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《ブライダルAIの波③》新規接客戦略をAIが提示【NOVIC 代表取締役 金田 昌彦氏】

《ブライダルAIの波③》新規接客戦略をAIが提示【NOVIC 代表取締役 金田 昌彦氏】

3年前から自社の業務にAIを活用し、その事例・効果をベースにブライダル業界向けのAIサービス【WAIC(ウェイク)】の提案をスタートしたプロデュース会社NOVIC(東京都渋谷区)。前号ではAIによる事前アンケートの作成とその目的・効果を紹介したが、今号はそこで得た情報を基に具体的にどのような分析結果を出し、最適な提案に繋げているのかをピックアップしていく。顧客のパターンに応じて接客時のNGワードを明確にするなど、成約率を高める仕組みを金田昌彦社長が語った。(前号から続く)

4・新規接客の分析
「AIに読み込ませた事前アンケートのデータに基づき、新郎新婦それぞれのタイプを4 タイプの中から判定していきます。例えばある新郎新婦の場合、共にタイプCのアナライザー型と判定。さらに具体的な新郎の特徴としては、論理的思考が強く全体の流れやコストパフォーマンスを重視するタイプ。一方、新婦は情報で判断するタイプであると明らかになります。さらにゼクシィアンケートによるクラスタ情報を合わせて分析すると、【格式あるホテルを好む傾向】といった分類が出てきます。これらの情報をもとに、接客で使うべきキーワード、逆に2 人に言ってはいけないNGワード、最低限押さえておくべき条件(希望時期、人数、職場関係者や親族の有無など)の様々な分析が即座に提示されます。すべて一度に把握するのは難しいため、分析結果としては必要な情報だけがコンパクトにまとめられて出るようになっています。」
「新規接客戦略についても、【Why】、【How】を基にしたストーリー構成が提案されます。この2 人はハワイでの家族挙式後、友人・同僚への結婚報告が目的であるため、『この会場であれば、目的に合致した進行・準備フローを提供できます』という最適な内容を表示。またご祝儀制か会費制かで迷っていれば、AIが人数に応じたご祝儀制・会費制それぞれの自己負担額を即座にシミュレーションして出してくれます。いわば計算機能でもあり、人数の変動などの度に退席し、裏で計算するといったことも不要です。」
「提示されるNG対応例としては、例えばこの2 人の場合は、『他の人と同じような』といった表現を避けるように指示が出ます。『費用は大体これくらい』といった、曖昧を感じさせる説明もNGです。このタイプの新郎新婦には、『費用が上がるなら、その理由を明確に伝える』という対応こそ重要であり、それに基づく接客によって信頼に繋げていきます。もちろんAIの回答は実態に100%整合している答えではないとはいえ、通常の場合もプランナーが新規接客をしながら逐一報告していき、裏でコントローラーが様々な事柄を判断しなければならないのは同じです。当然時間がかかり何度も退席するという状況を考えれば、AIを使うことでより精度高く瞬時に答えを導きます。」

5・即決への導き
「当社の場合、90分のオンライン接客で即決を目指さなければなりません。そこでAIが、事前に【即決を阻む可能性】を5 つ抽出。この5 つを頭に入れながら、接客時に新郎新婦に様々な質問を投げかけていき、決めない理由を1 つずつ無くしていきます。例えば『他会場や他社と比較したい』という可能性が出てくれば、それを想定しながら他も見たい理由を顕在化させる質問をして、その場その場で解消していきます。【即決を阻む可能性】に対する質問内容も、タイプ診断、クラスタ情報などからAIが提案します。」

6・整合性に対する修正
「初期アンケートからの分析結果と、リアルな実態の整合性は80%程度であり、もちろん実際に接客をしてみないと正確にはわからない部分も出てきます。ただ一般的な接客においても、来館アンケートを新婦だけで記入し、新郎は全く関与していないケースもあるでしょうから100%の整合性は難しいですし、その乖離を埋めていくことが新規接客では求められているはずです。WAICの仕組みでは、接客中に【違う】と感じた場合、その場で情報を再入力することで、即座にAIが再分析しアドバイスを提示します。こうして蓄積した情報は、新規接客だけでなく契約後の販売促進などにも活用されます。入力する情報やプロンプトの作り方によって、新規以外でも活用できるようになっています。」

7・アサインの考え方
「事前アンケートから導く顧客分析によって、そのタイプに強いプランナーをアサインコントロールすることもでき、より成約の可能性は高まります。ただ当社の場合、平日はまだしも、週末ともなれば全国的に予約は満席状態で、顧客タイプに合わせたコントロールは物理的に難しい。もう1 つは育成に力を入れているため、接客機会を公平に与えるという考え方です。全員を再現性の高い接客者にしていくというスタンスを取っていて、低成約率のメンバーでもAIを活用することによって15%程度改善しています。1 人の優秀なプランナーのやり方に依存する属人化ではなく、全体を上げていく仕組みとしてAIを活用しているというイメージですね。顧客分析だけでなく、成約率の高いメンバーのナレッジや思考法をAIで言語化もしていて、統一したアドバイスを提供できるようになっています。」

8・効果的な進行提案
「複数の会場を提案するプロデュース会社という立場上、新規接客においては会場の魅力というよりも、どんなことが出来るのかといった進行提案がより重要です。この提案についても、事前アンケートで得られた【家族のために】、【友人と自然体で楽しみたい】といったポイントをもとに、サンプル進行を用意しデータとして提示していきます。例えば、平服希望の場合であれば、『このような進行で実施できます』と提案し、過去の写真を見せながらイメージを広げていきます。AIにはこれまでの進行データをすべて入力していますが、情報量の多い状態では精度は上がる一方、不要な細かい情報まで出てしまいます。そこでデータはシンプルに5 パターンに分類していて、そこから提示する形にしています。」
「ちなみに、新郎新婦が当社の結婚式に参列経験のある場合には、過去のデータベースから該当するパーティーの進行内容を提示します(金額は非表示)。これはAIでなく、社内ルールに基づいた運用です。」
「事前アンケートから顧客を分析し、新規接客に活かしていくWAICの仕組みに、抵抗を感じる人もいるかもしれません。ただ、成約率アップは結局のところコントローラー次第であり、顧客情報をそれまでの経験に基づき理論的に分析し、アサインコントロール、接客戦略の構築など相当なスキルを要します。その点、WAICは、優秀な新規接客コントローラーという役割を担い、しかも情報量が増えればその分精度も高まっていき、プランナー全員の再現性を高めてくれます。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、9月11日号)