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《ブランディングのススメ》CM撮影依頼に5部作の物語提案【ADLIVE 代表取締役 松木 順水氏】

《ブランディングのススメ》CM撮影依頼に5部作の物語提案【ADLIVE 代表取締役 松木 順水氏】

撮影ディレクションを手掛けるADLIVE(東京都目黒区)が大切にしている会場ブランディング。3回目となる今回は、地方会場から依頼されたテレビCM撮影の依頼をピックアップする。松木順水社長は地域に根差し人生に寄り添っていく結婚式場という理念を表現する上で、会場の外でも撮影し、そこで出会い、愛を育んできた2人の5つのストーリーを提案。スチール以上にリアルを映し出し、さらにレタッチもできない撮影は今後への注目も高まる。

 

会場外での撮影が中心に

――GW明けに、地方会場のテレビCM用の映像を撮影するそうですね。

松木「これまでのブライダルでは見たことのないようなCMを作ります。四国エリアにある会場ですが、会場の周囲にある展望台やグランピングスタイルの施設も含めて、エリア全体をひとつのリゾートと捉え、その中に存在する結婚式場としてブランディングを行いたいということでした。もともと互助会系の会場であり、会社としても地域密着、地域の人と支え合っていくという理念を持っているからこそ、その想いをしっかり表現していかなければなりません。まずは地域をリゾートとして盛り上げつつ、結婚式や葬儀を通じて人々の生涯に寄り添う会社としてのブランドを重視。『人生を共に生きていく』というコンセプトにして、その表現にこだわりました。」

松木「その会場では以前からテレビCMを撮影していましたが、これまでの映像は会場内中心のもので、施設の魅力を伝える内容が主になっていました。今回、当社としても初めてCM撮影の依頼を受けたわけですが、撮影は地域を映し出すために屋外が大部分を占めています。結婚式はあくまで二人の人生の流れの一部でしかなく、それよりも“ここで出会い、恋をして、結婚し、家族になる”というストーリーに重点を置き、そこにウエディングを絡めていきます。過去・現在・未来をしっかりと物語にし、二人の歩みを全5 話で紹介していく構成です。結婚式の準備期間にも焦点を当て、パーティーで母親の愛情に気づく瞬間を描く、そのほかに地域の風景やデートで訪れた場所の記憶を辿るような内容も含まれています。第一部は母親・父親目線、第二部は新郎目線、第三部は新婦目線、第四部は母親と新婦の物語といった構成で、5 話を通じて一つの物語を形作っています。」

――映像ならではの臨場感を大切にし、自然の“音”にもこだわっているようですね。

松木「ありきたりな音楽に映像をのせるのではなく、記憶を呼び起こすような風の音、波の音、鳥のさえずりなど、自然音も録音して使用していきます。出演者のふとした瞬間の、鼻歌もあります。スチールと比べて、映像ではよりリアルな質感を映し出す必要がありますし、スチールでは伝わらない臨場感を表現できるからこそ、撮影の意味も深まっていきます。音や声、煙、自然光など細かな部分にこだわることは最大の差別化ポイントであり、映像を制作する意義そのものでもあります。スチールではできない表現を、徹底的に追求しています。」

――テレビCMだけでなく、撮影後にはSNSなどさまざまなツールで使用することも想定しているそうですね。

松木「クロスメディア戦略は非常に重要です。たとえば、インスタのストーリーでシリーズ化して展開することも想定しています。いわゆる“Bロール”と呼ばれる補足映像の素材も、時間をかけて撮り溜めるスケジュールにしていて、例えば木々が揺れるシーンなどはブランディング用の映像として活用できますから。もともと動画そのものがストーリー性のある構成になっているので、その分注目も高まるはず。それ以外にも30秒の長尺バージョンを別編集で制作したり、撮影の裏側をインスタのリールで配信したりすることも計画しています。」

――初めてのCM撮影ということで、準備も大変だったとか。

松木「かなり大変でした(笑)。今までの私の資料の中でも、たぶん一番作り込んだと思います。これまでも映像撮影はあったものの、基本的にはスチール撮影がメインで、その合間に映像を撮るスタイルでした。そうなると、スチール=動画という発想に縛られて、新しい表現は生まれにくくなります。今回は映像だけで勝負し、ストーリーもゼロから作って撮影するという、私にとっても新たな挑戦でした。まず5 部作となる物語を構成し、スチールと違って映像ではレタッチができないため、撮影リストを漏れのないように仕上げていきました。ナレーションの台詞も準備し、Bロールのスケジュールも組み込み、それを香盤表に反映しながら演者の動きまで細かく記載。最初はそういった準備のプロセスを学ぶ時間も必要だったため、本当に手間と時間のかかる作業でした。その分、映像のこだわりには自信があります(笑)。」

――カメラマンやモデルにもこだわったそうですね。

松木「撮影は私とディレクター1 名、映像カメラマン2 名で行います。カメラマンは、ハリウッドでの撮影経験もあるレベルの高い人に依頼しました。モデルについては、プロモデルを2 名起用。スチールと違って、仕草や歩き方もすべて映し出されるので、モデル事務所のマネージャーにも、求める声の質感などを丁寧に伝えたうえでアサインしています。モデルの肖像権については、CMやインスタでの使用は1 年間に設定し、アーカイブ用として残す分には費用の発生しない契約にしました。一つひとつ消す手間も省ける仕組みです。」

――これだけこだわったクオリティの高い映像制作は、ADLIVEにとっても今後に期待できる新境地だったのでは?

松木「スチール中心の撮影において、レタッチで窓を大きくしたり、景色を合成するような手法には違和感を持っています。それはユーザーを欺く行為であり、私は嘘をつきたくありませんでしたから。その意味でも、映像は“ありのまま”を映し出す媒体ですし、私の考え方にもフィットしています。実際に、スチールにはない感情の表現を捉えるのはとても面白いですし、インスタも動画中心のコンテンツへと移行しつつある今、映像制作のニーズはますます高まっていくでしょう。その経験が得られた今回の機会は、非常に大きな意味を持ちます。」

――CMの放送は6 月からとのことですが、その反響も楽しみですね。

松木「会場のあるエリアを中心に、県内全域で放送予定です。CMは地元に住む人たちへのプロモーションとしての役割もありますが、同時にエリア外からの来訪のきっかけにもなります。実際にこの地域は結婚式流出が続いており、地元の人たちだけをターゲットにしているだけでは、将来的に先細りのリスクもあります。だからこそ、『このエリアにはこんなに魅力があるんだ』と多くの人に再認識してもらうことができれば、エリア外からの流入を促し、流出も一定程度食い止められるのではと期待しています。」

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1日号)