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キーマンに聞く

:連載106:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]『ホテル業界に衝撃を与えた「公取による警告」を読み解く』【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

:連載106:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]『ホテル業界に衝撃を与えた「公取による警告」を読み解く』【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

いつもご愛読ありがとうございます。読者の皆様が「秋の商戦期」を元気に乗り越えられることを心から応援しています!
さて、今回のコラムは、最近とても質問が多く寄せられるテーマを選びました。本年5 月にホテル業界を“ざわつかせた”、一部大手ホテル等に対して公正取引委員会(公取)から独占禁止法(独禁法)絡みで警告が発せられた事案について、Q&A形式で法的な観点から解説していきます。
Q1.本年5 月に公取から一部大手ホテルに警告が出された際にはブライダル業界も少し“ざわつき”ましたが、結局のところどのような内容だったのでしょうか。
A1.公取がウェブ上で公開している内容をまとめると、一部大手ホテルの担当者が定期的に集まって情報交換をしていたことに対して、「独禁法が禁じる『不当な取引制限』に該当するおそれがあるので再発防止を」と、警告を発したものです。また、業界団体に対しては会員に独禁法の遵守を周知徹底するよう要請も出されています。
Q2.独禁法が禁じる『不当な取引制限』とは、どのような違反行為なのでしょうか?
A2.まず、独禁法は「公正で自由な競争がなされる市場経済を創り、維持すること」を目的とした法律です。
言い換えれば、本来は事業者が相互に「安く」、「よい商品・サービス」を競い合うことこそが健全な市場環境であるという考えなので、逆にある特定の業界に身を置く事業者が他の事業者と共同して「顧客向けの代金を一律何%値上げしよう」とか、「需要を維持するため供給を一律に減らそう」等と約束することで競争を阻害する行為を、『不当な取引制限』として法律で禁じているのです。
Q3.なるほど。今回は一部の大手ホテルによる、どのような行為が問題となったのでしょうか?
A3.公取の公開資料によれば、大手ホテル数社の担当者が定期的に集まり相互に「稼働率」や「平均単価」等の情報を交換した行為が対象とされています。それが『不当な取引制限』に該当する「おそれがある」として警告が出されたのです。
Q4.「おそれ」ですか。違反したという事実認定がされたわけではないのですか?
A4.そうなのです。独禁法で禁じる『不当な取引制限』に該当するには、関係事業者が結託をして競争を阻害するルールを定め、それを遂行することまでが必要になるのですが、そんな事実は認定されていません。ただ「稼働率」等の情報を交換している行為が『不当な取引制限』に繋がりかねないから、今後は注意して疑われることは行わないように、と(勧告ではなく)警告がなされたというのが今回の内容です。
Q5.しかしホテルによって宿泊代等は異なりますし、あくまで業界内の一部のホテルが参加した情報交換であって、しかも単に「稼働率」や「平均単価」の推移について情報交換しただけで、本当に競争が阻害されるおそれがあるのでしょうか?
A5.当然そうした見方はあるわけで、公取が発表している範囲に限って見れば、私自身はやや厳しい警告だったのではないかと思っています。ただそれだけ公取は「公正で自由な競争の確保」に向けて意欲を見せているということですので、ホテルのみならずブライダル事業者も「業界外からそのような疑惑を持たれるような動きは控える」という、意識をもつきっかけにすべきだと考えます。
Q6.ではホテルをはじめとしたブライダル事業者同士はあまり集まらない方がよいのでしょうか?
A6.全くそんなことはありません。『不当な取引制限』となるのは「対価」や「数量」等について競争を阻害する決定をすることであって、それ以外の「接遇」や「法務」等のテーマの勉強会に集まることは全く問題ありません。また、問題となるのは「一定の取引分野」における競争が阻害されるかもしれない場合なので、仲の良い特定の事業者同士で独自に情報交換するだけでは、独禁法に抵触する可能性は低いです。あまり恐れ過ぎず、正しい認識で同業者との必要な情報交換は継続していただけると良いかと思います。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月11日号)