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キーマンに聞く

築100年の酒屋改装【Daiyu 取締役 鈴木 樹陽太氏】
鎌倉の長谷で萬屋本店を運営するDaiyu(神奈川県鎌倉市)は来年5月、鎌倉駅から徒歩6分の立地に三河屋本店をオープンする。この建物は昭和2年(1927年)建造の老舗酒屋で、若宮大路唯一の木造文化財。鎌倉市、消防署、東京大学をはじめとする専門家との官民学の緊密な連携により、8年にわたる保存活用プロジェクトを経ての開業となる全国初の事例だ。オープンまでの経緯、苦労の末誕生する施設概要を、取締役鈴木樹陽太氏に聞いた。
鶴岡八幡宮のお膝元の立地
――歴史的建造物の活用であり、オープンまでに大変なことも多かったのでは。
鈴木「申請に8 年を費やしました。古い建物で現行の建築基準法に合わず、まずは基準を除外しなければならない。保存活用計画という条例のもと、保存建築物に登録するのにも時間がかかりました。防火・耐震・構造の各分野で安全基準を個別に設計・検証をしなければならず、さらに文化的価値も残さなければいけないということで、床の間や梁、柱一本一本までそのままです。通常の有形文化財であれば、外側を変えなければある程度自由に対応できるの対し、保存建築物ということで簡単にはいきませんでした。鎌倉市にとっても初めての事例で慎重に進めていて、第三者委員会には東大や横浜国立大の各分野専門の教授が名を連ね、常に厳しくチェックしながらだったため、本当に産みの苦しみでした(苦笑)。ただ、8 年間にわたる官民学連携のプロジェクトは評価も受け、決定後は大手新聞でも報じられるなど、それだけの価値はあったと思っています。結婚式もできるレストラン・酒屋としてのオープンとなります。」
――鎌倉駅から徒歩圏内の好立地で、歴史的価値のある建物。物件との出合いの経緯は。
鈴木「鎌倉の若宮大路に面していて、駅から徒歩6 分、鶴岡八幡宮のお膝元にあります。八幡宮や建長寺などにお酒を卸すほか、観光客向けに販売も行っていました。当社が長谷で運営している萬屋本店のオーナーは酒造、三河屋のオーナーは酒屋であり、両者は古くからの付き合いでした。築100年近くなる建物を今後どうしていくか考えていた三河屋のオーナーから、萬屋本店で信頼を重ねてきた当社に相談をされたのが始まりでした。立地もそうですし、建物の雰囲気も素晴らしいため、店を貸してほしいとお願いされることも多かったそうです。これまではその全てを断ってきたわけですが、萬屋のオーナーとの信頼感から当社に任せてもらうことになりました。」
――会社として2 店舗目の出店を決めた理由は。
鈴木「実は萬屋本店の開発を始める以前から、鎌倉であればここで展開したいという場所を、当社代表がピックアップしていました。歴史もあり文化を感じられる日本家屋の条件に合うような建物は12棟しかなく、その一つが萬屋本店であり、さらに三河屋もその中に入っていました。三河屋のオーナーから相談を受けたという話を代表にしたところ、ピックアップしたうちの一つだからとにかく進めていこうと。会社としてはスタッフが成長したときに次の活躍する場を作ってあげたいとの思いも持っていて、また1 店舗だけだとリスクもありますから、近隣で2 店舗を展開していくのはどこかのタイミングでとも考えていました。」
――これまであった酒屋も、継続して営業するそうですね。
鈴木「三河屋のオーナーからの希望は、建物を残すことと酒屋を残すこと。それならば一緒にできる方法があるのではないかというところから、共に計画を作っていきました。もともとの母屋は結婚式の出来るレストラン施設として当社で借り、正面左側にあった白い壁の小さな蔵に、酒屋スペースを設けます。そこではこだわった日本酒をセレクトして、店で提供するということです。酒の配送も別の場所を借りて継続します。」
――施設の構造は。
鈴木「以前の店舗だったスペースに受付、レセプションを設置。その奥がダイニングスペースです。席数は80〜90席。また建物奥にあった独立型の蔵も壁を取り払い、70名収容できる席を設けました。2 階はゲストの待合スペース、4 つの部屋は新郎新婦・親御さんの着替え室として対応します。ゲストはレセプションを通って2 階へ上がり、着替えや待合後に下に降りてきて、挙式・披露宴という流れになります。」
建物の価値を引き上げる
――リニューアルはかなり大変だったかと思います。鈴木「元の日本家屋の形態に戻せるようにする可逆性も求められたため、柱も一本一本残さなければなりませんでした。例えばダイニングスペースは離れをくっつけて席数を設けましたが、そこを隔てる柱も5 本ほど残っています。通常の披露宴会場であれば、柱が多くて使いにくいと言われるでしょう(笑)。もっともそれは建物の価値を引き上げるための措置であり、多少視界は遮られたとしても、その意義を説明すれば新郎新婦やゲストも納得してくれます。結婚式場としては珍しい構造であっても、それ自体魅力になっていくと考えています。」
――料理でも違いを生み出していく予定だとか。
鈴木「レストランは平日昼をメインに、土日は結婚式中心で、料理はいずれも肉割烹スタイルで提供します。コース全体、先付からメインまでを全て肉料理で構成。結婚式料理は、1 万8000円コース一本のみの予定です。500㎡の施設内で厨房スペースに制限もあり食材の保管や仕込みを最適化するという目的もありますし、結婚式でありがちな松竹梅コースで真ん中を選ばせる商法とは一線を画すのは萬屋本店同様。また酒屋も併設している関係から、オリジナル日本酒の開発なども考えています。引出物としても利用可能になれば、結婚式後の継続性に繋がりますから。」
―― 近隣にある1 号店、萬屋本店との棲み分けは。
鈴木「明確にコンセプトを分けています。萬屋は大正ロマンをテーマに、イチからテーマを作りプランニングするスタイル。一方、三河屋本店は建物自体が魅力的なので、会場装花も最小限にして、祝宴やゲストとの語らいを重視したシンプルなスタイルにします。すでに受注・打合せも始まっていて、新聞掲載の影響もあり反響は萬屋オープン時以上。三河屋は都内からの来館も多く、有名式場との比較検討で選ばれるケースが多いのも特徴です。その点では世の中の結婚式に消極的な見方をしていて、やるなら意味のある式をしたいというのがメインターゲットの萬屋本店とは異なり、本当にお世話になった人たちを招き、良い施設で良い食事の場を用意して語り合いたいという人が多いかと。萬屋は年間200組の婚礼を扱っていますが、三河屋はそれを超える見込みです。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、9月21日号)

