のあった食材を活用するほか、出した料理の食べ残しがないような対応も含めて、SDGsの理念を重視している。さらにレストランでの考え方を結婚式場で展開していくことも含めて、今後求められてくるであろうサステナブルな運営スタイルについて聞いた。
食材と向き合う定休日
――使用する食材にも、こだわっているようですね。
神田「基本コンセプトとしてビーガンの追求もありますが、それ以外の料理も提供しています。重視しているのは、フランスでは当たり前の地産地消。地域で採れたものだけで料理をしているレストランが、きちんと評価をされて星も獲得しています。一方日本の場合はどうかというと、素晴らしいレストランであっても食材に対するこだわりは高価で希少価値の高いものに行きがち。もちろん東京など都市部の場合、地産地消は難しいのですが、考え方が大事だと思っています。高価で希少な食材ばかりにスポットを当てるのではなく、もっと世の中の食材に向き合うという部分を重視しています。例えば夜中の2 時、3 時に産直元の漁場に電話をして、今ある魚を聞いてそこからメニューを考える。もしくは何らかの事情で売れ残っているものを、積極的に仕入れるなど。生産現場に対してその姿勢が大切ですし、さらに仕入れた食材を廃棄することなく活かしていくことがレストランの役目でもありますから。これは会社全体としても重視していることで、2日間を完全定休にすることで、調理スタッフを中心にその日を使って産地巡りをしています。仕事が午後からであれば、午前中は畑を訪問するなど。会社として時間を作ることで、食材に向き合う意識を促しています。」
――グリーンスターの評価という点で、そうしたSDGsの要素も絡んでくるのですか。
神田「通常であれば廃棄されていた食材を活用していくこと、仕入れた食材をなるべく捨てないという両面が求められます。例えば食材をカットせずに土が付いたまま仕入れて、野菜は葉、根までも余すことなく全て料理に使うなど。それを、一つのお皿の中で表現していくレストランにこだわっています。例えば、そのお皿の中のソースもガレットも、全部ニンジンで出来ているメニュー。アイデアも必要ですし、絶対に捨ててなるものかという根性も求められるわけです(笑)。レストランでは野菜の葉を乾燥し、お茶にして出しています。また廃棄を減少させるという側面に関しては、メインに入る前に『あとどれくらい食べられますか』と聞くようにしていています。メニューのポーションサイズは決まっているのですが、食べられる量は人によって異なる。顧客と会話をすることによって、肉を半分で提供するなど食材を絶対に無駄にしないスタイルを取っています。多ければ残してくださいと言うのは、食材に対する責任という点でどうなのかと。」
――それは大事ですね。
神田「こうした会話を気軽に出来るようにするため、店は厨房を中心としたカウンタースタイルにしています。メイン料理も半分を提供し、残りの半分は持って帰れますとも伝えていますし、パンも1 個ずつ置いていき、あと一口ぐらいになった時にお代わりはいかがですかと声をかける。現在は無条件に2 個配っていくのが当たり前になっていますが、私たちはそうではないという意識でレストラン、結婚式場でも案内しています。」
パンも1個ずつ置いていく
――確かに、結婚式でも食べ残しによる食材廃棄が本来は大きな問題なのですが、これまでは豪勢な雰囲気を高めるために見過ごされてきました。
神田「SDGsを社内で取り組むことになった瞬間から、どのようにしてロスを失くすのかという意識が出てきます。家族同士の卓であればお互いにシェアできますし、友人同士でもコロナ禍でなければ可能かもしれません。ただ女性ばかり、年配層が多い卓の場合には、お腹いっぱいになって残すことも予想されるからこそ、事前にお声がけをしています。まずレストランで実践し、結婚式でもやった方がいいということからスタートしました。これまで結婚式場でもSDGsを重視してストローを変更し、お箸を持ち帰りにするといった対応を進めていたのですが、ポーション確認はリクエストがない限りはあえて伺うことはなかった。残す人がいても、会社全体として仕方ないという意識だったわけです。ただレストランを運営してみて、ひと皿ひと皿をその人のペースに合わせながら、より丁寧に向き合うスタイルも大切だと感じました。そこで見えてきたこと、やるべきことを運営している3 式場でも活かしています。」
――食べ残しがなくなれば、その分余計な仕入れも必要なくなりますからね。
神田「結婚式場では大量仕入れ、大量調理になるからこそ、フードロスをいかに失くすかということがより重要。食べ残しがないようなメニューの研究、ちょうどいいポーションサイズということも考える必要があります。これまでは季節ごとにメニューを一新するということばかりを意識していたのに対し、廃棄減少の意識も含めて考えていく。ただ料理を提供するだけではないということですね。現在は取り組みの成果を図る上で、どの程度ゴミが出ているのかも毎日確認しています。意識をすれば、確実に減少するもの。コロナによる少人数化で、ビフォーアフターの基準が変わっていることから効果は計測出来ていませんが、通常人数帯に戻った際にどの程度減っているのかを見るのが楽しみです。他にも最初の30分は食事に集中し、最後の10分間にも残らないように食べてもらうための時間を設ける3010運動など、披露宴運営においてもそうした部分のコントロールを打合せ時に提案することで、新郎新婦にも意識を持ってもらうようにしていきます。SDGsへの理解が高まっているので、若い世代にはそうした姿勢も評価されています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、2月1日号)

