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「ハイブリッド」な運営体制へ【八芳園 取締役社長 井上義則氏】
八芳園(東京都港区)は2021年春、自社開発したオンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」をリリース、同年秋にはビジネス版も発表した。披露宴やビジネスイベント、セミナー、集団面接など、あらゆるオンラインコミュニケーションに活用できるツールとして、同業のホテル・結婚式場からも注目されている。昨年10月に取締役社長に就任した井上義則氏は「イベントプロデュース会社として『リアルかオンラインか』という二者択一ではなく、どちらにも対応できるハイブリッドな運営体制」の構築を進める。
需要の回復にばらつき
――緊急事態宣言の解除から2 ヵ月が経過しました。変化をどのように見ていますか。
井上「11月以降は、婚礼の新規来館組数に回復傾向がみられました。また、七五三などの年中行事、人生の節目にまつわる家族の会食や集いは2019年以前の水準に近づいており、人の流れが戻ってきたと実感しています。企業や法人についても、食事を伴わない会合、イベントを再開する動きがあります。これまでの反動で久しぶりに顔を合わせたい・直接会って話したいという顧客ニーズが反映されているのではないかと。一方で披露宴の列席者は微増、レストランはランチタイムが人数・単価ともに好調なもののディナータイムの稼働が難しいなど、回復の動きにはばらつきがあります。」
――飲食が伴わないMICEや少人数の披露宴、会食を獲得しても収益性が低いのでは。
井上「当社の場合、売上はコロナ禍前の水準を割り込む状況が続いている一方、利益は着実に回復してきました。食事を伴わない会合・イベントでも、オンライン配信システムなどのコンテンツや各種演出を企画提案し、その成果が出ています。当社の企画・プロデュースサービスが収益化している、言い換えると【料飲で稼ぐ】という従来の宴会販売の常識から一線を画した考え方で成果が出ています。1 年前のインタビューで、【ハレとケ】、【公と私】の二項対立が、コロナ禍を受けて二項同体化する動きがある、という話をしました。飲食店のメニューが自宅で楽しめるテイクアウト・デリバリーや在宅勤務などがその代表例で、当社が昨年秋から販売を始めた自宅にいながら披露宴に参加できるサービスLIVING ROOM WEDDING(リビングルームウエディング)も、二項同体の潮流を踏まえて企画しました。最近の人の流れを見て改めて感じたのは、コロナ禍で誕生・普及したサービスや商品の利便性に気づき、それを使いこなせるようになっている。それでも何かの節目や季節の変化、祭りごとを家族、仲間と共有するという気持ちは変わらないということです。」
――結婚式やMICEも、オンライン開催からリアル開催に回帰するのでしょうか。
井上「オンラインは知識や情報の共有において非常に有効な手段ですが、高揚感、安らぎなどの感情の共有は、リアルでなければできません。私たちは今後、リアルとオンラインの両方に対応することが求められると思いますが、それはいずれかを選択してもらうという意味だけでない。リアルとオンラインが渾然一体となった、よりハイブリッドな対応をイメージしています。当社の開発した結婚式のオンラインイベントプラットフォーム【WEROOM】も、コロナ収束後に必要が無くなるということはなく、むしろ結婚式の開催スタイルの一つとして提案し続ける価値があると考えます。」
――リアルへの回帰ではなく、オンラインを併用する。
井上「Z世代と呼ばれる現在20歳前後の人たちは、生まれた時からインターネットデバイスが身近な存在でした。iPadが学校の授業で使われるなど、子どもの頃からリアルとオンラインのハイブリッドな環境が日常。最近話題のメタバースなどに象徴されるように、リアルとオンラインの世界にそれぞれのコミュニティを持つことが当たり前の人もいます。こういう人たちが結婚式を挙げることになった場合、招待するゲストはリアルの世界の友人・知人だけでしょうか。オンラインの世界で交流する人たちにも、お祝いに参加できる機会を用意する必要があるのではと考えています。」
井上「昨年、LIVING ROOMWEDDINGを利用した新郎新婦の多くは、コロナ禍が収束しない状況の中で、東京都内に高齢のゲストや遠方在住のゲストを招待することに躊躇いを感じていました。日常生活でオンラインを活用する機会が増えたことで、今後はWE ROOMによってゲストが結婚式の参加方法を選べる、つまり選択肢の一つになり得ると考えています。」
――列席者数をどう捉えるかの概念も変わります。
井上「今の日本の結婚式は、多くが挙式と披露宴を同日に開催し、かつ開催日が土日祝日に予約が集中することで、事業としては非常に効率性が低いというのが課題。挙式披露宴の規模が大きい分、1 組当たりの婚礼費用も大きくなります。今回のコロナ禍のような事態の中、万が一キャンセルとなれば、会場側も新郎新婦も大きな負担を抱えることになる。こういった課題の解決策として今考えているのが、結婚式の分散開催を選択肢の一つとして用意することです。これまでも海外リゾート挙式を行った新郎新婦が、帰国後に披露宴を行うなどの事例はありました。披露宴も少人数のパーティーを複数回開催し、家族を招待する回、仲の良い友人を招待する回、会社の同僚を招待する回など、ゲストの属性別に設定することで、それぞれの属性に最適な開催日時や会場、進行、企画を用意することができます。これを1 ~ 2年の期間をかけて断続的に行えば、費用面・心理面の負担も分散化します。もちろん、ここでもWE ROOMを活用し、より幅広い層の列席・参加を呼び掛けることもできるでしょう。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1・11日新春特大号)

