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キーマンに聞く

《ブランディングのススメ》会場の魅力を高めて写真で表現【ADLIVE 代表取締役 松木 順水氏】
マーケティング以上に、ブランディングの重要性が高まってきているブライダル業界。いかに自社の強みを磨き上げ結婚式で発揮できるか。マーケティングは会場ブランドを、多くの人に伝えていく手段に過ぎない。撮影ディレクションを手掛けるADLIVE(東京都目黒区)は、ブランディングから会場をサポートすることで、課題解決を実現している。ある地方会場におけるブランディング・マーケティングの取り組み事例を、松木順水社長に聞いた。
商品開発までサポート
――地方のゲストハウスへのサポートによって、売上も高まっているようですね。
松木「キッカケは撮影の依頼だったのですが、ブランド価値を高めていく目的から商品開発やゼクシィとの打合せ、誌面・ネットコンテンツの作成にも携わるようになりました。結果としてゼクシィネットの評価がSにまで高まっています。その会場は池などもある広大な敷地が最大の特徴で、それを貸し切りできるということを前面にプロモーションを仕掛けていました。当社では撮影前に、会場へのヒアリングを徹底的に行います。例えばデザートビュッフェ一つとっても、どのような内容で、どんな特徴があるのか。外注ケーキが増えている状況で、仮に手作りにこだわっているのであれば、パティシエの写真も撮影するなど。そうしたプロセスを進めた結果、よりブランディング強化が大切だと判断し、この会場では撮影以外にも様々な提案をしていきました。」
――写真で表現するために、まずはその中身を磨かなくてはいけないという考え方ですね。
松木「そこで大切なのは、会場の魅力をしっかりと表現できる商品開発です。その会場では、売りであるガーデンを活用したバーベキューのプランを提案しました。地方の状況はそもそもマーケットのパイが大きく減少しているため、課題解決である売上アップのためにこれ以上組数を獲得していくのは至難の業。そこで結婚式の単価アップを考えるわけですが、これも限界に達していると見ています。商品価値は変わらないのに一組単価は上がり続けている状況で、さらにこれ以上というのは厳しいはずです。それならば結婚式の単価を上げるのではなく、同じ新郎新婦から別の売上を確保できる二次会を取るべきと考え、そのためのプランとして提案しました。」
――バーベキュープランであれば、披露宴の料理とは異なるため、そのまま同じ会場で実施する可能性も高まります。
松木「仮に二次会を他の場所で開催する場合、地方ならではの課題も出てきます。式場から二次会会場まで遠い、またそもそもウエディングに合うような素敵なレストランも少ないなど。それを考えれば、新婦にとっても移動なくドレスをお色直しし、仮に同じドレスでもその場でヘアチェンジを出来るのは嬉しいはず。会場としても広大なガーデンを持っている強みを活かせると共に、閑散期については一日一組限定の運営に振り切って二次会までの一日を通じた貸切感で顧客の満足度も高まります。この会場で二次会まで実施する意義をさらに高めるため、バーベキュープラン以外にも地元の業者と一緒に池を使った灯篭流しの演出も商品化しました。一日の終わりに、ここでしか出来ない演出です。」
――会場らしさの商品があるからこそ、差別化できる撮影に繋がっていきます
松木「そもそも集客に苦戦しているのは、ビジュアルに課題があります。そこでビジュアルを変えようと考えるわけですが、フラワーシャワー、バルーンリリースなど、どこにでもあるような演出を写した写真では通り一遍にしかならず、その会場らしさは伝わりません。らしさを語れる商品があれば、それを撮影すれば自ずと会場の魅力は伝わり、仮にそうしたものがないのであれば、らしさを表現できる商品開発をしなければなりません。」
――多くの人に伝えるためには、写真だけでなくキャプションも大切な要素だと。
松木「ゼクシィ本誌の影響力は低下していますが、それでも出稿する以上は、キャプション一つにもこだわるべきでしょう。写真を見た人は、その次にキャプションを確認しますから。例えば広大なガーデンという表現ではなく、実際に何ヘクタールあるのか。よくある【青空の下、ゲストと笑顔溢れるパーティーを】というよりも、何名規模のパーティーが可能、全天候型でバーベキューも出来るといった説明を入れるべきでしょう。ゼクシィ誌面を考慮すれば、キャプション一つひとつにも数万円のコストが生じているからこそ、会場の特徴をより際立たせる事実を語っていきます。」
――キャプションでも会場の魅力を伝えていくという発想から、一日一組貸し切りの提案も進めたそうですね。
松木「貸し切りであるという説明をしても、一日2 回転で、結婚式のスタート時間も決まっていれば自由ではありません。地方会場の場合、秋の繁忙シーズンは別にして、閑散期はそもそも2 回転入るだけの受注も難しいからこそ、一日一組貸し切り運営を打ち出してもいいのではと。そうなるとキャプションの貸し切りという表現も一日一組限定という言葉でより際立った形で会場の特徴を表せますし、その流れから二次会という新たなプロダクトに進んだ経緯もあります。」
――写真はあくまでも表現の手段であり、大切なのは表現すべき自社らしさ。もっともブライダル業界には、新しく撮影さえすれば課題は解決されるという幻想も根強い。
松木「ディレクションの依頼を受ける際、他の会場の写真を企画書に貼ってきて、それと同じような撮影を依頼されることもあります、もちろん撮影会社はクライアントの希望を叶える立場ではあるものの、私はそれだけでは本来の課題解決、売上アップにはならないと考えています。だからこそ本来の仕事ではない部分まで、サポートしていく必要が出てきます。ヒアリングによりその会場の強みを棚卸し、強みを際立たせると共に、弱みの部分はブランディング視点の提案というプロセスを進めていく。オシャレな写真を模倣しても、マーケットリーダーと同質化していくだけで、集客にはなかなか繋がりませんから。」
松木「ブランディングと、それを表現する撮影を大切にするようになった原点として、15年前に手掛けた会場での経験があります。そこは採石場から切り出してきた大理石を使ったこだわりの施設で、まさに宮殿のような雰囲気でした。そこで【100年先にも残る建物を】というキャッチコピーを付け、それを表現する写真も撮影しました。当時のトレンドは『派手さ』だったのですが、建物同様にビジュアルも100年先まで残さなければいけないと考え、ロビーなどに余計な装飾はせず、ドレスもスタイリッシュなものにして、とにかく建築美を活かすことを最優先に。当時の写真を今でも使ってもらっています。15年間一貫して同じ写真ということは、その後の仕事のリピートはないのですが(笑)、この経験は本当に貴重でした。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、3月1日号)

